カレリア組曲、カレリア序曲〜劇付随音楽をめぐって


 カレリアはフィンランドの歴史的な由緒がとりわけ深い土地(現ロシア領)。ロシアのカレリア占領に対して、民族主義の高まりがおこり、それに際して劇音楽として「カレリア」が作曲されました。この劇はカレリア地方の13〜19世紀までの歴史による7つのシーンにより構成されました。

 シベリウスはこの作品の大部分を破棄してしまったので、現存するのは演奏会用の曲として再構成された組曲と序曲だけでした。しかしながら近年作曲家カレヴィ・アホなどによるいくつかの復元が試みられ、全体像をうかがい知ることができるようになりました。

 この曲は、シベリウスの作品の中では、親しみやすく、わかりやすい印象を与えます。有名な組曲では特にその印象が強いです。そういった外見にも関わらず、当時のフィンランド人を大いに勇気づけたであろう精神的な強さや美しさも感じられます。

 原曲である劇音楽版では、スウェーデンの支配下にあった時代から、ロシア帝国の侵略(西部カレリア)によるフィンランドの分断、そして1811年のロシアによる全土統一によるフィンランドの再統合が、描かれ、ロシア統治下の大公国としての幸福な時代が訪れるようすが描かれます。終幕で高らかに歌われるフィンランド国歌は、フィンランド人のアイデンティティを堂々と提示したものといえるでしょう。

 さて、この劇音楽に描かれた時代は1811年までですがその後はどうなったのでしょうか・・・・・?そう、ロシアの圧政が次第に強まり、フィンランド独立の機運が高まっていくのです。そんな雰囲気の中で、シベリウスは生まれ、育ち、フィンランド人としての愛国心から「カレリア」を作曲することになるのです。

December.12.1999 by Johansen
(Johansen製作の別サイトより転載)


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