ラフマニノフ:交響曲第2番


演奏者:アシュケナージ/アムステルダム・ロイヤル・コンセルトヘボウO.
併録曲:ユース・シンフォニー
レーベル&CD番号:DECCA 436 480-2


 ラフマニノフという作曲家とその作品は、長いことずっと私には、縁遠い存在?でした。昔からちょっとひねくれたところのあった私は、テレビドラマで使われている作品=ろまんちっく=嫌いというイメージを持っていて、長いことずっと敬遠してきたのでした。

 家にあったCDもチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番に「くっついてきた」ピアノ協奏曲第2番しかありませんでした。しかも最後まで聴いた試しがないという代物でした。

 大学オケではクラシック音楽には詳しいほうでしたが、そんなわけでラフマニノフに関してはほとんど何も知らず、「ああ、グラズノフに交響曲第1番の初演をぶちこわされた人でしょ(これは事実)」、「ああ、ラフマニノフ?あれはだめだよ(ものすごい偏見)」とかいって適当にごまかしていました。

 ところが大学オケの選曲で、ピアノ協奏曲第2番が通り、さらに次の演奏会では交響曲第2番を演奏することになって、さらに後者はソロだらけのトップを吹くことになって、否応なしにCDをじっくりと聴くことになりました。

 それでようやく良さもわかってきたわけですが、交響曲第2番に関してはかつて私は、名盤といわれるプレヴィン/ロイヤルフィルの演奏するCDを聴いて、曲の冗長さ(これは、あるいみ当てはまる)にすっかり参ってしまって、この曲が嫌いになってしまった経験があったので、正直まいったなとも思っていました。

 しかし、そうも言っていられないので、東京文化会館の音楽資料室に出向いて、膨大な数があるCDのなかから、自分の好きそうな解釈のCDを探しました。この音楽資料室には20種類くらいの(もっとあったかな?)同曲のCDやLPがあり、それを片っ端から(つまみ食い的ではありますが)全部聴いていきました。それによって、どうやらプレヴィンの演奏はこの曲の(単に私とは相性が悪い)解釈のひとつにすぎないのだということがわかり、違和感なく聴ける演奏も結構たくさんあることがわかりました。

 そんなこんなで、私がベストワンに選んだのがアシュケナージ/コンセルトヘボウの演奏でした。チャイコフスキーやラフマニノフなどのロシア音楽には、ある種の語り口の重さがあって、実際の演奏でも旋律がかなりもたれ気味になることがあり、すっきりしない印象を与えることがあるのですが、この演奏はそういうところがほとんどありません。とはいえ、この演奏が無味乾燥であるわけでは決してありません。テンポ・ルバートは非常に効果的に使われていますし、旋律も自由にうたわせています。ロシア音楽にありがちな停滞する感じのみをとりはらって、うまみは全て残したという感じの演奏であると思います。このあたりはアシュケナージの美観が全面に出ていると思います(彼の音楽は指揮にしろ、ピアノにしろ非常に洗練されたクリーンな音楽をつくりますよね)。

 演奏の特徴としては、テンポは常に速めで、3連符系のリズムが非常に有効に生かされています。しかもテンポが早めでありながら、テンポルバートは変幻自在、オーケストラのコントロールは完璧で、彼がピアノを弾くかのようにオケがしっかりと棒についてきています。しかもそれがテクニックをひけらかすものにはならず、きわめて自然になされていることが驚きです。それによってこの曲の弱点でもある冗長性が見事に解消され、ラフマニノフが音に込めた思いが存分に伝わってきます。
 録音も優秀で、おなじみのデッカ・サウンドと相まって、オケの音はまさに黄金のサウンドと呼ぶにふさわしいものになっています。
 また、個人的には3楽章のビブラートを有効につかったクラリネットが非常に好きです。3楽章のソロは意外と平坦になってしまうことがありますが、非常になめらかに、自在に歌っているこの演奏は素晴らしいと思います。


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