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書庫#5: 「SouthEast-LONDONからの便り」
現代の『英国人紳士淑女』に学ぶマナー 山田美也子
| 英国人報道写真家と国際結婚をして8年になる。 大胆な決断をした割に臆病な私は、未だ英国移民になりきれず、 ロンドン/東京の往来生活を続けている。 そんな暮らしのなかで感じた英国流マナーをお話してみましょう。 現在のロンドンは「ロンドンミックス」の名のとおり、多人種多民族多宗教が混在する巨大移民都市。そこで、古典的『英国人紳士淑女』を探すのはもはや難しそうだが、こうした混乱気味の状況下においてさえ、伝統的な英国流マナーは、変容しながらも、逞しく、現代に受け継がれているような気がする。 英国人の美点は、「相手との距離の置き方の絶妙さ」の一語に尽きるかもしれない。深入りし過ぎず、穏やかで温かい人間関係を築くのは実に難しい。「教養」や「経験」が問われ「マナー」が要求されるからだ。 その点<彼らはなかなかの達人だ!>と私は思っている。 『肩書き社会』日本では、名刺の肩書きがそのひとの信頼度に直結する。 「仕事を抜きにして…」と敢えて断らなければならない程、仕事と付き合いが密着しているから、繁忙期は深く付き合ったのに肩書きが外れたら友人も失った、なんて笑えない話もでてくる。 英国人は、仕事付き合いと友達付き合いを混同したりはしない。もちろん重なる人間関係も皆無ではないが、必ず一線を敷く。 たいていの仕事付き合いは、ビジネスブレックファストか、ビジネスランチ、または夕方のパブで済ませてしまう。グラス一杯のビールを小一時間かけてじっくり味わう彼らは、実にリラックスして仕事の話を展開する。伝統的『ティータイム』がこれに替わることもある。 さて、夕食は午後8時過ぎからだが、大切な友人は自宅に招き食事をともにする。オーブン料理が出来るまでの数十分、ワイングラスを片手に庭を散策し、ガーデニングの話で盛り上がる。子供たちは早めにベッドに追いやられるので、大人だけのゆったりした時間がながれる。キャンドルを灯して食事を楽しみ、デザートやチーズを満喫し、お茶やブランデーを戴く。特に気負うことのない家庭料理で、互いに招き合い、大いに語り合うのが、英国流の大切な友人との付き合い方である。 自宅に招き合うということは、互いの家庭の事情がまる分かりになる。 夫婦関係、子供の問題、経済状態から体調に至るまで、すべてがオープンになる。しかし、そこで見聞きしたことや感じたことを、その後、噂したり批評したりは決してしない。記憶の箱にそっと封じ込める。それが「礼儀」であり「マナー」だと招かれた側は自覚し、招いた側もそれを信じるからだ。 互いの生き方を尊重しながら、静かに見守り合う。この信頼関係が、適度な距離を保ちながらもより深い人間関係を築いていく秘訣だと、彼らは知っている。 この絶妙な距離感は、夫婦の間にも、親子の間にも共通する感性だ。 テーブルマナーや挨拶などの立ち居振る舞いに神経質になる前に、もっと大切なコミュニケーションマナーを彼らから学ぶべきかもしれない。 英国は階級社会だし、個人主義で自己主張の強い競争社会だ。しかし、日本のようなもたれ合い社会にはない、厳しい自己自立社会ならではの清々しい美点を彼らは持っている、と私は確信している。 |
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2008
最終更新日: 2008/05/10