劇場版仮面ライダー555 パラダイス・ロスト感想



555/劇場版「パラダイス・ロスト」/2003.08.17


■まずは……
 テーマから語っちゃおうと思う。とある雑誌の制作者インタビューで「TV版のテーマの収束を一足先に描くことになる」という言及があったので、かなり本編にも根差している部分だと思う。
 555のテーマは主に二つ、一つは「人間とオルフェノク」、もう一つは「夢」だと思うんだけど、この映画は二つが上手く繋がって収束して実に見事だった。
 まずは最初の方のテーマなんだけど、制作サイドが番組当初から「今回はオルフェノク側を描く」と表明していたように、従来の「人間=守るべきもの」「怪人=倒すべきもの」という図式を根本から再構築しているのが555なんですよ。そんなテーマに対する一つの結論が今回描かれてたように思う。言っちゃえば「人間でも悪い奴は悪くて、オルフェノクでもいい奴はいい奴」という結論。前者は自分のエゴでミナを殺しちゃう水原とかで、後者は言うまでもなく木場達。さらに予想されていたこととは言え、巧がオルフェノクであることが判明することにより、ライダー=人間=正義という固定観念が完璧にシャッフルされ、いい奴だとか悪い奴、正義と悪、そういったモノは「人間だから…」「オルフェノクだから…」とか言う表層のカテゴリーに根差しているんじゃなくて、もっと深いものだというメッセージが強烈に発せられていたように思う(もっとも巧の狼オルフェ化は子供にはショックだったようだけど)。このようにカテゴリーに依存しない「正しさ」があるということから、カテゴリー(人間VSオルフェノク)に関係なく両者は共存できるかも知れないという考えが生まれる。そこがもう一つのテーマ、「夢」に繋がる。
 TV版では現在「夢が無い」と言ってる木場が、今作では「人間とオルフェノクの共存が俺の夢」と明確に語る。また巧に対して「俺の夢と彼の夢は同じだ」とも……パラレルとは言えある程度TV版のアフターストーリー的な要素を含む今作、TV版現在の後どんなドラマがあったか知らないが、木場と巧は明確に「夢」を持つようになっている(この辺りはTV版の名作「夢の守り人」で木場と巧が夢の共有者になる可能性はかなり暗示されていた)。今作では陰謀から二人は闘ってしまうのだが、最後に木場は「俺ができなかったことを君がやってくれ」と巧に夢を託して息絶える。この夢を受け継ぐというのが巧が夢の守り人であることに重なって凄く上手いと思った。その夢の実現は困難なのだが、ラストシーン、オルフェノクである巧と人間である真理は手を取り合って光りの中へと歩いていく。そこにかすかな希望が見いだせる。そんなラスト。これ良かったわー。
 というわけでテーマの描き方は絶賛したい。その後、共存のためにどうするかとかそのための戦いとかはTV版で描いてくれることを期待させつつ幕を閉じるという、余韻あるナイスな終わり方だった。

 あとは印象に残ったシーンを順に……

■スマートブレインの蝶の演出
 所々に効いてたんだけど、幻想性があって非常に良かった。

■残りの人間2433人とか、ライオトルーパーに引きづられていく巧とか
 世紀末っぽいハードボイルド感が演出されてて良し。北斗の拳的な過酷さが漂う世界観が上手く出来上がってた。

■一万人ライダー及びサイガが襲撃してくるシーンはスゲーと思った
 迫力有りすぎじゃないスか。バイクぶんぶん乗り回してる連中が画面一杯でヤンチャして、倒れても速攻オルフェノク化して襲ってきたり、大迫力。サイガは飛ぶし、変身するレオは謎の外人だし、飛ぶしペガサスローリングクラッシュは使うし、全般的にバトルシーンは最高だった。この迫力は近年まれにみる出来かと。

■ファイズ復活バトルもカッコよかった
 暗闇に光るトレードマークのフォトンが異常にカッコ良かった。おまけにアクセルフォームの多段式クリムゾンスマッシュもメラ燃えで最高。

