■■■ 音楽と人 1995.5月号   ■■■

 TERU+JIRO+HISASHI
 [ 合言葉は「笑われてなんぼ」 ]





どこか可笑しさのあるアーティストにはメジャー感がある……というのは私個人の持論だ。必ずしも全てに当てはまるワケではないが、この理論って案外イケるから不思議。ただし、ここで言う可笑しさとは、ギャグとかウケを狙った奇抜な演出を意味するのではない。例えば、カッコつけた人間は見るのも恥ずかしいが、ハゲちゃびんのヅラをつけてもフッきれてりヤツはカッコイイ。サザンもミスチルもB'zも、笑えるくらいのカッコ良さがある、と私は思う。そして最近のGLAYにも、そんな「笑い」的要素を感じる。TAKUROなんてスカしてても可笑しいヤツだもんなあ。が、だからこそウケるのだよ。カッコつけ過ぎちゃイカン。実際、シングル『Yes,Summer Days』もスマッシュ・ヒットを記録し、この11月8日には、またも売れ線『生きてく強さ』をリリース、売れっ子への階段を着実に上がっている。う〜ん、いいねえ。売れなくっちゃね。ってんで、今回はニュー・アルバムのレコーディングを終えたばかりのメンバー3人(TERU、HISASHI、JIRO)に集まってもらった。たまたま当日、キャンペーンでTAKUROのみ取材に不参加という珍しいパターン。こりゃ暴露大会になるかと思いきや、3人はあくまでも真面目。良かったね、TAKURO。



----このところ、寝るヒマもなくて忙しそうだったじゃないの。


TERU:でも9月は結構オフがあるんじゃないかな
JIRO:昨日も休みだったんですよ。で、いろんなレコードショップを覗いたりしてて。発売日前だったけど、レニー・クラヴィッツの新譜はないかなと……実は、さっき買ってきちゃいました


----そんな寄り道をするから今日は取材時間に遅刻するのだっ!


JIRO:(苦笑)これで遅れたわけじゃにあですよ。あの、小さい音でかけていいですか?


----しょうがないなあ、もう!


JIRO:ま、とりあえずはそういう近況です。でも、なんだかんだ予定が入ってる人もいますからね。TAKUROは昨日から札幌に行ってるし


----TAKUROの名前が出たところで、さっそく欠席裁判を始めますか。うひひ。基本的には詞やサウンドの要で、メンバー内でも信頼度の高い人だとは思いますけど。


TERU:そうですね。ただ……彼は根っからのマイナス思考なんですよ


----マイナス思考なんだ!


HISASHI:考え方っていうより、好きでやってるんじゃないの?マイナス思考(笑)
TERU:
深く考えすぎるっていうのはありますね。いいものを膨らませるんだったらいいけど、悪いところを膨らまして膨らまして……結果、自分からドツボにハマッていくという。それがあるから詞や曲もいいものが出来ると思うんですけど


----「ここで浮かれちゃいかん!」と気を引き締めてるんですかねえ。


TERU:いや、俺達が暴走しないように調整してくれてるんです
HISASHI:そう思うとバランスがいい


----なくてはならぬ存在なのね。


TERU:そうですね
HISASHI:もしメンバー全員がTERUみたいな感性だったら、たぶん2年くらいでGLAYは終わってたんじゃないかな


----わはははは!言われちゃったねえ。


TERU:俺って暴走しがちですから(笑)


----しかしTERU君が責められてどうする!他にTAKUROへの御意見希望はないんですか?


HISASHI:もっと辛い恋をして欲しいですね


----辛い恋ぃ?


HISASHI:そうすることによって人間が磨かれて、GLAYが大きくなるんだなと。そういうのがまた似合うんですよ、彼は


----辛い状況の似合う男(笑)。気の毒な。


HISASHI:だから何か作りたくなるんでしょうね
JIRO:俺は、TAKUROくんは今のままでいて欲しいと思うな。凄く神経質なところもあれば、何でそこまでズボラなの?って思うくらいズボラなときもある。今のところ、何から何までバンドを運営してるのはTAKUROって感じかもしれないけど、実は細かいところで俺やTERU、HISASHIの意見を彼がうまくまとめて人に伝えてることも多いんで


----饒舌だからね、あの人は。あのしゃべりは昔からなんですかね。


JIRO:いや、メジャー・デビューする少し前から、妙に成長したような気が
TERU:インディーズのときは、こういうインタヴューなんて当然なかったですしね
HISASHI:でも、このメンバーがGLAYにいるのは、彼の話術のおかげだと思いますよ


----話術!


HISASHI:知らないうちに正式メンバーになってたなんていう人もいますから


----誰それ?


