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夢 守 教 会
†† coming soon..
「私には、詭弁だと感じられました。結局お父さんはお母さんを殺してしまったのですから。それが確かなものだと言われても、私には信じられない。」
竜志は彼女を説得する論理を持っている。論理は、彼が築き上げてきた世界を変える武器だから。
しかしだからこそ、論理で彼女を説き伏せることが、彼女が経験した悲しい時間に対する冒涜だということも理解していた。
だから竜志は親愛なる友人に打ち明け話をするように、目の前の普遍から排斥された少女にこう言葉をかける。
愛してる人がいるんだ。
その言葉を口にする過酷も、それでもそれが自分の偽りない本心であることの罪も、竜志は知っている。当然少女はこう答える。
知っています。
そう、少女はその対象が自分ではないことを知っている。衰弱した少女が意識を失うまで、おそらくもう幾ばくもない。だから少女はかすれるような声で竜志に訴えた。無力な赤子が、父に自分の承認を求める泣き声にそれは似ている。
証明してみて下さい。人を愛するということが、本当に確かであるということを。
少女の手は日本刀から離れ、そっと自分の胸を抱き締める。崩れ落ちる少女を抱き止める資格がないことを竜志はわかっている。
わかった。
少女の身体を抱き止める代わりに愛刀をしかと握ると、竜志は眼前の敵をみやる。
俺は負けない。
全ての装飾物が剥ぎ取られている。むき出しの意志だけが、竜志を規定している。
「氷王(ひょうおう)」
竜志は、"祝詞"を唱え始めた。
『夢守教会』第五話「孤獄の塔」より
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C79頒布コピー誌『振り子と架け橋と極点<準備号>(
こちら
)』に第五話少々掲載。
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