■■■   HISASHI   ■■■

 親から受けていた
 すべてのものの愛情がやっと分かった





●ます、『愛』という言葉から、HISASHI君は何を思い浮かべますか?

「俺は『家族』ですね。中学1年の時に父親が亡くなったんですけど、俺ってそれまでホントに何の不自由もない環境の中で、あたたかくて幸せな家族と一緒にスクスクと育ってきたんだなあって…。夏休みなんかにも家族と旅行に行ってたし、いろんな所に連れて行ってくれてたんですよ。まず『何かをやりなさい』とか『やらなくちゃダメだ』とか親から強制されや事なんて1度もなかったから、好きな事をやりたいようにやらせてもらってた。自由に、ホントにあったかい目でいつも俺の事を見ててくれた親でした」


●兄弟はいたんでしたっけ?

「ええ。1歳違いの兄がいます。何だかんだ言いながらも、仲は良かったですよ。そりゃあね、ガキの頃なんかはケンカもしてたけれど。俺が音楽を聴き始めたのも兄の友達の影響だったりしてたから、兄も俺の事をきっとあったかい目で見てたと思いますね」


●お父さんが亡くなられてからのHISASHI君は、どう変わったんですか?

「父はね、さっきも言った通り、俺に強制的に何かを押し付けるようなことは一切ない人だったんです。自分の跡を継いで医者になれなんて一度も言われた事がなくて…。たぶん自分が医者でやってた事が、もの凄く大変な事だってわかってたんでしょうね。週末に大変な手術が入ってると家族との休みも取れなかったり、それこそ精神的なプレッシャーがあったり、人の命をあずかるという大変な職業でしょ。それをなんかね…、息子に押しつける事はできなかったんだと思います。でも、当時の俺はそういう父の想いっていうのは、正直言って気づいてなかった。今、田舎の友達が親になってて『うちの子供は将来こうなってほしい』とか『こんな事をさせるんだ』なんて言ってるのを聴いて、『ああうちは違ってたんだな』って気づいたんですよ。それぞれの家族に、それぞれの子育てのやり方はあるけど、そういうやり方で愛されていたんだなって…」


●親のありがたみとかって、その時は気づかないもんなんですよね。

「うん。そうだと思います。俺だって当時は親から愛されてるなあなんて思わないというか、それが当たり前のことだと思ってたし…。だから、スネたりゴネたりワガママ言ったり(笑)。うん…。父が亡くなってから、親から俺が受けてたすべてのものの愛情っていうのが、やっとわかったんですよ。父の日がそれからはイヤな日になったなぁ。子供心に、ホントに嫌だった。みんなからヘンな気を遣われるのも、余計なおせっかいも、イヤでイヤでしょうがなかったなぁ」


●HISASHI君って、どんな息子だったんでしょう。

「いやー、ワガママだったよ重いマスよ。なんか今思うと親からの愛情を思う存分受けて、育って…。それに思いっきり甘えてた子供だったとおもうもん。だから、父が亡くなってからはね、本当に環境から気持ち的な部分からガラリと変わっちゃったんです。父が突然亡くなってしまったこともあって、命の儚さっていうのかな。命って重くて大切なものなのに、こんなにもパッとなくなってしまうものなんだなって…。もの凄く命って強いものだと思ってたから、それが逆に突然目の前からなくなっちゃって、存在から何から消えちゃって…。とまどうとか動揺するとか、もうそんなのは越えちゃって父が亡くなった最期なんて、俺は記憶にないくらいですから。今、父が生きてたらどうだったんでしょうねえ。メジャー・デビューした時とかもそうだったんだけど、武道館でライヴが決まった時も、なんかこうやって言葉にしちゃうとクサくなるけれど……俺はいつも父に報告してるんです。『デビューするよ』とか『ツアーのチケットが完売したよ』なんて話かけてる」


●なかなかお墓参りにもいく時間はないだろうけど、心の中で会話はできるものね。

「うん。ツアーが成功したりするとね、父が見守ってくれたのかなぁなんて、ふと思ったりもしますね」


●お母さんは、どんな方ですか?

いやー、今でこそ『私も厚年のライヴは観に行けるんでしょ』なんて言っちゃう母ですけど(笑)」


●厚年のライヴなんて言っちゃうの?

「そうなんですよ。略して言いますからねえ(笑)。でも俺が中学生の頃は、ホントにそれまで強かった家族の絆がバラバラになってヤバかったんですよ。よく母子家庭の子供は不良になりやすいなんて世間では言われているけど、俺はあの母親の姿を見たらグレられなかったし、シンナーも吸えなかったですよ(笑)」

●自分は家族の中で、どうなろう、どう生きて行こうと思ってましたか?

「どう思っていたのか、今は思い出せないんだけど、なんか冷静にはなってたような気がします。それこど俺が埋まれどだったあたたかな環境も、父や母の事も、愛情も命の大切さも儚さも、冷静に受け止められるようになってたかな。運命って何だかホントは決められてて、最初っからそう生きるべき道があったのかもしれないって思うようにもなったしね。うん。絶対にそれまで考えもしなかったような事を考えるようにはなってました。で、そんな中で俺も物事に対して振り返らなくなってたんです。たとえば、もし自分が納得いかないツアーをやってしまっても、それをもう1回ツアーをやりたいっていう気持ちに転化しなくなったし…」


●人生観が変わった?