JIRO:俺かな?(笑)


----それに加えて、あのポップ感覚。協力なんだよねえ。11月に出るシングル『生きてく強さ』って、またもやポップだもんな。そうそう、今回はカップリングの曲がHISASHI君の作品なんでしょ?


HISASHI:あ、そうなんですか?
TERU:おめでとうございます(笑)


----新鮮だったよ。今までのGLAYにはなヵったタイプの曲だもん。それとアルバムに入る曲で『More Than Love』は先に聴かせてもらったけど、ヘヴィーなギターのリフで始まるじゃん?これも新境地って感じ。

TERU:これはライヴで育った曲だし
JIRO:一発録りなんですよ


----へえーっ!


JIRO:うん。快挙


----このハードさ、いったい何があったんだろうっていう。


JIRO:男ですからねえ、GLAYも!
HISASHI:軟弱バンドではないぞと。その意気込みを曲に託してみたわけです。ライヴでの男らしさとか荒々しさが作品にできたらいいなと。俺達のライヴを見ただけじゃ、CDの音は想像できないと思うしね。
JIRO:この曲を作ってた頃って、軟弱なものに戸惑いを感じていたのかもしれない。


----君達の口から男らしさとか荒々しさというボキャブラリーが出てくるとは……。


JIRO:だって、函館の男ですよ


----え?


JIRO:港町ですよ!


----それと男らしさとどういう関係が。


JIRO:よく埠頭で遠くを見つめながら、マドロスのようにキメてたもんスよ(笑)

----はいはい。煙草をくわえてたりして。


TERU:錨の入れ墨入れてたりとか


----それは……ちょっと苦しいギャグだな。


JIRO:ほら、ここで滑るのがTERUです
TERU:ははははは!


----TAKUROの悪口から話題がそれてしまったな。まいっか(笑)。


JIRO:あのね、バンド内で笑いを研究したことがあったんですよ。どうしてTERUのギャグはコケるのか。いつも誰かがボワーン、ドカーンと打ち上げてるのに、TERUが口を開くとポシャッ(笑)


----そうなんだよなあ。


JIRO:俺とTAKUROは勢い系なんですよ。デカい声でドカーンと言う強引さが勝ちみないなところがあって。HISASHIは口数は少ないけど当たりが大きい。笑いのツボにグサッとはまるんです。
TERU:だって俺が何かを言おうとすると、皆が「あ〜、わかったからもう言わなくていいよぉ」って(笑)


----でもさ、こじつけるようだけど、笑える要素って大事だと思うんだよね。


JIRO:うん、俺もそう感じますよ


----特にTAKUROのキャラクターに面白い要素があるんだよねえ。


JIRO:一番ヴィジュアルと反してる


----一生懸命であるんだけども、そこが可笑しいっていうのかなあ。


JIRO:そうそう。そうなんですよ。あの……俺らヴィジュアル系じゃないですか


(全員爆笑)


----自ら言うか(笑)。


JIRO:だからステージの上で転ぶのがカッコ悪く思われるのはイヤだなと思ってて。俺、よく頭振って弾いてるから、時々真っ白になって転びそうになるんですよ。で、実際転ぶんですけど、その時はわざと大きく転んでみたりとか。俺が転んじゃって「ああー、カッコ悪い!」って思うんだったら、(ライヴに)来なくていいよっていう。別に嘘の姿を見せたいとは思わないから、そのまま派手にコケてしまおうって感じですよ
TERU:俺が手を挙げた時にワキ毛がボッと出てたっていうー----そういうんじゃないですよね(笑)。すいません


----またハズす。


HISASHI:あ〜あ(笑)


----気を取り直して……えー、私個人の見解としては、売れてる人には笑えるものが付き纏ってるように思えるのね。真っ正面から受け入れられて、楽しさが滲み出るっていうのかな。GLAYにも、そんな部分が出てきたと思うんだけど。


TERU:きっとどこに目線を向けるかだと思うんです。コアのファンだけを相手にするんだったら、別に笑える要素なんて要らないし、固く固くカッコつけてればいいわけですよね。でも、もっと幅広い層の支持を得ようとしたら、自分達の自然な姿を見せていくべきだし、それが評価されることに繋がるんじゃないですか?


----一概には言えないけど、怖〜い メイクでドロドロで暗〜いバンドのライヴは楽しくなさそうだもんねえ。アマチュアに多そうな雰囲気といいますか。


JIRO:そうですね。昔対バンで一緒だったドロドロのバンドが、今はいないっスから。当時は俺らより、全然人気があったのに
TERU:
うわー!暴言を吐いたな


----今は……いないんだ。


JIRO:いないっスよ。それに比べて、俺ら昔からアホだったよね(笑)


----アホ?


