建築レポート:海外住宅事情
ヒアリング者:ツアーガイドの周さん、王さん (もちろんご両人は建築の専門ではないので、話の内容も正確でもないかもしれませんが、一般的な内容ととらえてください。補足調査を行った部分もあります。) 1.中国の概要 2.中国の住宅政策 3.北京市の住宅事情 4.上海市の住宅事情 1.中国の概要 正式名称 中華人民共和国(People's Republic Of China) 人口 12億8453万人(2002年,中国発表)世界1位 面積 960万平方キロメートル世界3位 首都 北京 GDP 1兆800億ドル(2000年末)世界7位 通貨 元・角・分(角は元の10分の1,分は元の100分の1。1元≒14円) 行政区分 23省、5自治区、4直轄市、2特別行政区 民族 56民族 うち漢族93%、チワン族1560万人、満州族980万人、ウイグル族720万人、イ族660万人等 北京市概要 人口 1383万人(流動人口を含めると約2,000万人とも言われています。) 面積 16,800平方キロメートル(四国より少し小さいくらい) 降水量 約650mm 上海市概要 人口 1614万人 面積 6340.5平方キロメートル(大分県とほぼ同じ面積) 降水量 約1200mm 中国の物価と収入 感覚的にいくと、物価は日本の約4分の1という感じか? <参考> マクドナルドのダブルバーガー 5元(約70円) 青島ビール 4元(約56円)(これでもボラれているかも?) ラーメン1杯 5元(約70円) 卵8個 3元(約42円) 居酒屋メニュー 5元〜20元(約70円〜280円) 中国では最低の賃金(生活保障?)が1ヶ月500元(約7,000円)です。これで家族を養っている人もいます。普通の世帯では、月収がおよそ3,000元(約42,000円)です。外資系の会社員になると、6,000〜8,000元(約84,000円〜112,000円)となり、その中でもいい役職に就くと、30,000元(約420,000円)となります。 2.中国の住宅政策 中国では社会主義経済から市場経済に移行しているところでありますが、住宅供給についても、企業による供給体制が難しくなってきたことから、1980年代より、市場重視の住宅供給政策に転換しました。その方針とは、 1.持ち家取得推進(住宅の商品化) 2.住宅金融市場の整備 3.福祉的住宅供給 これまで社宅中心であったが、自助努力による住宅の取得を促し、経済の発展も図ろうということでしょうか。1982年の公有住宅払い下げ政策が進められ、加速度的に持ち家が増えました。 次に住宅を取得するための金融市場の整備が進められ、上海市でシンガポールを参考にした住宅公債金制度が効果を上げていたことから、全国的に紹介され普及することとなりました。 そして1995年に「国家安居住宅プロジェクト実施案」が制定され、低所得者向けの分譲住宅である経済適用房(エコノミー住宅)の開発推進や二手房(中古住宅)市場の整備も進められたり、賃貸住宅では、低所得者に対する補助金制度を設けるなど、社会保障的な住宅政策がとられることとなりました。(以上 横浜国立大学国際社会科学研究科 博士論文 「現代中国における住宅政策の転換」李晶2002より) また、土地は全て国有地で、住宅には所有権がありますが、土地に関しては使用権を持つこととなります。 3.北京の住宅事情 ご存じの通り北京は中国の首都であり、政治・経済・文化の中心です。以前の姿は知りませんが、とにかく活気にあふれていると言う印象が強い街です。昔ながらの平屋の住宅地のすぐ横に超高層ビルが建ち並び、2008年のオリンピックに向けて、今も建築物や高速道路の建設ラッシュが続いています。 また、万里の長城、天壇公園そして2003年に登録された明十三陵など、世界遺産が6つもあるという観光の名所でもあります。 都市部はほんの一部で、市の多くは農村部ではありますが、それでも都市はどんどん拡大して郊外に広がっています。これは都市部の過密化と共に、道路(高速道路含む)の整備が進んでいることが原因と考えられます。 中国では、現在公営住宅は供給されていません。30年くらい前には、国営企業に何年間か勤務すると、20uくらいの住宅があたえられたそうです。当然、これらの住宅には、トイレや風呂はなく、当然電気など使えず、冬は練炭を使って暖をとっていました。 現在でも平屋の長屋住宅「胡洞(フートン)」に生活している人もおり、その住宅は煉瓦造りで、屋根は瓦葺きか、トタン葺きで、今でも風呂やトイレがないため、至る所に公衆トイレがあります。 また、中国には会社に風呂を造って、社員がその風呂を使うという風習があります。日本にもシャワーを設置している企業はあると思いますが、中国ではリフレッシュ的な意味合いよりも、日常生活としての利用が主のようです。建築とは関係ありませんが、給料の一部がいまだに鶏などで現物支給される事があり、その日は皆が帰るまで会社で鶏が鳴いているそうです。つまり会社が社員の衣食住すべてを面倒見ていたということになります。 10年から20年前くらいに建設されている住宅は、50平米ほどの広さで、トイレや風呂も完備しており、日本のアパートなどと変わりません。このような規模の住宅を賃貸した場合は、月の家賃が1000元程度となっています。 最近建設されているマンションは、その多くが分譲で、広さは100平米前後です。価格は普通のものが9000元/平米(100平米として約12,600千円)、エコノミー住宅だと3000元/平米(同じく 4,200千円)です。さらに中国ではマンションはスケルトン状態で販売される事が多く、購入者が内装を別途発注することとなります。 エコノミー住宅が質の低下をもたらしたり、富裕層の投機目的で購入されるなどの問題も発生しているようです。
4.上海市の住宅事情 上海市は、中国でも最も発展している都市の一つで、経済の中心でもあります。北京よりも早くから発展していたからか、平屋の住宅はほとんど見かけることはありませんでした。 上海の住宅(生活?)の特徴として、物干し竿を窓から出すという事があります。すごく近代的な住宅でもそうしているところを見ると、住んでいる人にとっては景観よりも、従来の生活様式の方が大事のようです。また、上海は昔から住宅事情が悪いことから、少しでも広く使うために、サンルームやバルコニーを部屋としてしまうのではないでしょうか。 上海のマンションは平均100平米程度で、8000元/平米(100平米で11,200千円)です。中古マンションでは、300万円から3000万円まで幅がありました。(内容がどう違うのかまではわかりませんでした。)
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