オスモ・ヴァンスカ/ラハティ響 交響曲第1番〜7番


   


レーベル:BIS
CD番号:BIS-CD-861(交響曲第1番、4番)
     BIS-CD-862(交響曲第2番、3番)
     BIS-CD-863(交響曲第5番オリジナル稿、決定稿)
     BIS-CD-863(交響曲第6番、7番、タピオラ)


 日本でのシベリウスチクルスで有名になったヴァンスカ/ラハティ響ですが、斬新で衝撃的だった実演と同じくすばらしい演奏をCDに収録しています。

ラハティ響の特徴は、中編成オケ故の高い機動力と、耳をつんざくような荒々しさから神秘的な超絶ピアニシモまでを聴かせる音色と表現の幅です。フィンランド的なローカリティを持ちながらも、現代的な機能性を併せ持っていると言えるでしょう。この特徴はオーケストラと指揮者ヴァンスカの長い年月の共同作業によるものといえます。いわば可能性を秘めた原石であったラハティ響をヴァンスカが宝石に磨き上げたということでしょう。

交響曲第1番は、全般的に快速テンポをとっており、鮮烈な表現の演奏です。巨大で力が入りすぎもたれ気味な一般的な演奏とは違い、非常にシャープで軽快ですが、決して表現が浅くなることはなく、むしろ抉りの聴いた快演といえるでしょう。

交響曲第2番は、1番とは一転して標準的なテンポの演奏。しかしながら部分的にはぐっとテンポを落としたりして構成を明確にし、飽きさせず最後まで聴かせます。対比が鮮やかな2楽章や力みすぎず次第に高まっていき、最後の最後で解放されるフィナーレが印象的です。

交響曲第3番は、同曲中でも1,2を争う名演です。突っ走らず落ち着いた1楽章を聴くだけで、ヴァンスカのこの曲への理解がうかがえます。哀愁漂う2楽章、テクニカルな3楽章前半を経てもたらされるフィナーレの静かな盛り上がり等バランスよく聴かせます。

交響曲第4番は、それほど際だってはいませんが、ラハティ響の繊細なサウンドと、ときに見せる荒々しさの対比が鮮やかであると思います。

交響曲第5番は、1915年の初稿と1919年の最終稿の聴き比べができるのが興味深いです。初稿の演奏では、初稿特有の柔らかな表現と交響曲第4番を思い起こさせる暗さをよく表現しています。最終稿の演奏はオーソドックスな名演で過不足なく聴かせますが、1点特筆すべきは3楽章misteriosoにおける超絶PPPです。他のオケでも楽譜の指定通りかなり小さく弾きますが、この演奏に匹敵するものはありません。まさにPPPであり、misteriosoな表現で圧巻で、それを見事にとらえた録音もgoodです。

交響曲第6番は、一般的な演奏よりもかなり速いテンポ。作曲者の速度表示を素直に解釈するとヴァンスカのようなテンポになるといえますが、カラヤンやセーゲルスタム等の演奏になれた人には違和感を与えるかもしれません。清楚で美しい曲でありながら、ときに非常に荒々しく疾走するような要素を含んだ、まさにフィンランド的といえるこの曲を、そのままの形で描いたといえるかもしれません。

交響曲第7番は、ラハティサウンドの神秘的な要素が功を奏した演奏であると思います。


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