地球人


 その生物は宇宙からやってくる。
 襲来というわけではない。正確には生物そのものではなく、その卵が不定期に落下してくる。外見はただの隕石。人目に触れることは殆どない。考えてみれば当然のことで、地球の海と陸の比率は、ほぼ7対3。つまり七割の確率で海に落ちるのである。
 海底に沈んだ隕石もどきは膨張し、やがて孵化する。生まれた姿は人間そのもの。ただ、水中でも溺れない点が異なる。鰓のようなものを持っているのかそれとも別の呼吸機能があるのか。何しろ宇宙からやってきた生物なので詳しいことは解らない。
 卵は三割の確率で陸にも落ちるわけだが、それでも人目に触れることは稀である。無人の地域に落ちることも多いし、落ちるとすぐに隕石の姿のまま地底へと潜ってしまうからだ。ドリルのようなものを持っているのかそれとも別の掘削機能があるのか。何しろ宇宙からやってきた生物なので詳しいことは解らない。地底に没した卵は膨張し、やがて孵化する。生まれた姿は人間そのもの。ただ、地中でも窒息しない点が異なる。もしかしたら、呼吸を必要としないのかもしれない。
 また、海で生まれたほうについても地底で育ったほうについても、大体の個体数、主食、生殖方法、平均寿命など、具体的なことは何一つ解っていない。全ては今後の研究に委ねられる。

 ただ、ひとつだけ窺い知れるのは、彼らが人間に近いかそれ以上の知能を有しているであろうということだ。何故そんなことが解るかというと、海から代表らしいのが地上に出てきて、元首へ抗議に来たからである。
 彼に言わせれば、自分たちが「宇宙人」と呼ばれるのが不愉快なのだそうだ。我々は宇宙で孵化したわけではない、と。では海底人と呼びましょうと回答すると、地底にも同類がいる、と語気を荒げる。うっかり、エイリアンめ…と漏らした元首の側近は、彼の鉄拳を食らって病院へ運ばれた。面倒だからと、彼を殺すことはできない。海底に、地底に、そして宇宙に、彼の種族がどのくらい存在するのか見当もつかないし、報復として未知の兵器を用いて地上の人間を皆殺しにするかもしれない。元首は彼の主張を受け容れざるをえなかった。
 我々は地球に住んでいる。よって地球人である。

 というわけで、泳いでいて海中に引き込まれたり、地中から手が出てきて足首を捉まれたりしても驚くには当たらない。それは妖怪や化け物の仕業ではなく、一地球人の挨拶なのだから。


妄言王のアとガキ

紺詠志さんからの「地底人or海底人or宇宙人」というキビシイお題に、なかばヤケクソで挑んだ。
ぜーんぶのお題を満たして、しかも「地球人」まで使い、ヘリクツに走ってやったらよかんべーと思った。

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