建築レポート:高齢者居住施設

兵庫県コレクティブハウジング


ヒアリング者:兵庫県県土整備部まちづくり局住宅整備課計画係 内村氏
       兵庫県住宅供給公社 住宅管理部入居企画課 木村氏


1.岩屋北町高層住宅
所 在 地 兵庫県灘区岩屋北町4丁目地内
敷地面積 2,374.69u
構 造 鉄筋コンクリート造3階建て(一般世帯は8階建て)
延床面積 3,606.64u
住  戸 コレクティブ住戸22戸、一般住戸42戸 計64戸
そ の 他 コミュニティプラザ(集会室)116.83u 駐車スペース 16台
自転車置場 74台
     JR灘駅より徒歩3分、阪神岩屋駅より徒歩3分

ふれあい空間 リビング、ダイニング、和室、洗濯コーナー、共用トイレ
         月に3回程度入居者が集まる。
         ランニングコスト低減のため、ふれあい空間はパッシブソーラーシステムを採用している。

入居者の感想
 大きいところでは、共益費が高い(ふれあい空間の光熱費)ことをあげていました。また、入居当初から見ると体が弱った人が増えたけれど、声を掛け合うことで安心して暮らせるということも話しており、今後はこのような高齢者が助け合う住宅が増えると良いということを話していました。
 事業に関しては、一部の人や若い人がなかなか参加してくれないという悩みがあるけれど、地域の人や学生がボランティアで、モーニングサービスや喫茶をやってくれたりして、地区の人とはうまくコミュニケーションがとれているとのことでした。
 ふれあい空間については、洗濯コーナーがあまり使われていない(個人で洗濯機を持っているので)ことや各部屋の面積の一部がふれあい空間に供出していることから、狭いという話でした。

 この岩屋北町住宅のみ入居者の方と話をする機会があったのですが、思っていたよりもうまく運営されているというのが率直な感想です。人付き合いも、煩わしくなく、かつ適度にあり、なにかあったら助け合うというルールが守られているような印象でした。また、役員の方は、事業を積極的に行っており、外部の人やボランティアの学生などが協力しているというところが、うまく運営されるポイントでしょう。しかし、住宅全体が高齢化していくので、若い世帯との混合、交流がさらに必要だと感じました。


ふれあい空間ダイニング 洗濯コーナー(洗濯機は物置の中)
1人用住戸(1DK) 通報装置の場所が不評(家具が置けない)
共用廊下 フロアに1箇所ミニキッチンを設置
2人世帯(2DK)の居間(約6畳) 2人世帯の寝室(約5畳)


2.南本町高層住宅
所 在 地 兵庫県中央区南本町通4丁目地内
敷地面積 2,986.74u
構 造 鉄筋コンクリート造5階建て(一般世帯は7階建て)
延床面積 4,659.69u
住  戸 コレクティブ住戸27戸、一般住戸48戸 計75戸
そ の 他 コミュニティプラザ(集会室)133.79u 駐車スペース 23台
自転車置場 150台
     阪神春日道駅より徒歩5分

ふれあい空間 リビング、ダイニング、和室、洗濯コーナー、共用トイレ
       月に1回食事会。その他季節の行事。手芸教室を月1回
       ランニングコスト低減のため、ふれあい空間はパッシブソーラーシステムを採用している。

コレクティブ棟入口 高層棟


3.脇の浜高層住宅
所 在 地 兵庫県中央区脇浜海岸通地内
敷地面積 10,500.00u
構 造 鉄筋コンクリート造 6〜14階建て 4棟
延床面積 18,032.59u
住  戸 コレクティブ住戸44戸、一般住戸209戸 計253戸
そ の 他 コミュニティプラザ(集会室)197.51u 駐車スペース 113台
自転車置場 380台
     阪神春日道駅より徒歩10分、JR三ノ宮駅より徒歩15分

ふれあい空間
 リビング、ダイニング、談話コーナー、洗濯コーナー、共用トイレ
 月に1回誕生会。手芸教室を月1回。園芸クラブを作って庭の手入れ。
 夜遅くまで雑談している。
 ランニングコスト低減のため、ふれあい空間はパッシブソーラーシステムを採用している。
 日当たりがよいように、団地の南側に配置している。
 奇数階にふれあい空間、その上階は吹き抜けと、談話コーナーを配置して、明るい空間づくりをしている。
 エレベーターに乗り降りする人が分かるように、ふれあい空間、談話コーナーを配置している。

ふれあい空間外観 ふれあい空間内部
(1階のふれあい空間は、見学者用に使い、3階、5階は、入居者用に利用しているとのこと)

同団地のシルバーハウジング住戸

コミュニティプラザ(集会場)
自転車の人が話しているのはLSA
住宅入口で将棋をする人たち
緊急時に、近所の人が同じ鍵で開けられる 電気錠でチェーンロックも開錠する
住戸内部(1DK) 緊急通報システム
 
 3つの住宅を見学した感想としては、特にコレクティブハウジングという考え方を意識せずに、高齢者向けの助け合い住宅という風に考えると納得しやすいように思います。コレクティブハウジングを高層の住宅で実現することに賛否があるようですが、今回見学しなかった片山住宅のように木造で6所帯しかいないグループリビング的な密度の濃い住宅と、高層で割と緩やかなつきあいの住宅の両方があり、選択できることこそ重要ではないかと考えます。
 また、どの住宅も交通の便が良いところに立地しており、都市に住む高齢者にとって良い住環境であるといえます。
 高齢者が自立して生活する上で、このような支え合う住宅が今後の高齢者住宅の主流になっていくのかもしれません。しかし、高齢者だけでなく、多世代間の交流・助け合いと言うことも忘れないよう検討していく必要があると実感しました。



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