上高地

2002年8月






 
梓川と穂高連峰
 梓川と穂高連峰 (2022年10月撮影)

 三年前の夏のことです。僕は人並みにリュックサックを背負い、あの上高地の温泉宿から穂高山へ登ろうとしました。穂高山へ登るのには御承知のとおり梓川をさかのぼるほかはありません。僕は前に穂高山はもちろん、槍ケ岳にも登っていましたから、朝霧の下りた梓川の谷を案内者もつれずに登ってゆきました。 (芥川龍之介 「河童」より)



 嘗ての秘境上高地は、北アルプス山脈の南の端、焼岳や穂高連峰に囲まれ梓川の清流に沿った、標高約1,500mの地帯にある盆地状の山岳公園です。





焼岳
 焼岳と大正池

 環境保護のためマイカー全面通行禁止の上高地地区を、大正池までバスに揺られて行きます。大正池は、北アルプス唯一の活火山で標高2,455mの焼岳が、大正4年に噴火し、それによって梓川がせき止められて出来た事から、その名前がつきました。





大正池
 大正池

 原生林が水没した事を物語る様に、枯れ木が大正池の水面から頭を出している風景は、とても神秘的です。池は年々、梓川上流から流れ込む土砂によって埋め立てられ、その広さは以前の半分近くになってしまっているとか。





千丈沢
 土砂に埋まった解説版

 千丈沢は、大正池に隣接した場所にあります。豪雨の度に山から大量の岩石が押し出され、大正池の畔に溜まってしまっている風景は、まるで賽の河原の様。この事を解説している案内板自体、皮肉にも石に埋没しています。





田代池
 田代池

 大正池を後にして、梓川を上流へと向かいます。しばらく歩くと田代池で、これは霞沢岳から湧き出した水が溜まって、池になったものです。





マガモ
 マガモ

 水面は限りなく透き通っていて、辺りの景色と相まって幻想的です。そしてここ田代池梓川など上高地の水辺では、マガモやオシドリを多く見る事が出来ます。





木道
 自然研究路

 この先しばらくは自然研究路を歩きます。概ね平坦な道で、湿原などには木道が渡してあったりして、歩きやすい道です。





田代橋
 田代橋

 ここまでは、梓川左岸(上流から見て左側)を通る林間のハイキングコースを歩いてきました。そして田代橋からは右岸に渡り、川沿いのコースを辿ります。





六百山と霞沢岳
 六百山(左端)と霞沢岳(右端)

 しばらくすると、田代池の源泉となる湧き水を産み出す霞沢岳が、右手に見えてきます。





ウエストンレリーフ
 ウエストンレリーフ



レリーフ拡大
 レリーフ拡大

 そしてその先左手には、1896年に日本アルプスを世界に紹介した英国人宣教師、ウォルター・ウェストンの記念碑がありました。1937年制作。





河童橋
 河童橋と穂高連峰

 上高地と言うと登場するこの風景は河童橋。芥川龍之介の小説「河童」の題名は、この橋の名から取られました。橋の周辺にはたくさんの宿泊施設が並びます。ここまで、大正池から河童橋までの間は所要時間1時間ほどですが、辺りの景色を堪能しながら、2時間くらい掛けてゆっくり歩きたいものです。





ビジターセンター
 上高地ビジターセンター

 バス路線はここまで来ているので、この辺りでハイキングはやめにして、ここ河童橋周辺でのんびりするのも良いのですが、時間に余裕があれば橋を渡って梓川左岸へ移り、明神池までの林間のハイキングコースへと進みましょう。その前に、左岸にあるビジターセンターへ立ち寄ります。ビデオや展示物、数々の資料によって、上高地を分かりやすく解説してくれます。





小梨平キャンプ場
 小梨平キャンプ場

 梓川上流へ向かって歩き出し、林間に入って行くと間もなく小梨平です。ここは夏場、キャンプ場として大変賑わいます。





白い砂の山道
 白い砂の山道

 暫く歩いて行くと、やがて足下には、山道だというのに砂浜の様に、一面の白い砂地が続いているのに気付きます。これは、沢の上流から押し出された土砂が積もったものです。





明神館
 明神館

 小1時間ほど歩くと、山間の宿明神館に到着。この付近で食事ができる所はここと、この少し先にある嘉門次小屋のみ。どちらもイワナなど川魚の塩焼きがGOODです。定食で1,500円程。





明神橋
 明神橋

 明神館近くの明神橋を渡り、正面に明神岳を眺めながら右岸へ移ります。





嘉門次の碑
 嘉門次の碑

 嘉門次小屋はこちら右岸にあります。近くには、ウォルター・ウェストンが穂高岳登頂の折りにガイドを務めた猟師、上条嘉門次の記念碑が建っています。嘉門次はウェストンの他にも、多くの北アルプス登山者の手引きをしました。そして嘉門次小屋は、彼の嘗ての住まいだったところです。





穂高神社
 穂高神社奥宮

 少し先に進むと穂高神社の奥宮です。ここには、日本アルプスの総鎮守が祀られています。





明神池
 明神池

 御神体の明神池は神域で、穂高神社の一部となっています。見学料金は大人250円。この池は、一面を雪に覆われる冬の間でも、凍結することはないそうです。ここも含めて、上高地にある全ての水場は例外なく澄みきっています。





自然探勝路
 自然探勝路

 明神池で一休みしたら、今度はここを折り返し地点として、再び河童橋へと向かいます。この梓川右岸のハイキングコースは、河童橋・明神自然探勝路と言い、概ね梓川に沿って歩いて行く事になります。約1時間で河童橋へ。





河童橋
 再び河童橋

 河童橋では出来る限り、時間までゆっくりしましょう。左岸に在る五千尺ホテル喫茶室の手作りケーキは、700円前後と、少し良い値段ですがお勧めです。または何もしないで、穂高連峰の圧倒されそうな雄姿を河原に座って眺めているだけでも十分です。





バスターミナル
 バスターミナル

 河童橋近くにあるバスターミナルからバスに乗車、上高地を後にします。所要時間6~7時間の、ゆったりスケジュールでした。





 今回歩いたコースは、上高地内に在る複数のハイキングコースを組み合わせたものです。なのでこの他にも、一つのコースのみを歩いたり、他の組み合わせで廻ったりと、時間や人数、気分や体力の違いなど、その時々の状況やスケジュールで色々アレンジできると思います。又今回は近くの乗鞍高原を拠点に数泊し、その内の丸1日を上高地のハイキングに充てたのですが、現地に宿泊して、何日かで更にゆったりと上高地を堪能するのも良いと思います。尚、上高地ビジターセンターや、その他ハイキングコース内の数カ所で、「上高地散策ガイドマップ」を100円で販売していますので、これは是非購入しておきたいところです。









★交通 松本電鉄新島々(しんしましま)駅下車、
松本電鉄バス上高地行きに乗り換え。
大正池下車(70分)
帝国ホテル前下車(75分)
上高地バスターミナル(80分)



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