■■■   JIRO   ■■■

 常にカッコ良く自分を見ていたい――――
 それが自分への愛情でしょうね





●合い、愛情、愛すること。JIRO君にとっては、どういう存在ですか?

「最近すごく思うのは、愛があれば、別に俺はなんでもいいんだなって。生きていう上で。俺が何かすごく探そうとしていたものは、実は愛だったことに気づいて。バンドも、愛があるからやってるわけですよ。メンバーにしても、取りまくスタッフにしても、ファンの子にしても、愛があるから、すごい楽しいなと思えるのであって」


●最近そう気づいたのには、何かきっかけkがあったんでしょうか?

「新しい…色んな出会いがあったからかな。『俺は何をやりたかったんだろう?』とか、『何で俺はバンドをやってるんだろう?』とか、『何のために今バンドなんだろう?』と考えたときに、結局、俺は何をやっててもいいんだと思ったんです。偶然にバンドだったから今バンドでやってて、それはそれで上手くいってるんだけど、結局はいつも愛に飢えてるというか…」


●愛に飢えてるって、いつも心で思ってた。

「もともと感じてたんじゃないかな。人から生まれる以上、言葉にしないだけで愛は持ってて、だからこそ飢える。例えば小学生の頃だったら1人でいるよりも友達といる方が楽しかったとか、親にどこかへ連れて行ってもらえることがすごく楽しかったとか。決して1人でいることが好きだったわけではないんですよ。それは今考えるとね、いつも愛に飢えてたのかな…と」


●そういうのが、音楽を始めたきっかけでもあった?

「いや、あまりないかな。っていうか、他にあんまり共感できるものが無かったときに、ギターを手に取ってバンドを始めただけだから」


●当時のJIRO君は、どんな男の子だったんですか?

「誤解されがちでしたね、俺はすごく」


●誤解?どういった類いの?

「別に俺はそんなに悪いことはしてないんだけど、どういう友達が周りにいたから、目をつけられたりとか。でも、俺は本当に普通の人だったと思う。いじめられてる奴とそれなりに話したしもしたし、みんなと一緒にいじめたこともあったし。普通だったよね」


●今回のテーマは愛なんだけど、では、異性に対する愛だとか恋だとかって面ではどうですか?

「どうだろうなあ。中高生の頃は俺、全然恋愛をしなかったですからね」


●女の子に興味がなかったの?

「バンドが楽しかったからね、小遣いも全部楽器に使っていたし。それに、条件も悪かった。高校はクラスに女の子が2〜3人しかいなくて、友達は他の学校の女の子と遊ぶなんて言ってワイワイ騒いでたんだんだけど、俺はリハーサルに入ったりとか。彼女は欲しかったですけどね、でも、そっちの方の実行力はなかった」

●でも、奥手ってわけでもないでしょう?

「え、奥手だと思うよ(笑)。友達なんて簡単にナンパしてるけど、俺はできないもん」


●人生で、ナンパをしたことは1度もない。

「ない。そういうことをする自分を、カッコいいと思えないから。昔から…今もそうなんだけど、カッコ悪いことが嫌いだったんでしょうね。『この人だ』と、思ったら、頑張っちゃうけど。でも、東京に来てから恋愛したのは、すごい長かった。もう過去のことだから書かれても構わないけど、俺ね、恋愛すると長いんですよ。5年とか」


●5年間、ずっと1人の人を愛し続けていた。

「ええ。出会いとかはすごい偶然で、地元が一緒で元々知ってるやつだったんですけど、お互い東京で五月病になりかけていた時期だったんですよ」


●空きはもちろん、辛い時期の心の隙間を埋めあって。

「だから、最初はフィーリングが合った感じ。でも、もう、どんどんどんどん相手が良くなって。バンドを理由に東京に出てきたんだけど、五月病とか…そういう精神的な所で弱くなりたくないなあと思ってて」


●相手を好きになるほどに、自分も克服できた…精神的に強くなれた。素晴らしい関係ですよね。


「うん。その子と出会って、救われたと思う」


●救われたって、すごくいい言葉な気がします。恋愛の相手に対する最高の賛辞だと思う。

「それがなければ、もしかしたら帰ってたかもしれない」

●東京って、そんなにヘヴィでした?

「負けたと思いましたね。自分がすごく…ちっぽけでちっぽけで、どうしようもないと思った。バンドにドラムがいなかったりしてメンバー探しをしてたんだけど、結局、見つからないうちに辞めちゃってたしね」

●そのバンドを辞めてGLAYに入るまでは1年くらい?

「1年半か2年はあったと思います。友達と詞はー猿はやってたけど、ライヴなんて出来なくて。その子がいなければ、その1〜2年は絶対に長く感じたと思う。でもね、すごく楽しかったんですよね。東京の生活というものを、本当に楽しく買えてくれたと思う」


●恋愛が、東京生活での本当に大切なものだった。

「うん。その人といた時のパワーが、やる気にもさせてくれてたしね」


●側でずっと「大丈夫だ」って信じてくれている人の存在が、自分の力になったんでしょうね。

「でしょうね。愛情なんて要らないって言う人もいると思うし、人と長く付き合えない人もいるし、色んな人がいると思うんだけど、僕はすごく素直に『愛情があるから、こんなことができてる』といえるんです。そんな強さが心の中にある。だから、よく『恋愛を芸の肥やしに』とか言う人もいるんだけど、俺は、そういう誠実じゃないことはしたくないなと思うし。カッコいいか悪いかで判断するわけじゃないですけど、俺のやり方とは違うな。俺はこれからも、何事につけても愛情は持っていきたいし。バンドもそうですよ。みんなとワイワイしてるときの感じが、すごい好きなんです。そこで笑っていられるのが楽しいし、きれい事じゃないけど、ほんと合いがあればそれでいいって感じなんだけど…でもやっぱりお金は必要だから。ひもじい思いはしたくないから、それでまた頑張る。だから『愛があってお金もあれば完璧じゃない』って、そんな風に考えているかな」


