よっ、おめーのことだからどーせヒマしてんだろ?
来いよ。
いーもん見せてやっから。
あー?
ああ、まだ降ってんな。
・・・やっぱ濡れんのとかイヤか?
な、なんだよ!
おめーよくそんな恥ずかしいこと真顔で言えんな。
バ、バカ!
ンなことねーに決まってるだろ?!
オレもおめーが一緒なら雨が降ってよーとどうしよーと・・・。
あー! もう行くぜ!
ほら、これ。
なに不思議そうな顔してんだ?
雨合羽くらい見たことあんだろ?
貸してやるよ。
結構大粒の雨だかんな。
乗ったかー?
よーし、行くぜ。
ちゃんとオレにつかまっとけよ。
・・・・・
寒くねーか?
そっか、じゃ、も少し上がるぜ。
・・・・・
やんできたな。
・・・なんだ、おめー、震えてるじゃねーか。
わりー、やっぱ寒かったか。
ほ、ほら、こうしてあっためてやっから、もう少しガマンしろよな。
・・・そんな幸せそうな顔すんなよ。
そんな顔されたら、オレ・・・ あっ!
おい! 下見てみろよ!
そうだ、虹だ。
ああ、真ん丸だろ?
真ん丸の虹なんて見たことねーだろ?
オレも、雨上がりに偶然見てさ、そりゃ最初見たときはカンドーモンだったぜ。
そん時の話?
ンなもん聞いてどーしよってんだ?
ま、おめーが聞きたいってゆーんなら話してやってもいいぜ。
こっちへ無理矢理みてーに連れてこられてムシャクシャしていた時だ。
オレは外に飛び出して、雨なんてお構いなしにエアバイクの高度を上げていった。
いつの間にか雨はやんでて、なんの気なしに下を見たら真ん丸の虹だ。
バイクをホバリングさせながらバカみてーにポカンと口を開けて見てたらすっと消えちまってよ、
夢でも見たのかと思って、今日みたいな雨の日にまたバイクを飛ばしたらやっぱり真ん丸に見えるんだ。
虹ってヤツは半円型で、こっちとあっちに架かる橋みてーなモンだと思ってたのに、
上から見たら真ん丸だなんてな。
虹の向こうに幸せがある、なんておとぎ話、信じたこともねーけど、それを信じてるヤツがこれを見たらどーゆーんだろーな。
虹の向こうはつまりこっち。
始まりが終わりで、幸せが向こうにあるってんなら、そりゃ今そこにあるってことじゃねーのか。
オレ、今ならわかるぜ。
おめーがオレの腕の中にいて、幸せそうにオレを見上げてる今なら・・・。
幸せってヤツはどこか遠いところにあるんじゃねぇ。
気付きさえすればすぐそばにあるってことをな。
おめーが気付かせてくれたんだ。
・・・もう、離さねぇ。
ぜってーに。
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雨降りデートシリーズ第十五弾です。
いやぁ、とうとう終わりました。ご愛読ありがとうございました。
act1のリュミエールから約一年、毎回悩みながらも楽しく書くことができました。「楽しみにしている」なんて嬉しいことを仰ってくださる皆様のお陰です。
本当にありがとうございました。
「空から見た虹は真ん丸なんだ」人から聞いて驚きました。そして、いつかお話にしたいと思いました。
空からというなら、ゼフェル。虹というなら、雨上がり。ということで雨シリーズをゼフェルに締めてもらうことは早くから決めていました。
読んでくださる人が、少しでも幸せな気持ちになれれば幸いです。
2003.9.3
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