一年半後・・・・


「よう、いるか?」
「あっ、オスカー様、聞きましたよ。お后様おめでたなんですってね。おめでとうございます」
「私からもお祝いを言わせて下さい。それにしても、よろしいのですか? このようなところに来られて」
「ああ。今は悪阻がひどいらしい。そんな姿を俺に見られたくないそうだ」
「・・そうなのですか。それでも傍にいて差し上げるのが夫というものではないのですか?」
「うーん、私なら傍にいてもらえたら嬉しいけど、ロザリアだったらそう言うかも。何で私なんかと友達づきあいしてくれてるのかわからないくらいの貴婦人だもの」

アンジェリークが、貴族の娘として社交界デビューを果たした時、周りの冷たい視線の中で唯一声を掛けてくれたのがロザリアだった。
ロザリアは名門カタルヘナ家の令嬢らしく、すべてにおいて完璧だった。
そんな彼女と庶民同様のアンジェリークがなぜ仲が良いのか、本人達にもわからないが、それからも友達づきあいは続き、アンジェリークの結婚式にも当然ロザリアは出席していた。
披露パーティでロザリアにひと目ぼれしたオスカーは、それから一年間もカタルヘナ家に通い詰め、根負けしたロザリアがオスカーのプロポーズを受け入れたのは半年前のことだった。

「俺のことよりお前だ」
「はっ?」
「お前のところはどうなんだ? まさか子の作り方を知らないと言う訳でもないだろう?」
「オスカー!!」
「フッ、ま、頑張ってくれよ。いずれは俺の息子がコレット家の娘を后にするんだからな」
「オスカー? まだ諦めてはなかったのですか?」
「当たり前だ。お前に負けたままで俺が引き下がるとでも思っていたのか?」
「くすっ・・。オスカー様ったら、生まれてくる子は男の子とは限らないですよ」
「いや、俺に似たハンサムボーイに決まっているさ。だから、是非可愛いお嬢ちゃんを頼むぜ」
オスカーは言うだけ言うと笑って去っていった。

リュミエールとアンジェリークは顔を見合わせ、恥ずかしそうに笑いながら家の奥に入っていった。

おわり



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