エントロピー 1

[問題]
自由に飛びまわる黒玉●と白玉○が同数(2k個ずつ)1つの箱に入っている。
箱の左半分をA、右半分をBとし、
Aには黒玉●のみ、Bには白玉○のみが入っているときの場合の数が
1通りであるのに対し、
A,Bいずれにも黒玉●と白玉○が同数入っているときの場合の数は
N(2k)通りと表すこととする。
このとき、次のことを考察せよ。
(1) N(4)=36であることを、場合の数を数え上げることにより確認せよ。
(2) 一般にN(2k)=(2kCk)2={(2k)!/(k!)2}2
  ここで、k!=k・(k-1)・(k-2)・(k-3)…3・2・1

  この式に基づいて2k=6,8の場合のN(2k)を計算することにより、
  kの増加に伴うN(2k)の傾向を予想し、
  このことから、
  時間の経過とともに、水の中に落としたインクが拡散し、
  温度が不均一であった水が均一化すること、
  およびその逆の現象は起こらないことを説明せよ。
[解説]
@ 場合の数が多い状態に移行することを「エントロピーが増大する」といいます。
A 「ただ1つの熱源から熱を取り、これを仕事に変えるばかりで
  他に何の変化も外界に残さないサイクルをする装置」のことを
  「第二種永久機関」といいますが、そのような装置は存在しません。
  これを「熱力学第二法則」といいます。
B この「熱力学第二法則」は、
  数学的にはエントロピー関数(変化容量を意味する系の状態量)の存在
  断熱変化ではエントロピーが決して減少しないという形に定式化されます。
C エントロピーの概念はそもそもマクロ的・熱力学的に定義されたものでしたが、
  その後L.Boltzmannのミクロ的・統計力学的研究により、
  これが巨視的条件下における微視的状態の数の対数関数
  すなわち、乱雑度でたらめ度を表す量であることが明らかにされました。

註)
第一種永久機関=エネルギー保存則に反する装置のこと。 
熱力学第一法則=熱現象にまで拡張したエネルギー保存則

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