「人魚姫」 柩のような飛行機が 爆音をたて旋回する。 日本を続々飛び立った 翼のついた柩が海に沈んだ。 浜にうち上げられた 男の記憶は消えていた。 毎日、海を見つめるその横顔はさみしそう。 悲しい夢でも見たのだろうか。 三夜(さんや)がにじむおだやかな 海に男はすい込まれ 輝き残る魂を 食べた人魚は激しい消化不良。 泡となって消えるまで 男と共に生き続ける。 毎日ささいなことにケンカしたり笑ったり。 よころび抱きしめ時を重ねる。 今日もまた 翼のついた柩が海に沈んだ。 人間の生き残しの魂を食べる人魚たちが たわむれる海。 |