日本酒


 1995年2月11日(日)、石越(いしこし)醸造の酒蔵開放に参加した。石越醸造は宮城県登米郡(とめぐん)石越町にある酒蔵だ。主要銘柄は「澤乃泉(さわのいずみ)」である。

 どうやって参加申し込みをするのかと言うと、酒蔵に直接電話で開放日を確認する。開放の参加申し込みは、電話でOKの蔵もあれば、葉書で申し込む場合もある。酒蔵によっては開放しなかったり。地元の人のみに開放する、身内でしかやらない蔵もあるので、参加したことのある人から情報を得るのが、良いと思う。
 なぜ、開放するのか。それは、地元の人達に「今年も美味い酒ができました。どうぞ賞味して下さい。農家の皆さんが、一生懸命に米を作ってくれたおかげです」という感謝の意味がこめられているのだ。今回は、それに便乗して参加したのだ。この時期、新聞に「酒蔵開放」の広告が載ったりするので、要チェックですぞ。もちろん参加費用は無料だよ。

 日本酒は、地元の人に飲んでもらえてこそ地酒だと思うのだ。地元で消費する酒を、遠く離れた土地の店などで売られ、私達は地元の人達の酒を横取りしているようなもんである。日本酒をいただく時は、ありがたく利かせてもらおうよ。
「有名な酒=売れる酒=美味い酒」という図式ができ、私達は「美味い酒」というものを勘違いしていないだろうか。「美味い酒=売れる酒」とは限らない。「美味い酒=美味い」だ。

 難しい話はここまでにして、っと。普通列車とタクシーをのりついで、午後12時30分頃、石越醸造に到着。受付で、「お楽しみ番号」がついた紙と酒粕1kgとカップ酒1つがもらえる。さっそく利き酒をする。「普通酒」「本醸造」「純米酒」の3種類だ。全問正解者は参加者の約1割の人である。賞品は、ガラスの灰皿だった。去年は、茶こぼしだ。私の結果は、う〜ん、1つしか当たらなかった。不本意な結果であった。
 ほとんどの人は、真剣に利き酒をしないで、「1番の酒がうめな。2番もうめな」「もっと、ついでけろ」「いや〜、どれがどいだがわがねなや。いやいや酔っぱらったな。がははははは」という調子なのである。

 午後1時〜、酒蔵を見学する。焼栗のような香りのする麹米をちょいと口に。仕込み途中のタンクからは、林檎のような、熟したバナナのような、甘い果物香がする。「ぶつ。ぶつ」と、発酵している音が聞こえる。生きている酒。タンクから、ひしゃくで、もろみを汲んで飲んでみる。舌にビリビリときて少し酸味がある未成熟の酒だ。これが、また、美味いんだわ。酒蔵に行かないと体験できない至福のひととき。

 さあ〜!お楽しみはこれからだ!受付でもらった番号による抽選やじゃんけん大会があるのだ。豪華賞品はタオルから大吟醸1升まで。去年は、1つも当たらなかったので、あまり期待していなかったのに…、なんと、今年は、「ササニシキ 純米酒 4合ビン」「ひとめぼれ 純米酒 4合ビン」「大吟醸 1升ビン」と、まあ、3本も当たったのだ。約8000円の賞品だ。うれしいけど酒が重いわ〜。午後5時40分頃、仙台駅に到着〜。今年の運は、これで使い切ったとみるか、これが幸運の始まりとみるか。
(おしまい)