■デカバッシャーも最高
 海堂が乗り込んでミサイルアシストする辺りも最高。バッシャーは存在自体が最高だな。

■そして破壊されるロボ
 ギャー、なんかデカイのに撃ち落とされましたYO!まさか本編での死(?)を暗示してはおるまいね。

■1万人エキストララストバトル超絶
 コレ最高だった。超絶燃え。サイガVSファイズの劇場バトル最高。一万人の群衆の中で殴り合うのは超絶にハッスルだった。内部だけじゃなくて観客席にまで入り込んで群衆に揉まれながら闘ってたのが最高でしたな!あと飛行サイガをアクセルで追いかけるシーンも超速バトルって感じで燃え燃え。全部燃え燃えなんだけど、とどめに最高だったのがサイガを倒す一刀両断シーン!剣道で言う抜き胴の形でサイガの胴に剣をめり込ませてExeedCharge!が最高にカッコ良かった。僕の中で紛れもなく過去最高の敵撃破シーン。

■オーガVSファイズブラスターも最高!
 あのな、ファイナルバトル、木場にトドメ刺されそうになっちゃうわ、真理にはオルフェノクの姿見られちゃうわの最悪の状況で、急にいつもの巧ペースの語りで「何だっけ?救世主は何するんだっけ?」って真理に聞くシーンかなりぐっとキタ。コレ救世主伝説という真理の夢物語を叶えなきゃって意味で、巧=夢の守り人がかかってると思うのね。だから巧の応答の台詞も「お前の期待に応えるのも楽じゃねーな」じゃなくてダイレクトに「お前の夢を守るのも楽じゃねーな」にして欲しかったかなぁ。まあとにかくそっから最悪の状況を一気に吹き飛ばす赤ファイズ(ブラスターフォーム)に変身という流れは感涙ものの超絶燃えだったよ。惜しむらくはそこで「Dead or Alive」あたりが流れれば最高だったなぁ。これ流れてたら多分俺史上最高の映画として語り続けたな(笑)。
 んで、ブラスターフォームも天井突き破って飛ぶわ、よう分からん超絶ビーム砲はかますわで最強にハッスルだったワケだ。このエンターテイメント性の高さはちょっと凄かったですぜ。

■つーわけで
 全体的に超絶とか最高とかハッスルとかばっか言ってたけど、事実そんな感じなんで俺的評価は「超絶」としておきたいと思います。ちょっとDVD欲しくなるくらい超絶でしたよ。観に行って激しく正解でした。


555/補足:劇場版「パラダイス・ロスト」/2003.08.27


 なんつーかやっぱ仮面ライダーはヒーローだ!っていうことを見せつけられた気がする。子供が憧れを抱く純粋な意味でのヒーロー。子供は最初、多かれ少なかれヒーローに憧れるもんだと思うのよ。将来の夢はヒーロー!みたいな。でもそれはやっぱし夢物語で、成長していくうちに現実が分かってきて、ヒーローじゃ食べていけないとかなんとか、大人はキレイ言じゃ生きられないとかなんとか、皆現実に合わせて方向転換していくワケじゃん?でもなんつーか仮面ライダーくらいはずーっとヒーローの夢を見させて欲しいっつーか、子供の夢を叶える存在であって欲しいと…コレ僕の感想っていうかスタッフの願いも入ってたんじゃないかなぁ。つーのは真理の「救世主がやってきて、闇を切り裂き、光をもたらす!」っていうのは思いっきり子供が抱く夢物語なわけじゃん?そんな夢物語は現実志向の草加や同じ人間解放軍のメンバーには一笑にうされちゃうんだけど、巧=仮面ライダーだけはクライマックスで「お前の期待に応えるのも楽じゃねーな」とかぶつくさ言いつつブラスターフォームに変身して結局夢を叶えてくれるという……ヒーローの条件の一つに子供の期待(=子供が抱く夢物語)を裏切らないということをあげるとしたら、この映画は十二分にヒーローってのはこういうもんなんだぜ!っていうのをアピールしてくれたような気がする。
 あのシーンはホントカッコよかったよ。




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