<こんばんは>
得体の知れない不安を掻き立てられるほど怖さを感じる夕焼けの赤さに、エドワードは空を振り仰いだ。
真上。東、西、南。そして北。その時、北の外れにあるこの街で一番高い鐘付堂の中に人影を見た。
ざわりと腕が粟立つ。
あれ、は。
頭で思うよりも先に駆け出していた。
あれは。あれは、あれは、あいつは。
あれから五日しか経ってないことを差し引いたとしても、忘れることなんかできやしない人物の、影。
相手は建物の最上階から優雅に町を眺めている。
走ってやってくるエドワードの姿は丸見えだ。もちろんそんなことはわかっている。堂の周りには他の建造物も木々も無い以上、近づくには姿を晒すしかない。
息を切らしながら辿り着いたエドワードに、人影は能天気な声を出した。
「あっらー? どうしちゃったの、鋼のおチビさん」
「……どうしたも何もあるか。お前らの知ってること、いや。しようとしてること、聞き出すつもりだよ」
「わかってないねえ、あんたも。まずいこと知られたら殺すよって言ったよね」
それとも殺されたいの?
肩を竦めて呆れるように笑ったそいつにカチンときて、エドワードは堂の扉を乱暴に開ける。鍵の掛かっていないそれは、簡単に、エドワードを中に誘った。
石造りの中は不気味なくらい静まり返っている。他の気配は感じられない。それでも最初に会った時が複数だったこともあって、エドワードは神経を尖らせながら階段を駆け上る。
最上階には大きく錆びれた鐘が吊り下げられていて、入り口から遠い正面に、髪の長い少年が立っていた。
エドワードに向き合って、にやにやと嫌な笑みを浮かべている。
「ようこそ、おチビさん。といっても、辺鄙なトコで何もないけどね」
「何者だよ、お前ら」
エドワードが一歩踏み出す。
機械鎧の左足は、少し重たい足音を立てた。
「何をしようとしてる?」
「素直に喋ると思ってる?」
「そんなわけねーよな。だったら」
エドワードは体を低く構え、戦闘態勢に入る。左足と同じく機械鎧である右手で拳を作って、一気に殴りかかった。
「力づくで聞き出すだけさ!」
「おわっ」
顔面を狙ったそれを間一髪で避けて、少年は頭をぼりぼりと掻く。
「相変わらず血気盛んだね、あんた。右腕も直ったんだ?」
「おかげさまで。あん時と同じようにはいかねーぞ」
「うわー、やる気満々。ケンカは嫌いだって言ったじゃん。ケガしたら痛いんだよ?」
「うるせぇ!」
「しょうがないなぁ」
エドワードが振り上げた右足を手でガードした少年は、攻撃が止められたことでガラ空きになったボディに目を向ける。視線に気付いたエドワードがそこを守る前に、少年の右手がエドワードの左脇腹を強く叩いていた。
「ぐ……っ!」
「確かココだったよね。あんたがこの前ケガしたとこ。機械鎧は直っても生身のこっちはまだ完治しないだろ?」
少年は笑いながらエドワードの傷口に当てた拳で更にそこを抉る。
「う、あ……ッ」
「人間って不便だよね。すぐ治らないなんてさぁ」
弱いんだから、ケンカなんかしちゃ駄目だよ。
「うっかり殺しちゃうかもしれないし」
ずるずると体を沈み込ませたエドワードの上に馬乗りになった少年は、一旦拳を後ろに引いた。そして再度、勢いをつけてぶつける。
その反動と痛みで、エドワードの体が跳ねた。
「大人しくしてないと長生きできないよ? まあ、大事な人柱だから殺さないけど……って、そうか。もしかして、安心、してんのかな?」
殺すっていうのは冗談だって言ったから。
生かされてんだよあんた、って言ったから。
だから。
「命の保証がされてるから調子に乗って追っかけてきたわけ? それもムカつくよね」
――自分の立場がどんなものか教えるにはお仕置きも必要だと思わない?
