コレクティブハウジングを考える
(※注:かなり私的な意見かつ学術的では無いので、まじめに調べている方はあまり参考にしないで下さい。)

目次
1.コレクティブハウジングとは?

2.コレクティブハウジングは、石川県になじむのか?
3.北欧でコレクティブハウジングが普及した訳
4.アメリカのコウハウジング
5.じゃあ石川県ではどうなん?

1.コレクティブハウジングとは?
 私の業務である公営住宅企画をするにあたって、新規建設住宅でコレクティブハウジングが出来ないか?という事態に直面しました。

Collective = 集合的な;集団的な;共同の

 コレクティブハウジングとは、共同住宅において個々の住戸のプライバシーを確保しつつ、台所や食堂、図書室、洗濯室、ゲストルーム等の共用部分を設け、食事の用意などの家事を共同で行う住まい方のことで、北欧で発達し、公共住宅としても多く供給されているとのことでした。またアメリカではコレクティブとコーポラティブ(共同で建てる住宅又は共同組合住宅)が合わさったコウハウジングが普及し始めています。
 また、日本では阪神大震災の後、被災者のコミュニティーを形成するという目的が加えられて、いくつかの公共賃貸住宅でコレクティブハウジングが建設されました。

 この住まい方のメリットとしては、共働き世帯・片親の家事の軽減、留守家庭児童(鍵っ子)の解消、兄弟の少ない子供の社会教育の場の提供、高齢者の緊急時の対応や安否確認、孤独感の解消などがあげられます。住まい方次第ではもっとメリットがあるのかもしれませんが、世間ではだいたいこの様なものがあげられています。
 で、デメリットについてはあまり触れられていないように感じるのですが、やはりつき合いの煩わしさが第一にあげられると思います。

2.コレクティブハウジングは、石川県になじむのか?
 さて、ここからが本題です。コレクティブハウジングが石川県でなじむのか?
 一部の人の意見では、「他の県では年寄りばかり集まって、大変なことになっている。家賃の不払いや介護が必要になった人ばかりいて、どうにもならんことになる。」なんてことを話していて、そんなひどいことにはならないにしても、シャイな北陸人気質の人たちが、共同生活なんてできるのかしらなんて事を思うのは当然と言えば当然でした。
 以下、詳しく調査もせずに思ったことを書きつづります。

3.北欧でコレクティブハウジングが普及した訳
 なぜ北欧ではコレクティブハウジングが普及したか。これは国民性が第1にあげられると思います。あまり他人に干渉しない、人に対して怒らない。悪く言えば無関心。道で肩がぶつかったって振り返りもしない。(相手は大きいからなんてことはないのかもしれない。)お店で客がどんなに並んでいても、マイペースにレジを打つ。(しかもおしゃべりしてたりする。)そんなに待たされても、客は文句も言わない。こういったところが、逆につき合いが楽なのかもしれません。
 第2に、残業をしない。コレクティブでは、家事を分担することになるが、日本ではやはり残業が当たり前である。特にキャリアの ある人は、これを免れない傾向にある。しかし、北欧では残業しないのは当たり前。男性でも子供を保育所に迎えに行くために早退するなんて事もしばしばだという。そして高い税金を払うために共働きは当たり前で、男性も料理をつくるのが当たり前。(日本もこうなると、女性が結婚をためらわなくなると思うのですが・・・)
 第3に、(これは怒られるかもしれないけど)料理がまずい。というよりレパートリーが少ない?日本のようにいろんな料理があれば、あれが好き、これは嫌いなんて事を考えたりしなければいけませんが、そんなことを悩む必要が無い。北欧の人は共働きと言うこともあって、やはりレンジでチン、というのが多いと聞きました。(料理好きでないとも・・・)
 以上かなりネガティブな話ばかりですが、結論としては共働きの子育て世帯にとってコレクティブハウジングという住まい方が非常にメリットがあり、またそのスタイルにマッチしたのだと思います。
 ちなみに、北欧では高齢者のみのコレクティブをいうのはあまり流行っていないようです。

