シンデレラと青びょうたん
あたしの朝は一杯のブラックコーヒーではじまる。
「カロリー半分」のマーガリンを塗ったトーストをかじりながら、テレビを見る。
脱色剤のCMで、なに考えて生きてるんだかわからない女子高生たちが映っている。このコたちみたいに猫よりひどいバカさかげんでアイデンティティーを保っているのはイヤ。それでカワイイなんて、そんなのは男にナメなめられてるだけ。
でも、そこまで徹底的にバカになって生き抜けたら、それはそれで愉快なんだろうなあ、とも思う。
カップを口まで運びながら、朝のニュースに視線がいく。あたしは思わず、コーヒーを口と鼻から吹き出してしまった。
浅田美里と青田義史が結婚します。
えーっ、まさか! そんなのウソよ。
内容が内容だけに、あたしはテーブルやフローリングに飛び散ったコーヒーを拭くのも忘れてテレビに見入った。
浅田美里はともかく、青田義史というのが誰なのかちっともわからない。どうやらどこかの名家の御曹司らしいけど、どういう人間なのかはやっぱりわからない。それにしても、どうしてこんなに大々的に報じてるんだろう? こういう疑問をすぐに尋ねられるひとが同じ屋根の下にいれば便利なのに、と思った。
会社に行くと、みんな気にしているようだった。
テレビ、大騒ぎだよな。
一面トップだったよ。
幸せねえ。羨ましいわ。
何が羨ましいんだろ? あたしだけが、なんにもわかってないのよね。完全に話題に乗り遅れてる。
どうしてもわからない。青田って誰だろ? いまさら人に尋ねるのもためらわれたけど、思い切ってきいてみた。
「ねえ、青田義史って誰?」
「冗談ばっかり」と笑われた。中には顔を顰める人もいた。
ホントに知らないのに。
青白の青田とやらを思い浮かべながらキーを叩くと、仕事の能率が格段に落ちるのがわかる。傍から見ると恋煩いに見えるのかもね。
昼休み。脂の全然のっていないシャケの切り身をかじりながら、何かのまちがいだと思う。
でも、まちがいじゃなかった。
青びょうたんは白いベンツであたしを迎えに来た。
「美里、帰ろう」
アスファルトの上を白馬に乗ってきたらバカだけど、白いベンツならアリかな、なんて思った。
二人は来月挙式の予定。
浅田美里は現代のシンデレラ。
今世紀最後のベストカップル。
所詮、夫婦は他人よ。
母さんが、そう言えば父さんも言ってたような口癖を思い出して、あたしは彼と結婚した。
妄言王のアとガキ
たとえば「この作品のテーマは何?」ときかれても、「さあ?」としか答えようがない。
あえて言うとすれば、結婚なんてものは、なんかよーわからんうちにするもんちゃうの?
ってことだろうか?(自信はない)