少年はそう言うとエドワードのベルトに手を伸ばした。
カチャリという金属音が、やけに周りに反響してエドワードが目を見開く。
「てめ、何する……」
「だから『お仕置き』だってば。命を奪えない以上、精神的な屈辱ってのがいいでしょ。あんた、体の痛みには強いみたいだしさ」
ちょっと痛いだけだから大丈夫。
ニッコリ笑った少年はエドワードのズボンのジッパーを素早く下ろし、自分の体もずらして、ズボンと下着を膝上まで引き下ろす。
「なっ!」
「あーらら。姿もおチビさんだとこっちもおチビさんだね」
「チビって言うな! つーか変態! やめろよ!」
「変態ぃ? なにそれ、失礼しちゃうなー」
「そんな格好でこんなこと仕掛けるやつのどこが変態じゃねぇってんだ!」
「そんな格好って。可愛いじゃん」
「ふざけんな、この季節に腹出してスパッツ穿いてスカートつけてるヤツを可愛いなんて思えるか」
「スカートじゃないだろ、これは」
「スカートで駄目ならフンドシだ。変態変態変態!」
「うわ、しかも連呼する? 信じらんない。優しくしてやろうと思ったけどやーめた。……歯ぁ食いしばってなよ」
「!」
少年は自分の指を舐めながら、座っていたエドワードの体から退ける。反対の手をエドワードの膝裏に当て、胸に腿がつくほどに押し曲げた。
他人に見られることなどない箇所を、丸見えになる位置まで持ってこられたエドワードが羞恥で暴れる前に、痛みと違和感が後ろに与えられる。
「うあっ」
排泄にしか使われない場所に、湿った指が挿入されたのだ。かなり、無理矢理。
「きっつー。いきなり行かなくて良かった。これじゃあ流石にこっちもツライもんね」
「いっ」
「痛い? でもまだ指だし」
我慢しといてと言い放つと、少年は押し込んだ指を中で旋回させる。
痛みと、中を弄られるとんでもない気持ち悪さがエドワードを襲った。
それに摩擦が加わると、気持ち悪さはどんどん強くなっていく。
「ぐ……っ……」
広げられ、押し込められ、内蔵を掻き回される。
一本から始まったそれは徐々に指が増やされているのだろう。広がりが大きくなっていき、感じる圧迫も相当なものになってくる。
体を動かして逃げようにも、胸についていた足からはいつの間にか衣類が取り払われ、今は顔の横に膝があるという、とんでもなく無理な態勢を取らされている。自分の体が邪魔で動けない。左右に体を振っても、少年の手がエドワードの臀部を支え、ずらせないようにしている。
「……っ」
突然、圧迫が消えた。楽になった内部に安堵の息をついた次の瞬間、さっきまでとは比べ物にならないほど凄まじい痛みを感じた。
「ああああっ!」
全身が裂けてしまうかのような痛さは足と手を失った時とも、機械鎧と神経を繋ぐ痛みとも、それのリハビリの痛みとも違う。
「あ、ごめん。やっぱ無理だったみたい」
血ィ出ちゃった、などと明るく言われて、流れたのであろうそれを指でなぞられる感覚があった。
何が起こったかなんて予想はできるが、それでも薄目を開けて、エドワードは必死で痛みの元を見た。
目に入ったのは、赤さを伴う自分の後孔に、少年の性器が深々と埋められた卑猥な光景。
「あ、あ、ああ……っ!」
「いいねぇ、その表情。その声。たまんなーい」
「……へんた……い……っ」
「まだ言う?」
「あっ」
少年のモノがギリギリまで抜かれた。姿が現れる。そしてまたエドワードの中に根本まで入っていく。
「う……ッ」
繰り返される動作。
延々と続く苦しさ。
おぞましい行為への敗北感と屈辱と嫌悪。
「てめ……許さね……っ」
「ああ、いいんじゃない、それでもー」
激しく突かれながらも言葉を紡ぐエドワードに少年は簡単に笑う。
「覚えて、やが、れ……野郎……あっ」
「お前だの、てめえだの、野郎だの煩いよ。名前で呼んでよね」
掴めないリズムで浅く深く中を抉られる。吐き気はもう、すぐそこまで来ている。それでもなんとか必死で押し留め、エドワードは悪態をつき続けた。
「知るか、てめェの名前なん、か……っ」
「あれ、言ってなかったっけ? そういや自己紹介しなかったか」
あのね、と言いかけて少年は口を閉じた。
「やめた」
一層激しくエドワードを突く。
「だってあんた弱いもん。実力が合わないヤツに、もったいなくて名前なんか教えられないよね」
「弱……っ!?」
「弱いじゃん。ちょっと勘が働くくらいでさ」
何事も等価交換だろ、この世はさ。
「お喋りはここまで。最後までイっちまいな」
「! うああ……ッ」
苦しい態勢から更に足を開かされ、限界まで少年を体内に取り込まされ、掻き回されて、エドワードはそれまで保っていた気を手放した。
ビクビクと反応だけ残す体の最奥でたっぷりと液体を吐き出した少年は、一息ついて肩を落とすとエドワードから自身を抜き去る。
「はー、スッキリ」
ちょっと楽しかったかなと呟いて、エドワードの体から離れる。
楽しかったけど。
「もっと楽しませてみせてよ、鋼のおチビさん」
ここまで追っておいで。人柱になる前に。
少年は肩や首を鳴らしながら東の方角を見た。
「さて。小言いわれる前にラストのとこに戻るか」
赤い夕焼けはどこにもなく、今は漆黒の闇の中。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
きゃっほーい!
寧子さんが乱暴され後のエドを描いてくれましたーv
この不機嫌とも怒ってるとも泣きそうとも見える表情がたまりません。
強く生きて、エド……!←…。
えへへ。エドの裸っていいよねぇ。うふふふふふ。
きっちーな話だったにも関わらず、引かないでくれてありがとう。
イラスト描いてくれてありがとう。強奪許可もありがとう!!(大感謝)。