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2003年8月13日

タクシー客は60代のウツ病で入院先の大学病院からの一時外出だけど、症状がヒドクなって電車を降りて、みみ太郎のタクシーをご利用で・・・

「運転手さんの親友の方も鬱の治療受けてるの?」

「ええ、10年ほど大学病院に通ってますねえ」

「いやあ、そーいうふーに
身内や友だちに鬱病の人がいるってんでなきゃ
なかなかオレも、鬱で医者にかかってるなんて
いえねえやなあ・・・」

「そーっすよね!お客様、
なんか、とんでもない凶暴になっとか
イキナリ自殺すっとか偏見もってるヤツ多いっすよね」

「そうそう」

「ニューヨークのビジネスマンなんかじゃ
かかりつけの精神分析医のカウンセリングを
日常的に受けに通ってるのが多いって
なんかの小説にありましたよね」

「それによ、鬱のこと
わかってねーヤツも多いからなあ・・・
そんなのクヨクヨすんじゃねえっつーヤカラだよ」

「ほんとに、社会が鬱病ってものに対して
あまりにも未成熟ですもんね」

「オレの場合は60近くなって
会社からクビ言い渡されて
裁判だのなんだので
スッタモンダしてるうちになっちゃったんだよ」

「ああ、そうですか・・・
とにかく、過大なストレスに晒されて
なる病気ですもんね」

「そいでよ、ウツのクスリってな
物忘れヒドクなるし、キョーレツなんだよ」

「えー!お客様!鬱の治療薬って
そんな副作用あんですかぁ!」

「そーだよ、運転手さん知らなかったの?」

「えー・・・だって
マスコミなんかの広告じゃあ、
今は良い鬱の薬があるから
脳の中の分泌異常を治して症状がよくなるって」

「いやあ、クスリの副作用はすごいよ!
オレの場合はハイになりすぎるってのもあったし
何より、ひでえのは
テメエの病室を忘れて廊下で行きすぎたり
感情がぜんぜんなくなったり、ホント
人格の喪失ってなもんだよ」

「へえ〜!お客様!
私の勉強不足でした!
なんか、特効薬の開発で医者にかかって
クスリ処方してもらえば
なんかスゴーく良くなるよーな
マスコミの書かれ方じゃあないっすか!」

「それだから困っちゃうよね」

「でも、種類いろいろで
血圧のクスリみたいに
その人にあったのが見つかれば
副作用も最低限になるってなもんなんでしょ?」

「うん、そりゃそうなんだけど
ソレが見つかるまでが
たいへんだよ・・・なんせ、ウツってなァ
なったら、ひどいもんよ・・」

「でも、お客様
いずれ、副作用の少ない
お客様にあったのが見つかるまでの
時間のモンダイですね
きっと、みつかりますよねえ・・・」

「うん、そー思ってシノぐしかねえやな」

「ところで、私の友人に
交際してる女性にアツくなりすぎて
なんかヤキモキ悩んでるのがいましてね
ヤローがゆうには
『こんな付き合い続けてたら
ストレスで鬱病になっちまう』なんて
ヌカしてんですが
好いた惚れたで騒いでんだから
なんかヘンですよねえ?」

「アーッハッハ
運転手さん、そのトモダチに
いってやんなよ、
『女に惚れてるうちは
絶対、ウツじゃない』ってね」

「あ、なるほど、鬱病になったら
恋愛なんかできなくなるってことですね」

「そうそう、その、オトモダチが
女に興味なくなったらヤバイだろーがな」

「あ、次の角のマンションですね
お待たせいたしました・・・
いやあ、とても勉強になりました
ありがとうございました」

・・・みみ太郎、鬱と闘うこの男性には
短時間ながら
とても、多くを教えられたなぁ・・・
 


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