建築レポート:公営住宅

岐阜県営北方住宅(ハイタウン北方)


在 地 岐阜県本巣郡北方町北方字長谷川地内
説明者:岐阜県住宅課伏屋係長 他

 磯崎新氏をコーディネーターとして、4人の女性建築家が設計を行うプロジェクトとして事業を行った。磯崎氏のコーディネーター起用は、知事の特命(もともと知り合いであった)によるもので、4人の建築家の選定は磯崎氏が行った。実施設計は磯崎事務所と地元設計事務所がJVを組んで設計した。
 コスト面では、従来の公営住宅とそれほど変わらないとのことであった。プランについては設計者の意向が優先されたようである。近隣から特定の設計者の住宅に住みたいという人もいたらしいが、管理開始からずっと空きのままの住戸もある。
 住宅の管理は、北方町の管理公社が行っている。


S−1(高橋晶子)棟
設 計 者 磯崎・司JV
構 造 鉄筋コンクリート造9階建て
延床面積 8,934.70u
戸  数 公営住宅106戸、特公賃住宅3戸
      2DK 43戸 うち身障者対応4戸
      3DK 61戸 うち特公賃2戸、メゾネット21戸
      4DK  5戸 うち特公賃1戸、メゾネット1戸

 農家住宅の基本間取りである「田の字型」を取り入れた造りで、可動式間仕切りや収納家具により自由な空間利用が可能となっている。
 夜間在宅の気配が分かるよう、玄関側の壁が波板硝子としている。
 この住棟のみ住戸内を見学していない。募集開始から空きがほとんどないということであった。

南側  手前は集会場 玄関側


S−2(クリスティン・ホーリィ)棟
設 計 者 磯崎・サニーJV
構 造 鉄筋コンクリート造10階建て
延床面積 9,465.08u
戸  数 公営住宅101戸、特公賃住宅6戸
      1LDK 4戸 うち身障者対応4戸
      2LDK 32戸 うちメゾネット19戸
      3LDK 65戸 うちメゾネット65戸
      4LDK  5戸 うち特公賃6戸、メゾネット6戸

 多種にわたるメゾネット住戸を設け、空間の豊かさを提案しているが、狭い住宅の中で3層にも渡る住宅が果たして豊かな空間と言えるのかは疑問である。3層に渡る硝子面はプライバシーの問題があり、細切れの部屋は決して豊かな空間とは言えない。ヨーロッパのように見せることを意識した生活習慣は日本にはなじまないと思われる。

東面外観 左が4.5帖和室、右が4帖洋室
3層の階段 外部からの視線を遮るのが大変


S−3(エリザベス・ディラー)棟
設 計 者 磯崎・岬JV
構 造 鉄筋コンクリート造8階建て
延床面積 9,787.66u
戸  数 公営住宅101戸、特公賃住宅5戸
      1DK  2戸 
      2DK  9戸 うち身障者対応2戸
      3LDK91戸 うち身障者対応2戸
      4LDK 5戸 うち特公賃5戸
 内部は全て取り外し可能な間仕切りによって、ワンフロア的に使うことも出来、入居者のライフスタイルに合わせて使うことが出来る。この棟は高齢者に人気があるとのこと。
 見学したのは、身障者専用住戸で、浴室も車いす対応としている。隣り合う各住戸は、20pずつレベルが違う。これによって廊下に東から西への勾配がついているが、車いす利用者は、一方にしか廊下を移動できないのではないか?そのために棟の真ん中あたりにこの住戸があったのかもしれないが、動線が短いに越したことはないので、エレベーター付近の方が良いとは思うが。

南側外観 可動間仕切りで自由な空間利用が可能
車いす対応の浴室 脱衣室兼トイレ(介助・移乗スペースがない)


S−4(妹島和世)棟
設 計 者 磯崎・山清JV
構 造 鉄筋コンクリート造10階建て
延床面積 9,559.70u
戸  数 公営住宅101戸、特公賃住宅6戸
      2DK 21戸 うち身障者対応2戸、メゾネット3戸
      3DK 80戸 うち特公賃6戸、メゾネット31戸
      4DK  3戸 

各部屋から外へ出られる、テラスを挟んで和室がある、各室と廊下の壁を全て建具にする等公営住宅として新たな試みを多く取り入れたプランではあるが、入居者の居住性向上につながっているかというと、とてもそうは思えない。最近流行のデザイナーズマンションなどでは、個性ある住宅や、住宅に合わせた住まい方というものがあっても面白いが、選択の余地はあるにせよ、住宅に困窮している人のための公営住宅の性格を考えると、ちょっとやりすぎというか、普遍的な間取りが必要なのではないかと考えさせられる。
 また共用廊下は、手すりのみで腰壁がなく、最上階から地上までの直線階段など恐怖感を伴う。各住戸に設けられた筒抜けのテラスは、憩いの場ではなく荷物置き場となっている。

共用廊下は金網張り 共用テラスは荷物置き場になっている
室内から廊下 玄関のあるLDK


来年度以降は、今回見学した南ブロックと道路を挟んで北側を順次建て替える予定。次回も磯崎氏のコーディネートで、スケルトンインフィル(メガフレーム架構)を利用し、21人の住戸設計者(インテリアプランナー的設計者)による住宅供給を行う。実施設計は、前回同様磯崎事務所と地元設計事務所が行う。

規模は3棟で公営住宅590戸特公賃30戸、併設施設として、岐阜県建築情報センター、北方町生涯学習センター、福祉・医療施設が予定されている。
南ブロックとはペデストリアンデッキで連続させる。


北ブロック

ハイタウン北方の公式ページ(間取りなども公開されています。)
http://www.pref.gifu.jp/s11659/hightown/

 
建築レポートに戻る