建築レポート:高齢者居住施設
ヒアリング者:広島県土木建築部都市局建築総室住宅企画室 井伏主任 熊野町西部地域健康センター 金沢所長 建物概要 所 在 地 広島県安芸郡熊野町大字貴船地内 敷地面積 19,149.34u(県営熊野住宅1号館部分含む) (熊野住宅2号館) 設 置 者 広島県 構 造 鉄筋コンクリート造10階建て 延床面積 4,604.58u 住 戸 公営住宅50戸(うちシルバーハウジング10戸) 広島県住宅公社特優賃10戸 事 業 費 公営住宅 748百万円 特優賃 165百万円 (熊野町西部地域健康センター) 設 置 者 熊野町 構 造 鉄筋コンクリート造 2階建て 延床面積 967.13u 主 要 室 デイ・サービス室、浴室、休憩場、子育て支援センター、児童クラブ、会議室 事 業 費 260百万円 今回福祉との連携を図った公営住宅の先進事例として調査を行ってきました。県営熊野住宅は、1号館が数年前に完成しており、今回は2号館建設となりましたが、福祉との連携だけでなく、良好な住環境やコミュニティを形成するための様々な工夫が見られました。 まず福祉連携ですが、この県営住宅と地域健康センターの計画時期が同時であったという幸運がありました。県営住宅を建設する際、町で建設する地域健康センターと併設することで、今後の福祉連携のモデルプロジェクトとなるように計画されました。福祉連携は、単なる県営住宅と地域健康センターの併設ではなく、 1.県営住宅の集会室を地域健康センターと合築し、一体的利用がされるようにした。 2.県営住宅のシルバーハウジング住戸の緊急通報を地域健康センターで受けられるようにした。 3.県営住宅入居者とが地域の一員として活動できる場(デイサービスや各種イベント等)を設けた。 など、県営住宅と地域健康センターを核とした地域のコミュニケーションづくりを行っています。また、地域健康センターに設けたお風呂も裸のつきあいができ、地域住民の交流、世代間の交流が出来るようになっています。 地域健康センターでは、デイサービスとして高齢者向けの講習会を開催していますが、センター長の金沢さんは、ここでは上達することよりも、みんなで楽しくやることが重要であるとおっしゃっており、高齢者学級であるけれど、学校帰りの子供がのぞいていたら、一緒に参加させるなど、地域のふれあいを大事にしていました。 金沢センター長は、この施設を作ることが決まったときから、町長に能力を見込まれて一本釣りされた方で、建物の計画段階から様々な工夫を盛り込んできました。お風呂では入浴の方法を考慮した計画をし、調理室では子供を持ったお母さん達の調理実習の際、子供が不安にならないように母親の姿が見えるように配慮するなど、すみずみまで細やかな配慮を行っていました。本人はそれでもやりたいことがまだまだあると話していたので、このような人材がいるからこそ、この施設が地域の核となれると感じました。 同様に子育て支援センターや、児童クラブを運営するにも、センター長が頼れるスタッフの方がいるので、とても賑わっていました。 公営住宅の方では、高齢者向けであるシルバーハウジングが10戸あります。シルバーハウジングでは、バリアフリー仕様の他、緊急通報システムが設置され、何かあった場合に地域健康センターとテレビ電話で会話することが出来ます。ここで目を引いたのが洗面所に下洗い流しが付いていたことで、公営住宅は自立した生活が出来ることが原則なのですが、万が一介護が必要になったとしても、おむつなどを下洗いできるように考えられています。これはありそうで見たことがありませんでした。 また少子化に対応するため、住宅供給公社が設置した特定優良賃貸住宅では、子育て世帯を支援するため、2LDKから間仕切りを変更することで4DKに変化させることができる住宅を供給しています。 このプロジェクトは非常にうまく運営されていますが、別のところでこれと全く同じものを作っても、うまくいくとは考えられません。やはり地域の実情をよく把握し、そのために県市町村がうまく連携する必要があると感じました。
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