リガチャーに関する蘊蓄


単なる経験則にすぎないのですが、ある程度リガチャーの設計と音の関係がわかるようになってきた(ような気がする)ので少しまとめてみることにします。独断と偏見も多少入っていますので適度に割り引いてお読みください。

1.リガチャーのネジについて

ネジそのものはそれほど重くはないはずですが、やはり吹奏感等に影響を与えるようです。ネジの材質や形状、重さが違うだけで響きや鳴りが結構違います。ねじにはいくつかの規格があるようなのであわないものも多いですが、ネジを交換してみるとそれだけで鳴りが変わります。また、ねじの立て付けが悪いものは音に雑音が混じるような気がするのは私だけでしょうか。

また、いわゆる正締め、逆締めといったネジの取り付け側によっても音は違ってきます。ネジがリード側にある正締めは、音が太く出ますが音にやや雑音が混じり気味になる傾向があります。反対に逆締めではノイズが少なく、音が艶やかにきれいになる傾向があります。これはネジそのものの重量がリードの振動に影響を与えていたり、ネジそのものの振動が音に加わっているためでしょう。ただ、正締め、逆締めのどちらが良いかは好みです。

ねじの本数については、1本締めですと均等にリードを締められますが、設計が良くないと締め方に偏りが出てしまいます。2本締めですと奏者の側でバランスを調整できるので便利です。

2.リードとの接点について

リードとの接点に関しては、表皮の中央部分を中心に押さえるもののほうが息が自由に入り口元が楽なのに対して、表皮の端のほうをたくさん押さえるものほど息の流れが固定され、安定度が増します。
 表皮の中央部分を中心に押さえるものとしてはハリソン・ハーツ等があります。これらは中央部をおさえることもあって、締め方次第で、マウスピースのテーブルの微妙な凹みを利用して、リードの開きを自在に調整できます。振動を止めない程度に締めればわずかに開きを大きくできるので息がより自由に入ります。音の輪郭もきつくなりすぎないためおおらかな響きをだしやすいと思います。私の主観では、こうしたマウスピースはB40やB45のような開きの大きめなマウスピースに向いていると思います。
 表皮の端のほうを押さえる方法としては、縦2本のレールや横2本のレールで押さえるタイプがよく見られます。前者としてはBGのTraditional,SR,Woodstone、後者としてはVandorenのmastersやBayなどが
あります。前者の場合は、レールが長いほど、またレールの間隔が広いほど息の流れは固定されます。後者の場合は2本のレールの距離が離れているほど息の流れが固定され、反対の場合は自由になります。
私の主観ではこうしたタイプの場合、開きが狭いマウスピースで息をまっすぐに楽器の方向に流したい場合に優れているように思います。また音の輪郭が出やすく明瞭な印象を与えます。
 また、例外的にリードのサイドのエッジ部を押さえるものもあります。GrandConcertのH seriesがそうです。ほかにはボナードの逆締めも若干このような傾向があります。こうしたものは音にパワーがでますが、若干ごりっとした音の印象があります。パワフルですがコントロールも必要になります。

3.リガチャーの取り付け位置について

基本的に上の方につけると、リードの振動をコントロールして、まとまった綺麗な音をつくりやすいと思います。2本ネジリガチャーの場合は上のネジを少し強めに締めることで同様の効果が得られます。反対に少し下の方につけるとリードの振動が自由になり、吹いていて楽ですが、音は少し荒っぽくなります。吹き心地の良さと、聴衆に聞こえる音の良さのバランスをとることが重要なのだと思います。

4.材質について

 金属製のものは適度に共振し、響きを増加させてくれます。ただしリガチャーの重量が重すぎると響きが止まったりなくなったりしますし、軽すぎると音が散りやすくなると思います。自分にとってちょうど良いと思えるリガチャーを探すことが大事です。
 一方皮やビニールなどを用いたものは、どうしても振動を吸収します。そのため近くで太い音で聞こえていても離れると音が貧弱で苦しく聞こえることがあります。一部金属を使ったものは音の輪郭は出ますが、やはり響きは多少吸われています。ただし、吹き心地がとても良くコントロールにも優れているのでその辺は魅力的です。こうしたタイプのリガチャーを使う場合は、響きが強く、明るめに響くリードを選んで、素材によるエネルギーの減衰分を補うと良いのではないかと思います。


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