日本酒


 平成7年2月25日(土)、某酒屋の部活動に参加した。山形県寒河江市にある千代寿虎屋酒造の酒蔵見学会である。
 千代寿虎屋酒造は、酒造りに適した水と米を求めて山形市から寒河江市に進出してきた。寒河江市の水は特に酒造好適であり、その水で作る米が酒造好適であれば、品質本位の酒造りに徹しているといえよう。
 また、すでに絶滅した幻の酒造好適米「豊国(とよくに)」を特別契約栽培。全国にさきがけて造られた純米吟醸酒である。それが「寒河江の荘(さがえのしょう)」である。
 戦前の寒河江市では、草履表(ぞうりおもて)造りが主婦の内職であった。その草履表の原料は特に長い稲藁が必要であり、そのため寒河江市では「豊国」という茎の長い品種米が多く植えられていた。茎が長いため(他の品種より30cm位長い)倒れやすく収穫も少ないので農家には歓迎されない品種であった。
 千代寿虎屋酒造の杜氏を含め蔵人は全て寒河江の人々である。寒河江の水、寒河江の米、寒河江の人々で造られる酒。これがまさしく「寒河江の地酒」である。

8:45
 某酒屋集合。参加者:人間17名+犬(シベリアンハスキー)1頭。
9:00
 車3台に分乗して出発。
 東北自動車道から山形自動車道に入り、古関S.Aでトイレ休憩。宮城県と山形県の県境で、まだ雪が残っている。寒い。関沢I.Cで降り、国道286号線に出て山形市を通り寒河江市に向かう。
11:00
 早めの昼食。山形市内の蕎麦屋に入る。ここの主人は職人気質のがんこ親父なので、わがままを言ったり騒いだりしないようにと事前に注意されていたが、ぜんぜんそんなことなかった。店内の水槽で金魚(和金)を飼っていて、あまりにもでかかった、いや、見事だったので、驚いたら、いや、ほめたら「7年、生きているんだ」と、うれしそうに笑っていた。気を良くしたのかもしれない。自慢の金魚だったのだろう。
 蕎麦粉100%で、注文を受けてから打つ。美味い店だと聞いていたが…。私好みの味ではなかったので(はっきり言うと、不味かった)、店の名前は伏せます。
「そば粉100%の蕎麦を食べたことあるか?」「(あるよ)」「よ〜くこねないとダメなんだ。美味いだろ。こういうそば食べたことないだろ」「(はい。そば粉100%使用で不味いのは食べたことなかったです)」
 すぐに「板そば」と「ざるうどん」が出てきた。予約しておいたので、到着時間に合わせて打っておいたのだそうだ。「山形そば」と聞くと、黒くてゴキゴキモキモキしていると思っていたら、そば粉100%と思えないほど白い蕎麦だった。
 そばとうどんを同じめんつゆで食べさせるのは納得できない。そばとうどんに合うつゆは違うと思うんだけどな。うどんに合うつゆだけど、そばには合わないつゆだと思った。
12:00
 そば屋を出発。
 お土産を買うため「寒河江チェリーランド」へ行く。ここで「さくらんぼ醤油」発見。どんな味がするのだろう。謎だ。私らしくなく、買わずに帰ってくる。
13:00
 千代寿虎屋酒造に到着。
 蔵見学をする。仕込みタンクから、もろみを、ひしゃくですくって飲む。あと5日位で熟成するもろみだ。あ〜、うめえ。土曜日は酒をしぼらない日だったのか、しぼりたての酒をいただくことはできなかった。とても残念。
 現在の社長が、最近までその存在を知らなかったという30年も前に仕込まれた古酒の入った瀬戸のタンクを見せてもらった。杜氏が体調を崩し休んでいるそうなので、元気になったらお祝いに封を切るそうだ。どんな味になっているか楽しみである。当然、私達の口には入ることはない。店に入荷したとしても、私の手の届く値段ではないのだから。
 見学の後は会議室で、瓜の粕漬け、本醸造、純米酒、社長さんの奥さんが作った甘酒をいただきながら「酒と日本文化」について社長さんから講義を受ける。せっかく出していただいた酒はとても美味しかったが、帰りの車の運転もあるし、また、運転手3人に気を使い、なかなか減らない。そのかわり(と言うのは失礼ですね)冷たい甘酒好評だった。美味かったからである。千代寿さんでは、甘酒を冷たくして飲むのだそうだ。粕漬けと甘酒は、もちろん千代寿さんの酒粕を使ったものだ。
 最近、耳にする「姫飯(ひめいい)造り」「融米(ゆうまい)造り」「焙炒(ばいしょう)造り」について説明もあった。以前、日本名門酒会宮城県支部長さんからもお聞きしたことがある。この造りは日本酒の工業生産を目的に考えられた技術である。生の白米を熱いお湯に入れて、デンプン液化酵素に入れ、デンプンを糖分に変えやすくしたり、米に300度近い熱風をかけ短時間にデンプンを液化する方法である。米を磨く必要もないので、糠も出ず、米のカスのカスまで使うので酒粕も多く出ない。雑味がある酒には着香(香りの足りない酒に酒の香りをつける)や、テリを加えたり、透明にさせるために必要以上に活炭を入れろ過するのである。
 日本酒とは、米を磨き、仕込み、ろ過する「引き算」であって、足し算であってはならない。
 それに、韓国などで酒を造らせ、それを日本で「日本酒」と称して安く売り出してる蔵(工場!)もあるのだ。今のラベル表示では読んだだけで判断できないようなので、表示については検討されているらしい。
「日本酒」とは、日本の米で、日本の水で、日本で造り、蔵が「技」「味」「個性」を競うものであってほしいと思うのは、私だけだろうか。
15:30
 千代寿虎屋酒造を出発。帰りも自動車道を通って無事17:00に到着。私は二次会に参加しないで、まっすぐ帰宅。
 千代寿さんからいただいた酒粕(板粕)2kgは、さっそく粕汁に使い、甘酒も作った。
 酒造りにこだわっている蔵の酒粕は、やはり美味しい!!
(おしまい)