女神と丸太郎
清く麗しく美しい女神が、ふと「恋をしたい」と思し召しになりました。(ふと思し召しになったのです。それ以上の理由を求めるのは、恋が合理的なものだと勘違いしている証拠です。そういう人は恋には無縁なのでしょう。ある意味、幸せな人なのかもしれません)
そこで、神殿へ抜ける森の道を歩いて三人目に出会った男神に恋をして伴侶になると心に誓いました。(わけのわからないことを心に誓うのだなと感じるかもしれませんが、神のなさることを人間が理解できるわけがないのです)
女神が最初に出会った男神は、狒々と豚を足して蝦蟇を加えたような醜い野郎でした。女神は伴侶となる相手を「最初に出会った男神」にしなくて本当に良かったと、胸を撫で下ろしました。(恋の序盤を制するのが外見であることは周知の事実でしょう)
女神は薄汚い男神をやり過ごし、さらに森の道を行きました。しばらく歩きますと、向こうから○○○と×××を足して二で割ったような男神がやってきました。(○○○と×××には、美男子だと思われる俳優などを適当に当てはめて下さい)
女神は、この美男神に一目惚れしました。恋をして伴侶にするなら彼以外にありえないと思し召しになったのです。けれども、恋をして伴侶となるのは「三人目に出会った男神」と心に誓ってしまっていたので、女神は悩みました。(自分だけで勝手に誓ったことなのだから気にすることはないと思うのは、人間の下等さです。神が一度心に誓ったことを変更できるわけがないのです。元日に「禁酒禁煙」と書き初めをして、一週間ともたない人間と一緒にするなど畏れ多いのです)
そんな女神の目に留まったのが、樵が切り倒し、枝を払い、皮を剥いだあとの白樺でした。この路傍の物体を見て女神は思わず呟きました。
「二番目の男は…そう、この丸太っ」
神がそうおっしゃったのですから、そうなるのです。
つまり、その丸太がこの私というわけです。
気が動転していたのでしょう、「男神」ではなく、単に「男」とおっしゃったので、私は人間です。丸太から生まれたので丸太郎と名乗っています。
…女神のその後ですか? 詳しくは知りませんが、男神と幸せに暮らしたのだと思います。丸太郎という人間が存在するのが何よりの証拠です。男神の伴侶になって後悔したのなら、「丸太を二番目の男にしたのは失敗だったわ」などと呟くはずです。そうしたら、私は丸太に逆戻りですからね。
妄言王のアとガキ
某神話に想を得て書いた。
何しろ相手は女神なので、多くは語れない。