●うん。バンド…互いのメンバーに対する愛情も、GLAYの4人には強く感じます。

「土地柄が一緒なせいか、背負ってるものは一緒という気がしてて。それに、例えば何かをやろうってなったときに『俺はいいや』って言う奴はいないし、少々自分の予定を削ってでもそっちに合わせてしまうという。…まあ、でもそれは、俺だけかもしれないな(笑)。当たり前のことかもしれないんだけど、バンドって、誰かが権力を持つと出来なくなっちゃうんだろうけど、GLAYはね、TAKURO君がリーダーだから。だから、すごい愛のあるバンドなんだと思う。彼はものすごく、外から見たGLAYや中から見たGLAYを考えてる人だと思うから、いいんだと思います」


●だんだか、家族みたいですね。仲が良くって心底信頼しあってて、笑いのツボなんかも似てて、だけどベタベタしているわけでなく…。

「そうですね。基本的な笑いは一緒なんで、黙ってても盛り上がるという。だからもう、土台みたいなものは出来あがってるんですよね。けどね。『これをGLAYに持ち込んだらますいな』とか、そんな事は考えてて。うん、『これは自分で解決すること、これはみんなに相談した方がいい』とかもハッキリしてるし。…他の3人もそうなんじゃないかな。あとね、もともと会社の人数も少ないんで、『なんでバンドのメンバーがこんなことまで考えなきゃいけないんだろう』ってほど問題は山積みだったんですけど、だから、少しでも問題解決を楽にしようということで、個人個人が考えたり頑張ったりしてきてて。そういうのも、いい関係を作ってると思う」


●では他にJIRO君の愛する存在というと?

「ファンの子も必要ですよね」


●JIRO君の目に、ファンの人達って、どういう風に映っているんですか?

「すごく勝手だったり(笑)、すごくよく俺のことを考えてくれてたり色々いますけれど、でも言えることは、『一番俺のことは好きなんだなあ』っていう…。ファンレターを書いてくれるパワーや、ライヴのチケットを朝の10時を待って一斉にかけてくれるのとか、すごい嬉しいし。だから、思ったことや期待には応えてあげたいという気がしますけどね。どんなに勝手なことを言ってても、子の人は俺が好きなんだろうな…って思えるんですよね、今は。俺は、自分のことを普通の人間だと思ってたんですけど、そういう人達には持ち上げて見られてるんだろうなって感じてて、だから、そういう人達の前に出る時は。そういう自分を作っていこうと思ってる。何ていうのかな、普段の自分の人間性を見せないように、最近変えましたね。親切になってきたというか…」


●以前に、何かで『生活感を出したくない』って発言を見たのですが、それも、そういうことなんですか?

「それはね、単なる俺の理想(笑)」


●どんなの?JIRO君の理想って。

「和室で落ち着くより、洋室でカッコいい方がいい…とか(笑)。あと例えば、誰も見てないんだけど、家で使う食器にもこだわりたいとか、部屋にカッコ悪いものは置きたくないとか。自分の生活に緊張感を持ちたいということなんでしょうね」

●それが、自分に対する愛情なんでしょうね。

「そうかもしれないね。常に、カッコよく自分を見ていたいという。それに、カッコいいことをやっていても、私生活がだらしないと、どこかで出てくるだろうし。だから、コンビニ行くときも着替える(笑)。まあ生活の中では、仕様がないなあって思うことも多いけど」

●でもそんなときも、最大限自分で自分を好きでいられる状態に持っていく?

「うん。今の方が柔らかくなったと思うんだけど、昔は親にも『神経質だ』ってすごく言われてて。でも、ズボラよりも神経質でちゃんとしてる方がいいと思う

●ちゃんとしてるっていうのは、とても感じます。取材でも、相手に意思が伝わってないなと思ったら、神経質なまでに説明して下さるじゃないですか。自分の言葉や考えに、すごく自信と責任を持ってる人だなと。

「そうですかね。でも、もっと楽天家でいきたいなとも思いますけど。いける所は(笑)。神経質な自分が大っ嫌いになる時もありますしね。そういうバランスは取っていきたいです。…でも、俺、絶対に合わないっていう人もいるんですよ。そういう人達にも共通項を見出だして説明したり合わせたりとか、そういうことは、あんまりしたくない。努力して相手に合わせてもらったり自分が合わせることは、したくない。『合わないならそれでいいじゃないか』って。逆に、その方が誠実ですよね?俺は極端なんです、『嫌いな人は嫌いだ好きな人は大好きだ』というような(笑)」

●好きなものはものすごく愛する、嫌いなものは要らない。なんか、そう言って生きていけるのっていいですよね。

「でも、それは俺の周りがしっかりしているからかもしれない。土台がしっかりしてて、ぴょんぴょん跳ねている俺のことを良しとして許してくれるメンバーやスタッフがいるから、出来てることなんですけどね」

●そんな周囲の人達にある、優しい…寛容な部分を、JIRO君が引き出しているんじゃないですかね。

作戦通りです(笑)


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