“目から鱗”の「質量」
〜慣性質量と重力質量〜
1) ニュートンは
運動第二法則(物体に働く力と加速度との関係)の式と万有引力(物体同士が相互に及ぼし合う力)の式の
双方に同じ質量mを用いました。
勿論、これで自然界におけるあらゆる物体の運動を正確に表すことが出来ているのですが、よく考えてみると、
これは「物の動きにくさ」と「引力の受けやすさ」という一見異質の事柄を
同一の「質量」という概念で捉えたことになります。
2) 本来は、「慣性質量m」と「重力質量M」というように別物として扱うべきだったはずです。
でも、実際は同じ「質量」としてまとめてよかった。それで自然現象によく合致したわけです。
3) もし、双方の「質量」が別物だったらどういうことが起こるでしょうか。
古代ギリシャの哲学者アリストテレス以来、
「同じ高さから重い物と軽い物を同時に落せば、重い物が先に落ちる。」と考えられていたようなことが
起こるに違いないのです。
しかし、ガリレオが
いかなる重さの物も(空気抵抗を無視し得る場合には)同時に落ちることを実験によって証明しました。
ニュートンはそのことを踏まえて質量の概念を分けなかったのだと思います。
4) けれども、一旦「慣性質量」と「重力質量」とを同一の「質量」という概念で捉えてしまうと、
原因の異なる慣性力と重力がなぜ同じ「質量」という概念で結びついているのか、
そこに潜む新たな真理が見えにくくなります。
それを見事に見抜いたのが、かのアインシュタインです。
慣性力も重力も時空の歪みによる現象として捉えたのです(一般相対性理論)。