「ったく、何言ってやがるんだ、あいつは」
ゼフェルは、心のもやもやをうち消すように口に出して言ってみた。
しかし、気は晴れない。
もやもやの原因があの女王候補にあることは確かだ。
ちょっとぼうっとしてるが、普通っぽい、ゼフェル好みのあの子。
それをランディの奴・・・・。
『なぁ、ゼフェル、あの栗色の髪の子、可愛いよな!・・あ、おまえは女の子になんか興味なかったか』
オレだって身体にオイルが流れている訳じゃないぜ。
可愛い子がいりゃーそりゃ・・・。
『ははは。俺、あの子を見てると妹のこと思い出すんだ。俺によくなついててさ』
へー、そーかい、そーかい。
そりゃ良かったな。
あいにくオレには兄妹はいなくってよ。
『あの子の力になれるんだな。なんか、わくわくするよ』
あー、勝手にわくわくしてりゃいーだろ!
そう、人は人だ。
勝手にわくわくでも何でもすればいい。
いつもならそう思ってるゼフェルだったが、
あの女王候補を一目で気に入ってしまった今に限っては、ランディの言葉がやたら気に障った。
悶々としたゼフェルの気分などおかまいなしに時間はたち、試験は進んでいた。
「おい、ゼフェル、いるか?」
このN○Kのお兄さんのような爽やかな声はランディだ。
「やっぱり可愛いよな。アンジェリークってさ」
「おい!いきなり入ってきてあいさつもなしにそれかよ!」
「今日も育成をお願いに来てくれたんだ。俺の力は相当必要らしい」
ランディの耳にはゼフェルの言葉は入ってないようだ。
当然、ゼフェルの拳が震えているのにも気づいていない。
「おめー、あんなノーテンキな奴じゃなくて、もっとポンポン言うよーな女がいいって言ってなかったか?」
「そりゃ、人生に変更は付き物だからさ。俺は・・・」
「出てけ!」
「えっ?」
「るっせーんだよ!いいか、オレの前でアンジェリークの話なんて二度とすんな!わかったか!」
「・・・?おまえ、ひょっとしてアンジェリークのこと・・・?」
「うるせー!出てけって言ってんだろ!」
ランディと入れ替わりに入ってきたのはアンジェリークだった。
「あの、ゼフェル様?どうかなさったんですか?」
「何でもねーよ。ほんとおめーって、遠慮がねーな。まっ、女王候補なんてそんくらいでちょうどイイのかもしんねーけどよ。で、何しに来たんだ?」
「あの、ランディ様のことが知りたくて・・・」
今日は最悪だ〜〜〜。
”ゼフェル様・・・”呼ばれたような気がして森の湖へ向かう、と、前を行く人影に気づいた。
湖へ続く道に入るときに白いマフラーがちらりと見える。
『ランディ?!』ゼフェルは湖には向かわず、そのまま家に帰った。
『何やってんだ、オレは?』自問してみるが、答えは出ない。
試験開始から180日目。41個目の惑星が新しい宇宙に誕生した。
ゼフェルがアンジェリークのために贈った力によるものだった。
『アンジェリークが女王に・・・』
一晩たつとふつふつと後悔の念が沸いてくる。
ふたりっきりの森の湖でのはにかんだ笑顔。
夜の庭園で話を真剣に聞いてくれた優しい笑顔。
目を閉じても開いても浮かぶのはアンジェリークの笑顔だけだった。
コンコン・・・。
控えめなノックの音がした。
「あの、ゼフェル様」
入ってきたのはアンジェリークだった。
いきなり本物が現れて思考がまとまらない。
「なんだよ。明日は即位式ってときにこんな所へ来てどーしよって言うんだ?」
「・・・。帰ります」
「おいっ!ちょっと待てよ!帰るこたねーだろ!なんか用事があって来たんじゃねーのか?」
「・・・どうして森の湖へ来てくださらなかったんですか!」
「へっ?」
「何度も何度も呼んだのに、来てくださるのはランディ様か他の方・・・」
「ランディ?そうだ、おめー、ランディと仲が良かったんじゃねーのか」
「ランディ様はお兄さんのような方で、私が好きなのは・・・」
「アンジェリーク?」
「ゼフェル様、私、あなたのことが好きなんです」
「おめー、おめーが?ホントにオレのことを?」
「はいっ!」
「オレ、前に親友をなくして、今度はおめーまでなくすんだって思って、おめーはランディに夢中でオレなんか眼中にないなんて思ってて、それが間違いだったんだって・・・」
「ゼフェル様?」
「!!!?あー!オレは泣いてなんかいねーぜ!ほら、だからハンカチなんか出すなよ! ちゃんと言ってやるから!アンジェリーク、好きだーーーーーーーっ!」
Fin
とらまるさんの「鋼企画第一弾 -男泣き-」参加作品です。
キャラのことがまだよくわかってない状態で書いていますねー(苦笑)。
題名を付けるのがもの凄く苦手で、苦し紛れにN○Kの幼児番組のコーナー名を流用させてもらいました。
今回、題名を付け直そうかとも思ったのですが、やっぱり思いつきませんでした。。。
☆とらまるさんに付けていただいたコメント☆
男泣き企画唯一のお話作品です!まゆさん本当にありがとう(^O^)
今回、お話を短くするためにご苦労をされたそうです ごめんなさいネ;
でもゼフェルを幸せにしてくれてうれしいです〜!
鋼魂を持つみなさま!
「アンジェリ−ク」と言う名前の所を自分の名前にして読んでみると
より一層幸せな気分に!
2000.10.07(掲載)
2004.12.18(再掲載)
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