シベリウスのコンサート


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コンサート・レヴュー

10月15日(金)
演奏者:ヴァンスカ/ラハティ交響楽団
曲目:シベリウス/交響曲第4番、第6番、第7番
レヴュー:
 シベリウスの後期の作品は日本ではほとんど演奏されないので、ここぞとばかりに(貧乏なのに)S席で聴いてしまいました。演奏の印象は基本的にCDとほとんど同じでした。ヴァンスカらしい独特のほの暗いサウンドは健在でした。ただ会場の音響特性のためか弦楽器が効果的に響かず、6番のような弦楽器主体の曲ではかなりマイナス面が見られました。ヴァンスカの解釈では、テンポ設定が速めのためか、若干テクスチャの造形に問題があり、リズムも流れてしまいがちだったのは残念です。この指揮者が円熟を迎え、テンポが落ちてくればさらによい演奏を聴かせてくれると思いますが、今回は無い物ねだりでしょう。全体的にはバランスのとれた構成で、シベリウスらしい演奏であったといえると思います。4番は快演で、この曲のすばらしさを再認識しました。

 余談ですが、この演奏会では開演前に民族楽器カンテレの演奏が行われるなど粋な計らいがありました。お客さんは、シベリウスのファンが多いらしく、マイナーな曲なのにハンセン版の水色のスコアをもっている人もいらっしゃいました。演奏後の拍手も指揮者が棒をおろすまでしばらく拍手が起こらない点も好ましく、非常にいい雰囲気のコンサートでした。

サントリーホールN響名曲シリーズ
8月4日(金) 7:00開演 サントリーホール
指揮:サカリ・オラモ
●シベリウス:交響曲第5番 ●同:ポヒヨラの娘 ●ドヴォルザーク:チェロ協奏曲

サイモン・ラトルの後任として、一躍抜擢されたフィンランド人指揮者、サカリ・オラモが、N響を振るという非常に興味深いコンサート。しかもポヒヨラの娘と交響曲第5番を取り上げるというので、急いでチケットをとりサントリーホールへ出かけました。

座席は予算の都合上P席。Pブロックゆえ、楽器によっては、鳴りのバランスが悪く感じることもありましたが、それなりのコストパフォーマンスがあると感じました。

ポヒヨラの娘
実は、私はこの作品は、本当の良さが理解できておらず、強気のコメントはできませんが、N響としては、やや鳴りが緩慢で、響きが濁っているように感じられ、曲の良さが完全には出ていない感じがしました。もっとも席のせいというのもあるのかもしれません。いまいちクリアでなかったのが残念でした。解釈はオーソドックスなもので、これといって強い表情はありませんでした。

チェロ協奏曲(ドヴォルザーク)
ソリストは長谷川陽子。独奏は、非常になめらかで、癖のない演奏で、非常に好感が持てました。しかし、Pブロックでチェロコンは聴きにくいです。ソロがどうしても伴奏に埋もれてきこえてしまいます。こればかりは仕方がないか。ドヴォルザークは、下手に演奏すると、やたらにイモくさい音楽になってしまいますが、そのあたりは上手く回避していました。このあたりはフィンランド人指揮者・オラモの面目躍如か?

交響曲第5番
ラハティ響の5番を聴きに行けなかった私としては、ずっと生で聴きたいと思っていた曲でしたので、大きな期待をもって聴きました。

解釈は非常にオーソドックス。オケの鳴らし方も、シンフォニックな標準的スタイル。特に解像度が高いわけでもなく、よく言えば自然な鳴り、悪く言えば、ありきたりのサウンドではありました。私のイメージではカラヤンとギブソンの演奏を足して2で割ったような感じ。しかし、全体を通して聴くと、非常に納得がいくのは、構成力が見事な証であり、このあたりの指揮者の力量はさすがだと感じました。また、オケの鳴りは、前半とうって変わって、非常にクリアにきこえるようになり、シベリウスサウンドを満喫できました。

1楽章、冒頭、第1主題のホルンは、ややくすみ気味のサウンド。ドイツオケN響を感じさせるサウンドでした。優しさを感じさせる雰囲気は良かったと思います。展開部から、主題の再現、スケルツォへの移行は非常にスムーズで、納得のいくもの。スケルツォに入ってからは、かなり巻いて、テンポをあげていた印象があります。集結はオケを十分にならしていました。

2楽章は、淡々と進む音楽ですが、サッと流すことなく、それなりにウエイトを置こうとしていた感じがしました。

3楽章 ベルグルント/COEのような、超高解像度の演奏を聴いてしまった耳には、取り立てて物珍しくもない、ごく普通の開始でした。しかし、金管楽器による、オルガン風のサウンドによる音型に乗って、奏でられる、第2主題が出てくるあたりから、音楽の持つエネルギーがどんどん伝わってくるように感じました。シベリウスは、この交響曲第5番の後、第6番、第7番、テンペスト、タピオラといった、素晴らしい作品を世に送り出しますが、それらの作品に見られる、宇宙的な広がり、高貴な精神性といったものが、この第5番の三楽章にも現れ始めていることが実感として感じられる演奏でした。曲が進むにつれて、次第にあらわれ、高まっていったサントリーホールの中に星空が広がったような錯覚に陥るような、音の波は非常に感動的でした。

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コンサート情報

第2回紫苑交響楽団定期演奏会
2002年3月24日(日)13:00開場 13:30開演
京都府長岡京記念文化会館

シベリウス/悲しきワルツ
      交響詩「エン・サガ」
      交響曲第2番ニ長調
指揮:下地馨

詳しくはホームページをご覧ください
http://www.page.sannet.ne.jp/tomikei/shion/index.html

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