JIRO:夏には自分達で団扇を作って、ライヴの時に配ってみたり。ほかにもいろんなものを作ってましたよ。よく舞台の上にある半紙をペロッてめくるやつがあるじゃないですか。あれを作って司会を立てて「次のバンドは○○です」なんてやってましたから。
HISASHI:危うく全員デーモン(小暮)のメイクをしたりね。それはさすがにJIROが止めてくれたけど
JIRO:そこまではマズイだろうと


----結構やってるねえ!


TERU:今ではこういうなりをしてますけど、俺も一時期ちゃんちゃんこを着ながら……


----ちゃんちゃんこ?それ、どういう解釈なんだろう。


JIRO:ただ単に人が笑ってくれれば
TERU:そう、それでいいっていう(笑)


----笑ってくれればそれでいいの?


JIRO:昔からそうですもん。自分達も楽しんでお客さんも楽しむ--------この考えは変わっていない。もちろんキメるところはキメていきたいですけど。あと、何があったっけ?
----まだあるんだ?スゴイ過去が。


TERU:ぬいぐるとか


----……ぬ、ぬいぐるみ……何だそれ?


JIRO:その一方で、きちんと自分達の新曲のデモ・テープを配ったり


----音楽と企画モノの両方あるからいいんだろうね。結局、全てのことは音楽を聴かせるキッカケみたいなものだから。


JIRO:そういうことに関してはもう(笑)。例えば、俺達が主催したライヴで3バンドくらい集まるじゃないですか。団扇作ったり、プログラム作ったり、バンドのプロフィールを作ったりと、色々とやることが多いわけ。そこで全バンドのリーダーが出席する首脳会議を開いて。


----首脳会議?そんな大袈裟な。


JIRO:そこで各バンドの役割分担を決めたりするんです。そのおかげで、いつもは50人くらいしか客が来ないのに、動員が200人になったりしましたもん


----団扇欲しさに。


JIRO:今でもそういう面って引きずってますよ。たまに昔からのファンが……「魔女狩りナイトはもうやらないんですか?」なんて言ってきたりしますけど


----魔女狩りナイトって何?


HISASHI:「魔女狩り」って曲があったんですよ。すっごいキメキメのマイナー・コードから始まる激しい曲だったんですけど。それをお笑いで演っちゃうという


JIRO:「魔女狩りナイト」っていうイベントなんです(笑)


----笑えるなぁ。


HISASHI:それだけじゃないですよ。そういう話、まだまだたくさんあります


----へえーっ!こういう話が出来るようになったのって、どこかに意識改革があったからなんだろうね。


JIRO:メジャー・デビューしてから、それはもう手探りで色んなことをやってきて。その結果、イヤだと思うことはハッキリ言えるようになりましたね。その心境に至った理由として、ツアーをやれたことが自分の中では大きかったのかもしれない。ツアーをやってから自分自身に自信がついた気がする
HISASHI:うん、ツアーはデカかったね。


----自信がなければ怖くて「魔女狩りナイトがさあ」なんて言えないもん。

HISASHI:たとえ禿げヅラつけても売れるバンドでいたいですよ(笑)。あ、キメるとこはちゃんとキメるけど

TERU:うん。まあ今のGLAYだと、まだまだ「カッコ悪いからやめてください」なんて意見がファンから来るだろうけど、それを超えたいですね。どうあっても、何をしてもカッコいいような存在になりたい

----そういう部分がふっ切れる人達がかずおおくの聴衆をゲットしていくわけですよ。まさにこれから、だよね。次のアルバムは、特にその部分の鍵を握ると思うんだけど。

HISASHI:上手い!もうシメに入ってる(笑)

----取材もエンターテイメントじゃないとねえ!

JIRO:バンドのイメージが変わっちゃったりして。TAKUROの留守中に(笑)。あ、ライヴも楽しみにしてて欲しいですね。俺、また転びます!

HISASHI:どっか……悪いんじゃないの?(笑)

----無理するなよ(笑)。


違う写真では、TERUさんのシャツの隙間からアバラが!!@@;痩せてたんすね・・・。


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■■■■■ ↓ 編集後記より ↓ ■■■■■

■9月5日 火曜日

 13時、本誌TAKURO抜き(笑)のGLAY3人取材。恵比寿の路上で撮影したのだが、、地べたにコロコロ寝っ転がる金髪JIRO、茶髪HISASHI、黒髪TERUはまるでいろ違いの子猫のじゃれあいのようだ。残念ながら子犬TAKUROは1人淋しくキャンペーンで北海道に飛んでいた。ワンワン




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