リードにこだわる・・・・・でも


とにかく良いリードを探すというのはクラリネット吹きの永遠の課題と言われます。
自分でリードを作れる方は別として、市販品を買っている人間にとっては、少しでも、良く鳴るリードが入った製品を買いたいと思うものです。

私は良いリードがあれば、非常に美しい音が出るということを比較的早い段階で実感して味をしめたせいか、リードには相当こだわりを持つようになりました。おかげで、音が汚いと指摘されたことは今までほとんどなく、音色の良さは私の数少ない(・・・と思われる)チャームポイントとなりました。

しかしながら、こだわりを持ったゆえに気になりだしたのがリードの品質です。
リードに関して、特にデファクトスタンダードとなっている某社のリードに関しては、一般的に品質が低下したと言われ、それを実感することも増えてきたような気がします。製造ロッドによって良いときはとても良いのですが、悪いときもあり、ケーンの状態に振り回されることが多いというのが最近の私の印象です。

これは私に限ったことではなく、私の知るプロの演奏家の方も結構リードに苦しむことがあるそうです。

ある方の話では、なんでも昔(2,30年くらい前?)は良いリードが多かったと言われ、話によっては買ったリードがほとんど使えたとかいいます。もっとも、私が楽器を始めた頃には、すでにそういうことが言われ始めていましたから、私などは、その「昔」というのを知らないわけで、そんな話を聞くと、本当なのだろうか?と思ってしまいます。しかし、多少の誇張はあるかもしれませんが、現在の状況とは歴然とした差があるように思います。

 一説によると、大量生産の要求により、生育、乾燥が十分に行われていない素材を使用しなければならなくなり、それによって品質が低下したと言われていますが、実際のところはどうなのでしょう。

まあ、そんなこんなで、常にリード難で常に「もっと良いリードはないものか」といろいろなメーカーのリードに手を出してみたり、リードを紙ヤスリで削って調整したり、いろいろと手をつくしてみてはいます。。こだわることに関してはとことんこだわるB型の私は、やれ、新製品が出たといえば、すぐに楽器屋に買いに行き、いろいろなメーカーのリードの箱をあたりに散乱させながら、あれこれと選んでみたりします。これは少しでも楽に良い音で演奏しようよいう試みでもあるわけですが、無駄な抵抗に終わったり、深みにはまってぬけだせなくなったりして大変な目にあうこともありました。

そんなことばかりして、深みにどっぷりとはまってしまったので、仲間内からは、「いつも変なリードの箱を開けている人」「リードを大量に持っている人」などと思われていました。たくさんのリードを持ち歩いているので、「これだけあれば演奏会とかでも困らないでしょう?」とか、「こんなにたくさんあって良いよね」などと言われたりしますが、たくさんのリードを持っているときには実際には使えないリードばかり所持していて、ゴミを持ち歩いているに等しいです。他の方がどうなのかは知りませんが、少なくとも私の場合、所持しているリードの数が多ければ多いほど、リード不足で追いつめられています。すなわち、私の心理状態は所持するリードの量と反比例するといえるのかもしれません。

こういうのを本末転倒というのかもしれませんが、そうはいってもやはりリードにこだわってしまう私でした。

(追記)

 最近は、多忙になって楽器を触る日が少なくなったことで、落ち着いてリードを育てる(安定化させる)ことができるようになり、手持ちの良いリードがだいぶ増えて長持ちもするようになり精神衛生上もよろしくなりました。また、マウスピースの変更やアンブシュアの見直しなどをして、リードの選択も少し楽になった気がします。しかし、良いリードをたくさんそろえて、安心できるような状況を作り出すには、それなりにたくさんリードを買い込むことが必要で、根本的解決にはまだ遠いようです。



おまけ:ポピュラーなメーカのリードの特性(含;独断と偏見)

バンドレン・トラディショナル・・・いわゆる従来からの定番商品。実用新案か何かのプラスチックホルダーに入った誰でも知っているリード。いわゆるフレンチカット(ファイルド)で、ヒールを含め、リード全体は薄く作ってあるが、独自のカッティングによって、薄いながら腰の強さとしなやかさ、柔軟さをつくりだしている。
近年のリードは、先端サイド(抵抗点サイド)をかなり厚くしてあり、いわゆる「リードミス」の発生を防ぎ、音の明快さや通りの良さを向上させてあるが、その分音がやや堅かったり、音の立ち上がりに問題があるケースもある。また、先端が厚すぎるものは抜けが悪い。もっとも自分に合わせて加工をする人の場合は多少厚みのあった方が好みに合わせて削れるという利点はある。

品質に関して、均一性はやや劣る。良いリードはとてつもなく良いが、悪いリードはとてつもなく悪く、音さえでなかったり、演奏にはまったく使えないものばかりのことが希にある。箱ごと全滅という場合もあり。
全般的に音はシルキーで、荒っぽい音にはならない。

※あくまで個人的印象だが、最近のロット(箱の中の広告がM15のもの/広告がリードケースのもの)は良いものが多いような気がする。古いロット(広告がOptimumのやつとか)のほうはあまり良くない印象がある。