4.アメリカのコウハウジング

 アメリカでは建築家夫婦キャサリン・マッカーマンとチャールスデュランがデンマークタイプのコレクティブハウジングを彼らの著書『Cohousing』(1987年)で紹介して普及していきました。
 アメリカでは広い土地があることからか、戸建てタイプのコレクティブハウジングが主流で、また建設にあたってはコーポラティブ方式で建てることから、コウハウジングと呼ばれているようです。
アメリカでの普及の理由としては、国民性で言うと北欧の逆。人なつっこい。見知らぬ人が笑いかけてくるのは精神異常者かアメリカ人だ、なんてブラックジョーク(これは私の意見ではないですよ。)が語られるほどだから、積極的に人に交わるのではないでしょうか。私が初めてアメリカに行ってマコムという田舎町のコインランドリーで機械の動かし方が分からなかった時も、おじさんが一生懸命教えてくれました。
食事で言うと、これはまずい。ハンバーガーの国ですから。(日本もそうなりつつありますが・・・)アメリカの郷土料理は何だと聞いたらマカロニチーズだと言われました。(決してまずくはない。が、これが郷土料理と言われても・・・)他の料理にしても、塩こしょうで焼けばOKというイメージがあり、一生懸命味付けしたものは、たいがい日本人の舌には合わないような気がします。ということで、やはり料理に文句が出ない。
そして最大の理由としては、子供を安全に育てられる環境と言うことでしょう。アメリカだって田舎は平和でしょうが、やはり銃の所持が認められる国ですから危険は日本よりあります。そんな時コミュニティーで子供を育てられる環境というのは非常にメリットがあります。特にアメリカでは夫婦と子供と言う世帯は1/3しかいないと言われています。(あとは、シングルマザー(未婚の母)だったり、片親だったり、ゲイやレズの夫婦だったりする。)シングルマザーにとっては家事の軽減も大きなメリットです。
また、北欧でもそうなのですが、環境への意識が高いこともあげられます。これは、環境への意識が高い人が集まるので実践できるのであって、全ての人が出来るものではありません。北欧で訪問したエコロジカルビレッジでも、最初はリサイクルに協力しない人がいるけど、教育していくということを行っていました。
意識が高いからこそ良い環境が得られるのでしょう。

5.じゃあ石川県ではどうなん?
 前記の理由により私はコレクティブハウジングで、毎日顔を合わせて食事をとるなんて、日本人には絶対無理だ!ましてや、おとなしい性格の石川県人には、なお無理。と思っていたのですが、それが大きな勘違いでした。よく分かっていないのですが、どうも毎日一緒に食べるわけでは無いようでした。もしかしたらそういうところもあるのかもしれませんが、全てではないのです。
 しかも、建築レポートでも報告していますが、神戸の震災コレクティブにおいても、月に何回かの食事会や、ボランティアによる喫茶など、ゆるやかなおつき合いをしているとのことでした。
 「あ、これなら日本でもいけるかも。」というのが感想でした。しかし、高齢者のコレクティブには、しっかりしたリーダーや外部のサポートは不可欠だと言うことも分かりました。
 私としては、若い子育て世帯が協力しあえる子育てコレクティブが今後増えて欲しいと思っています。もちろんコミュニティーを形成するためには、子育て世帯に限らず、様々な年代の人がいることが理想的です。そのためにも「世田谷にコレクティブハウジングを実現する会」のような組織が増え、もっとコレクティブハウジングについて考える機会が増えることが第一だと考えます。全ての人にとって良い住まい方と結論づけるものではありませんが、住まい方に対して同じ考えの人が集まる場合に、この手法が最も生かされるのでしょう。
 ひるがえって、公営住宅にコレクティブが適切かと言うことについては、様々なメリットがあるにせよ、コレクティブ部分を維持するために共益費が他の公営住宅よりかかることや、共用部分を作るため専用面積が狭くなると言う制度上の問題、そして入居者の決定が公募によることを考慮すると、その良さを十分に引き出すことが出来ないのではないかというのが私の本音です。ただ、コレクティブの持っているエッセンスをうまく取り入れて、多世代交流ができる公営住宅というものをぜひ手がけてみたいものです。


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