楽苦画飢29-シベリア回顧 宮城絃男

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ひとすじの髪爪をさえ, 祖国に還す術もなし
凍土に朽ちし戦友の泣く, 声秋風によみがえる

峰峰染めて夕焼けの, 果てゆくをみつ咽びたり
いつか果つべき運命なれ, 必ず帰るはらからよ

空に拡がる鰯雲、頤い茫く連なりて
遠き祖国のはらからに、今日生きしこと伝えかし

ああ秋風よ我も泣く、今は標もなかるべし
訪ふ人もなく吹雪く丘、昏れゆくさまを夢みたり
(解説)
これまで掲載させて頂いた「楽苦我飢」の柴谷様の戦友宮城様は、勿論私の父の亡くなった収容所 からの帰還者で、今年始め励ましのお電話を頂いた。「現地へ柴谷に一緒に行って貰え」との事だ った。この正月は肺気腫の為病院で過ごされ、その 後検査入院された。先週再度お電話頂き、肺がんで自宅療養中との事。「小川を渡って、パン工場 の裏、200メートルぐらい左」「30センチぐらいしか掘れなかった、狼は居ない」など等と、 同行出来ない事を悔やまれる。医学は進んでいる、一日も早いご回復を心からお祈り致します。 私がいつも「シベリア抑留問題急ぐべし」と云うのはこの様な状態からである。
この詩は戦友会で詠まれたもので、柴谷様に毛筆でお書き頂き、父の仏壇の上に飾らせて頂いて 居る。