0.999…は1より小さいと言えるか。

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0.999…は1より小さいと言えるか。このことを、次の検討を行うことにより考察せよ。
(1)検討1
1÷9の答は0.111…,分数で表すと1/9
よって、0.111…=1/9     ―――@
@ の左辺と右辺は等しいのだから、それぞれを9倍したものもまた等しいはず。
さて、どうなるか。
(2)検討2
x=0.999…         ―――A とおく。
また、両辺を10倍すると、10x=9.999…        ―――B
ここで、A,Bの右辺は小数点各位がすべて9で等しい。
このことからB−Aを計算してxを求めるとどうなるか。
(3)検討3
x=0.999… の意味を考える。
x=0.9+0.09+0.009+… と足し算を無限回実行したときの答、と定義したとすれば、
有限の存在である生身の人間には捉え難いものになる。
しかし、これを0.9,0.99,0.999,…という数列の向かう先(収束値)と定義すれば、上記問題点は解消する。
(厳密には述語論理によるε−δ論法で捉えることができる。)
(4)検討4 〜検討3に関連して〜
1610年頃、ネーピアによって対数が発見され、
(1+1/1)1,(1+1/2)2,(1+1/3)3,…という数列はどの項も有理数(有限ないし循環無限小数)だが、
この数列の向かう先は
e=2.71828…(自然対数の底)という無理数(循環しない無限小数)であることが証明された。
よって、実数の概念はこのような無理数の存在を踏まえた形で捉える必要がある。