収録曲:交響曲第4番〜第7番、トゥオネラの白鳥、タピオラ レーベル&CD番号:DG 457 748-2 演奏者:カラヤン/ベルリン・フィル |
この録音を聴くきっかけとなったのは、ある本に書かれていた、作曲家の吉松隆氏のエッセイでした。そこで氏は、交響曲第6番と宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の世界が偶然にも非常に似通っており、銀河鉄道の夜のストーリーにぴったりと曲が重なって聞こえる、と述べられており、それを読んで交響曲第6番というシベリウスのなかでは目立たない部類に入る作品を聴いてみようと思ったのでした。これをきっかけとして、私はシベリウスの音楽の本当の深さと美しさを知って、シベリウスの世界にのめり込んでいくこととなったのです。
この演奏は美しさの極致といっても過言ではないでしょう。この曲の冒頭から、一面に銀世界が広がったような、美しい音による世界が作り出されます。こんなにも美しく、哀しく、はかない曲があったのかと、初めて聴いたときには驚きを隠せませんでした。それは、まさにシベリウスの音楽性、精神性と緻密な書法によって、そしてカラヤンという偉大なシベリウスの理解者によってつくられた、美の極致とでもいえる音世界でした。
併録の他の交響曲も名演揃いです。音楽的で、普遍的な解釈とでもいうべき第4番、力強さのなかに秘められた優しさ、暖かさが感じられる5番、磨き抜かれた7番、タピオラ、すべてがすばらしい演奏です。