「ええ。もしもあの出来事がなかったら、俺は今頃ただのワガママな小僧だったかもしれないな」


●家族への愛以外だと、その他にはどんな愛を感じてますか? たとえば、友情とか…。

「今でも高校時代の友達って、俺との関係があの頃のまんまで変わんないんですよね。久しぶりに会っても、なんかしゃべってる話題もアノ頃のまんまで、しょうもなくて(笑)。でも、その中で彼らもちゃんとわかっててくれてるのか、GLAYだからとか売れたからどうのっていう態度をしないし、俺達がイヤがる事を知ってるから絶対にそういう事はしないわけ。高校の頃と同じ空気と時間が流れるんです」


●ちなみに昔の友達と会うと、どんな話題で盛り上がるんですか?

「ホントしょうもないですよぉ。高校のトイレの中で話してたような話だもん。俺達ね、いっつもトイレでたまってたんですよ。なのに未だにそんな話だけで一晩盛り上がれちゃうという(笑)」


●結婚したり、親になってたりしてる友達を見て、どう思います?


「不思議な気分でもあるし、なんだか月日の流れも感じるし、なんとも言えないような感じかな。あいつが親になったかあ?!大丈夫かあ?!ちゃんと子育てできてんのかあ?!って、想像つかないもんね。でも子供と一緒の姿を見たり話を聞いたりしてるだけで、幸せや愛を感じられるし…。良かったねって言えるんですよ」


●なかなか今は共通の話題も見つけられないでしょうけど、逆にお互い興味津々の質問をしたりされたりっていうのはないんですか?

「俺のやってる事っていうか…。今、俺がいる音楽の世界っていうのが、あまりにもわかっていないんで、なんかヘンな質問はしてきますよ。『いくらもらってんの?』とか『アイドルと友達になったか?』とか(笑)」

●HISASHI君から友達へは、どんな質問を?

「『子供ってなに食うの?』とかね(笑)。お互いに凄くストレートというのか、なんてこのといというのか(苦笑)。ホント、素朴な質問してますねえ」

●なかなか会える機会もないだろうけど。

「そうですね。でも、あそこに行けば、いつでもあの頃と同じように迎えて俺に接してくれるから、何年も会わないでいても心配はいらないんですよ」


●男同士の友情ってHISASHI君にとってはどんなものですか?

「そうだなあ…。見た目は凄くクールなんだけど、熱い絆で結ばれてるし、お互いに立ち入らない一線を引いてても、凄くあたたかかく接してくれる間柄かな」


●その点、GLAYのメンバーとの関係はどうですか?

「仲のいい4人が集まっただけに、その関係は今、とてもいいですね。ほんのちょっと前まではいろいろあったし、まぁそれは仲が悪いという意味じゃなくて、お互いのスタンスの取り方っていうのかな。これは言っちゃいけないんじゃないかとか、やっぱりありましたから、でも今はもう言えばわかるし。お互いの気持ちがつながった上での意見の交し合いができるようになった。なんの理由もなくブツブツ言ってるんじゃなくて、こいつは何かあるからそういう言い方をしてるんだとか…分かるようになりましたね。高校時代からの友達が、一緒にバンドを組んで、活動を始めて、それからプロになった事で俺は最初の頃は正直言ってとまどいがあったんです。友達であり、バンドのメンバーであり、プロとして仕事をする仲間でもあるっていううことで、そのバランスをスタンスも、それまでの関係のままじゃいけないのかな、って事も思ったし…」


●それがいつ頃から変わってきました?

「そうだなあ…。人間感計があった上でのバンドの事を考えるようになってからかもしれない。マイナスな缶系っていうか。なあなあな缶慶賀GLAYにいい状況を与えないって事にちゃんと気づいてからじゃないかな、それは何か事件があったからとか、きっかけがあったから気づいたというとりも、だんだんとみんなが気づいた事なんだと思う。この4人が東京に来てからのあの辛い状況を考えると、今この4人がここに居るって事だけを考えても、それを俺は『友情』って思えるんですよね」


●まあ、それこそメンバーに向かって『これって友情だよな』なんて面と向かって言わないけれど。

「うん。テレくさくて言えないけど(笑)。きっとみんな感じてる事だと思います」


●バンドへの愛、音楽への愛についてはどうでしょう。

「自分の仲でのバンドや音楽に対する想いは変わってきてますね。お客さんやファンの人達に聴いてもらう事を意識するようになったんです。やっぱり、ある意味でバンドを始めた頃って自己満足だったと想うんですよ。でも俺達の音楽を好きでいてくれる人やライヴに足を運んでくれる人達の存在が、俺達の音楽やバンドに対する意識も変えてくれた。GLAYをやってみんなからの愛っていうのをたくさん感じるようになりましたね」


●さて、最後に恋愛について。

「恋愛ですか(苦笑)」


●なんかこの手の話題は困っちゃいます?

「っていうか、今の俺って恋愛に興味がないんですよ。まあ、俺の性格から言って、愛するより愛されたいって思いの方が強いからかもしれないんだけど…。ホント、今まで『愛してる』って一度も言った事がないんですよ。そんな言葉よりも、気持ちの方がデッカイ気がするし、愛って言葉なんかじゃ表現できないもんじゃないかな…なんて(笑)」


●ではHISASHI君の恋愛観とは?

「凄く勝手なんだけど、放っといて欲しいんですよ。なんか自分のペースを大事にしたいし、踏み込まれなくないし…。もちろん相手に対しても俺はそうありたいしね。ホント、勝手な恋愛観ですよね(笑)」


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