音楽と人 1995.5月号 ■■■TAKURO+JIRO
[ 「父」と「母」だあ!]
----改めてJIRO君の功績を説明してください。 TAKURO:ヴィジュアルや音楽に対する考え方が、結局俺たちの勘違いだった事に気づかせてくれたというか。 JIRO:俺、GLAYに入った時から本当、今のようにほとんどメイクもしてなかったんです。そしたらTERUとTAKUROが「ねえ、ちょっと目の上塗ってみない?」とか「口紅もう少し濃くしてみない?」って(笑)。 TAKURO:じりじりと(笑)。 ----わははははは。 JIRO:そん時は全然「いや、俺はこれでいいんだ!」って言ってたんだけどーーでもやっぱりメイク組のTERUやHISASHIが人気あるわけじゃないですかーーだんだん「俺もここでつっぱってたら損するなあ」と思ってきて。それから口紅とか髪型とか(笑)。 ----(苦笑)君も最初は日和ったわけか。JIRO君は元々はヴィジュアル系じゃないんだろ? JIRO:いや、あのー、高校生の時はヴィジュアル系で。 ----へえー。何で足を洗ったんですか?そんなに早くから。 JIRO:何でだろう……東京に出てきてから、ハードロックや初期パンの友達が異常に増えたんですよ。で何か、自分の演ってた事が凄い恥かしくなって(笑)。ちょうどその頃GLAYに誘われて……コレ言っていい? TAKURO:何が? JIRO:そん時初めてGLAYを観て、俺は正直言って全然演る気なかった、「なんだ。駄目だこりゃあ」って(笑)。 TAKURO:うわ、これは最悪の話になってきた(笑)。 ----(笑)でもそんなにヴィジュアル系を恥かしいと思っていた人間が何故、当時GLAYに入ったのか謎だ。 JIRO:東京出てきて一人で演ってて、バンド探したけどいいのが無かったから。「とりあえず演るだけ演ろう」「イイ思いをしようか」って(笑)。でとりあえず妥協して入ったら、GLAYはヴィジュアル系のくせにーー」 TAKURO:この言い方が物語ってるでしょ?(笑) JIRO:誰一人としてヴィジュアルに徹底してる奴が居なかったんですよ。だから「こりゃラッキーだ、俺がどんどん変えていこう!」って TAKURO:俺達ってヴィジュアル系のくせにーーくせにですよ、夏になると暑いって理由だけで急に薄着に。しかもタンクトップ1枚になったりして(笑)。 ----それ、ヴィジュアル系の風上にも置けない、根性足りない奴なんじゃないか、もしかしたら。 TAKURO:置けない奴なんですねー。 JIRO:で、とりあえず一緒に演ったら面白いだろうから、って感じで。ただね、最初は1週間後のライヴを手伝う話だったのに……俺は脱けるタイミングを見失って、今までずるずる。 TAKURO:「JIRO、とりあえずサポートでいいから演ってくれないか」「ああ。いいよ」という事になって。でもまだ俺、正式参加の返事まだ貰ってないですから(笑)。 ----あ、実はまだメンバーじゃないと(笑)。 TAKURO:まだメンバーじゃないという(笑)。 JIRO:実は(笑)。 ----で、自らの反ヴィジュアル体質をどのようにGLAYの中で電動したわけですか。 JIRO:極端な話、どん兵衛食ったら皆が凄いショックを受けちゃうって存在が嫌なわけですよ。 TAKURO:存在が非現実的、ってところで。 JIRO:その食ってる姿を見たファンが愕然としちゃって、もうそのバンドを好きじゃなくなってしまうような存在には、ね。 ----見損なわれる存在にな。 TAKURO:でも何でどん兵衛食って見損なわれるんだろ(笑)。 JIRO:そういう見られ方って、音楽にとって凄く邪魔な事だと考えたからーーだから、ヴィジュアル系っていうのはどうも音楽にとってマイナスなんじゃないかなと。とりあえず昇るとこまで昇るけど、その後が自分にとって凄い大変だなって。