Vandoren Traditional

バンドレン・V12・・・ロングフェイシングのマウスピース用に、バンドレンが開発した製品。ヒールが厚いぶん、材料に太いケーン(アルトサックス用と同等)が必要なため、値段がトラディショナルより高価。トラディショナルとは異なり、非フレンチカット的(表皮のみをはがした部分が非常に小さい)で、設計思想が異なる。バンドレンがここ15年ほどの間に多く設計しているロングフェイシングのマウスピース(ライヤー系、B40,B45,13series,M15など)向きであるとされる。

バンドレン・ハンドセレクト・・・トラディショナルのハンドセレクト版。高価で、購入者が少ないのか、あるいは生産量が少ないのかあまり見かけない。普通のリードなら2,3箱は買えてしまう。箱詰め時に、ハンドセレクトしているようで、ひどく悪質なリードというのは入っていない。均質ではあるのはメリットだが、均質なぶん、奏者にあわなかった場合は全滅の可能性が高い。
個人的には、同じお金を払って、トラディショナルを数箱購入した方が賢明と思う。

バンドレン・56RueLepic・・・バンドレンの新製品。クラリネットリードとしてははじめてアンファイルドを採用。きわめて厚いヒール部(ただしコンパクトな幅)と、独自のカッティングにより、太くて丸く、かつしなやかな音が出る。V12の太さとTraditionalのしなやかさをあわせもったリードといえる。少し値段は高め。定価3000円。工場出荷時に密閉パッケージされているのでリードの状態が安定している。

グロタンG3・・・バンドレンなどと比べるとハート部が先端付近まで伸びているため、厚く重厚なサウンドをつくりやすい。グロタン派の人はバンドレンが嫌い、バンドレン派の人はグロタンが嫌いというように、好みが分かれるらしい。バンドレン派の人から見ると、同番のリードではやや強めの抵抗感になる。

グロタンGAIAおよびGAIA Select・・・どちらも同一の品質のリードで、Selectは厚さが細分化されたもの。やはりグロタンらしいサウンドのリードで、厚く重く太い。バンドレン製とは一線を画する。

グランドコンサート(青:トラディショナル)・・・グランドコンサートのシリーズのなかではヒールが一番薄く、カット部分の面積も最小。ハートやヴァンプ部はVandorenより薄く長いフラットで直線的な設計。先端サイド(抵抗点サイド)は割と厚い。ゆえに音は素朴で太く、明快で反応がよい。しなやかさ、なめらかさはVandorenより劣る。ヒット率は高い。

グランドコンサート(赤:シックブランク)・・・N響横川氏が制作に関わったことで有名。ヒールが厚い(同シリーズ中もっとも厚い)。グランドコンサート青箱と同じく、フラットで直線的な設計。違いはヒールが高いためハート部以降に厚みがあり、そのためカット面は少し長くしてある。音は太くて厚みがあるが、しなやかさはVandorenより劣る。ヒット率は高い。

グランドコンサート(灰:エヴォリューション)・・・藤井一男氏監修。後から国内販売されたインターナショナル版はアンファイルド・アメリカンカットだが、当初の国内向けはファイルド・フレンチカット。ケーンの表皮の色が極めて統一されており、カットもきれいにそろっていて、手間をかけていることをうかがわせる。比較的Vandoren青箱のカットに近く出てくる音の感じもほかのGrandConcertのリードよりもVandoren的。曲線的でふくらみのあるカットで、抵抗点サイドはそんなに厚くない。ゆえに最初から柔らかな音が出る。たくさん練習ができるのにリードを買うお金がない中高生がVandorenの代替品として持つのにも良いかもしれない。


Grand Concert Evolution

グランドコンサート エヴォリューション アンファイルド・・・国際仕様版。ファイルドではないので若干良い意味での抵抗がある。柔らかな音色。

オペラ・・・カット面積がかなり長く、表皮のみを取り除いた部分の長さも長い。ヒール厚は中庸。腰が強く明るめのサウンド。仕上げは丁寧。私の記憶ではさらに選りすぐりのセレクトもあったように記憶している。
おそらく製造中止。ほぼ店頭在庫のみだと思われる。

Rigotti・・・石森管楽器等で扱っている。バンドレンのトラディショナルとV12の中間の吹き心地と音。カットに関しても両者の中間、ややV12寄りの印象。抵抗感のグレードが通常より3倍細かいため、好みの抵抗感のリードを手に入れやすいというメリットがある。→現在石森で販売されているものはグレード細分化がなくなっている。

MARCA Traditional・・・ヒールは標準〜やや厚。カット面積がかなり広い。息の通りがよく明るいサウンド。同番のバンドレンなどと比べるとやや抵抗が弱めか。やや高価なリード。

MARCA Ex・・・コンピュータ制御のカッティングマシーン採用のためか、従来品に比べて価格が安くなった。リード形状はOperaとよく似たもので、カット面積が非常に広い。同番のバンドレンよりはやや薄目(抵抗が弱い)。振動させやすいリードで、品質も均質なので初心者にも結構良いかもしれない。これもVandorenからの乗り換えに違和感が少ない感じのサウンドである。サウンド的にはやや薄味か。

Alexander Classique・・・ヒールが厚く、VandorenのV12に設計が似ている。暖かく穏やかな響きでなかなか魅力的。その昔買ったAlexander Sperial(当時はダブルカットだった)は音が堅かったが、こちらは柔らかでClassiqueという名称にふさわしい。


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