夏祭り


子供のころ おばあちゃんに 手を引かれ

連れていってもらった 田舎の夏祭り

綿菓子、たこ焼き、金魚すくい・・・・

色鮮やかな提灯を数えるうちに

周りの世界は、走馬燈へと豹変していく

おばあちゃんのあの時の顔を

思い出せない

まるで、物の怪の館に迷い込んだように

素直に感じる心は いつ どこへ

置いてきたのだろう

もう一度、取り戻しに行こうか

 

田んぼのあぜ道を照らす月明かり

水の香りに誘われるように集まってきた

蛍たちが奏でる可憐なイルミネーションは

やがて、森全体を花火のように覆い尽くし

虫の音とほんの少しのそよ風に

蚊帳と蚊取り線香の煙が 揺らいで

おばあちゃんの語る真夏の夜の

夢の世界へと心は吸い込まれていく

素直に感じる心は いつ どこへ

置いてきたのだろう

もう一度、取り戻しに行こうか