平気な性格の人ならいいでしょうけどね。 ----函館セクシャル系のTAKUROにすれば、かなりショックだったりしない?相容れないというか、 TAKURO:それはね、ありましたよ(笑)。でもね、そのJIROが人気出るわけですよ(笑)。学びましたよ、メイク落として素顔の方がTERUよりもHISASHIよりも人気あるぞ!おかしいなーって(笑)そう思った瞬間、我々三人がごわーって化粧薄い方向に路線変更するわけだ!(笑) ----わりと君、主体性レス? TAKURO:音楽に関しては主体性あるんだけど、ルックスには別にこだわってなかったから。そんなもんですよ、結局ね。今もそうだけど。 ----そういう意味では、JIROはGLAYがヴィジュアル系の恰好にこだわらなくてすむ大義名分敵存在なわけだ。 TAKURO:ちょうどいい中和剤。 ----TAKUROは渡辺美里やビリー・ジョエルが実は好きだったりするけども、JIRO君は? JIRO:俺結構流行り物が好きですよ、何でも。ただ、深みには入んないです」 TAKURO:スタイルから入る事が多いですね。だから。JIROって「よし曲を作ろう!」と思ったら、部屋を綺麗にするんですよ(笑)。 JIRO:そう、俺の場合はそっから始まるんです。で、紅茶も準備して万全に(笑)。 ----形から入る男だなあ。見た目も渋谷系というかオリーブ系で、変わってるしなあ。 JIRO:ああ、そこを狙ってるんですよ俺、実は。だから、バンドだからバンドマンらしくしなきゃ駄目だとかは全然無くて。 TAKURO:まだまだ俺達は若いせいもあって、音楽とかファッションとか自分の出し方とか、やっぱり目があっちこっち向いちゃいますよね」 JIRO:そういう意味では、バンドとしてはまだ試行錯誤状態かもしれないんですけど。 TAKURO:でもやっぱりね、俺思いますけど、音楽はもうがっちり演っていこうって皆の気持ちは一つなんですよね。ファッションの方はともかくとして。まあ、逆を言えば、音楽以外では、誰か一人が頑固に意見を言い張れば「そこまで言うなら、じゃあ変える変える」ってなるバンドだから。いやあ、GLAYの歴史は言い張った奴が勝ちっていう(笑)。 ----わははははは。いい奴ばっかだなあ。 JIRO:とりあえずはみんな素直だったりするんで(笑)。 TAKURO:でもね、役割分担ははっきりしてるんです。俺がマイナス君で残り全員が四人がプラス君なんですけど……。 ----(笑)マイナス君、ほざいてます。 TAKURO:マイナスだけど力持ってるぞ、的な(笑)。そういった嫌な役回りです。 JIRO:やっぱり力持ってますよ。 TAKURO:頑張ってるもん、俺(笑)。 JIRO:口上手いんですよ、口が(笑)。 ----俺が思うに、TAKUROはいろんな事を、言い訳も含めて考えまくり過ぎちゃって、煙が出るほど超高速回転し続けてるような気がするんだよなあ(笑)。 JIRO:ああ、そうですそうです。 TAKURO:「そうです」って君(笑)。 JIRO:悪い方のことばっかり考えてどんどんどんどん悩んで、問題抱えてくんですよ。 ----そんな男にJIROくんはどう対応するの。 JIRO:俺は良い方の事を言って「それはそれでいいじゃん」って。でもTAKUROは「いや、それではイカン」。 TAKURO:「こいつらの人生背負ってるんだあ!」「俺一人船の先っぽに立って氷を砕いて進んでく役割なんだあ!」と真剣に思い込んでた時期ありました(笑)。 ----おせっかいだよ、そりゃあ(笑)。 TAKURO:あはははは、そんな身も蓋も無い。でもね、俺とJIROの二人のミーティングが物凄く多くて。「他の三人を悩ませちゃイカン」と!(笑)。 ---神経質母と雄大な父かい、君達は(笑)。
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