4つの伝説曲(レミンカイネン組曲)


作曲:1893,1895 改訂1897,1900,1939
編成:
第1曲:Fl: 2(うちPicc持ち替え1), Ob: 2, Cl: 2, Fg: 2, Hr: 4, Tp: 3, Tb: 3, Tim: , Cym: ,Trg,大太鼓、弦
第2曲:Ob: 1, Ehr: 1, BCl: 1, Fg: 2, Hr: 4, Tb: 3, Tim: 1, Hp: 1, 大太鼓1,弦
第3曲:Fl: 2, Ob: 1, Ehr: 1, Cl: 1, BCl: 1, Fg: 2, Hr: 4, Tp: 3, Tb: 3, Cym: 1, Trg: 1, 大太鼓: 1, 小太鼓: 1、弦
第4曲:Pic: 2, Ob: 2, Cl: 2, Fg: 2, Hr: 4, Tp: 3, Tb: 3, Tub: 1, Tim: 1, Cym: 1, Trg: 1, 大太鼓: 1, 鐘1,タンブリン1

出版:ブライトコップ ウント ヘルテル

作曲のいきさつ

 クレルヴォ交響曲で成功を収めたシベリウスは、この曲に続いて、フィンランドに伝わる、叙事詩『カレワラ』に基づいたオペラの作曲を構想しました。

 シベリウスは、オペラのテーマとして、『カレワラ』より、英雄ワイナモイネンの、船の建造の物語を選び、このストーリーに基づいて作曲を始めました。そして、シベリウスは、カレワラにおける黄泉の国「トゥオネラ」の印象をもとにこのオペラの前奏曲を作曲します。

 トゥオネラの国とは、「船の建造」の話としては、ワイナモイネンが船の建造に必要な呪文を求めて訪れた場所であり、カレワラにおける前章では、もう一人の英雄「レミンカイネン」が白鳥狩りにでかけて策略に遭い、命を落とした場所です。
黒い川が流れ、激流が渦巻き、白鳥が不気味に漂う、この死の国の暗く、妖しげなイメージが、オペラの前奏曲としては最適だったのでしょう。

 しかし、フィンランド固有の神話に基づいて想定された、この意欲的なオペラは、完成を待たずして作曲が中止されてしまいます。当時、ワグネリアンであり、ワーグナー風の壮大なオペラを作曲しようと考えていたシベリウスでしたが、結局、自分の作曲語法がオペラにはそぐわないことに気づいたというのが、その理由のようです。

 そんなわけで、このオペラの前奏曲として作曲された音楽は一応の形をつくったまま残されました。そこで、シベリウスはオペラとしてではなく、管弦楽作品としてこの作品を転用しようと考え、「船の建造」の前章に出てくるレミンカイネンの物語に基づく音楽を構想しました。その音楽の一部としてこの前奏曲を利用することを考えます。
この新たな管弦楽作品が「4つの伝説曲」であり、転用されたのが「トゥオネラの白鳥」です。

曲の概要

 前述のように、4つの伝説曲はカレワラにでてくるレミンカイネンの物語の内容を描いています。話の内容としてはおおよそ、以下のようになっています。

 レミンカイネンがサーリの美しい乙女キュッリッキを自分のものとしたいがために、キュッリッキを掠奪し、求婚をするが(11章)、夫婦となるために取り交わした約束をキュッリッキが破ったため、レミンカイネンは、キュッリッキのもとを離れ、母親の制止を振り切ってポヒヨラへ求婚の旅へでてしまう(12章)。レミンカイネンはポヒヨラの娘に求婚をするが、その条件として、「ヒーシの大鹿を捕らえること」「ヒーシに住む、火のような口をした雄馬に轡(くつわ)をつけること」「トゥオネラ川の白鳥を射止めること」の3つを約束する。レミンカイネンは、はじめの2つの約束を見事に果たす。しかし、トゥオネラで、ポヒヨラの牧者の策略に遭い、命を落とす(13,14章)。レミンカイネンの母は、急流渦巻くトゥオネラ側から、レミンカイネンの遺体を拾い集め、呪文と、膏薬によってレミンカイネンを蘇生させ、蘇生したレミンカイネンは母とともに故郷へ帰る(15章)。

 このストーリーに基づいて、11章が第1曲、14章が第2曲、第3曲、15章が第4曲として構成されています。

以下、曲ごとの解説

第1曲:レミンカイネンとサーリの乙女

 カレワラ11章に基づいています。
 キュッリッキという美しい乙女に求婚しようと、サーリ(フィンランド湾東部に位置する島)を訪れた、レミンカイネンは、またたくまに、乙女たちの注目の的となりますが、キュッリッキの気を引くことが出来ず、レミンカイネンは苦しみます。
 第1曲では、レミンカイネンの男性的なテーマと、軽やかで踊るような、女性的な、サーリの乙女のテーマの交錯によって、ストーリーが描かれています。

第2曲:トゥオネラの白鳥

キュッリッキを捨て、ポヒヨラの乙女に求婚したレミンカイネンが、結婚の条件の最後の命題として射止めるべき、トゥオネラ川の白鳥。
黄泉の国トゥオネラに流れる黒い川、そしてそこに妖しく漂い、悲しげな鳴き声をたてる白鳥の様子が絶妙な雰囲気で描かれています。
この曲は、単独でも頻繁に演奏されます。

第3曲:トゥオネラのレミンカイネン

 白鳥を射るためにレミンカイネンはトゥオネラを訪れます。
しかし、レミンカイネンに侮辱されたポヒヨラの牧者、マルカハットゥの策略により、レミンカイネンは命を落とし、トゥオネラ川に落ちます。そして、血まみれの「トゥオネの息子」によって、体を5つに切られてしまいます。
不気味なモチーフは、レミンカイネンの死をあらわします。

 第4曲:レミンカイネンの帰郷

母親の尽力によって、生き返ったレミンカイネンは、母の忠告を聞き入れ、故郷に戻ります。
第4曲では、レミンカイネンが、帰郷する様子を描いています。

May.29.2001 by Johansen


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