音詩「夜の騎行と日の出」


 この曲が構想されたのは、交響曲第2番と同じで、彼がイタリアに赴いた頃です。しかしながら様々な理由によって作曲は引き延ばされて、結果的には交響曲第4番と同時期の作品となりました。曲の素材自体はイタリア旅行時に作られたものですが、作曲は彼がヤルヴェンパーに移ってから行われたため、ロマン主義風ではなく、古典的な、簡素な作風が全体を通して貫かれているように思います。
 曲は特に特定の物語によるものではなく、ただ単に暗い、暗い夜を馬で駆け抜ける姿と、やがて訪れる夜明け、そして日の出の様子を描いたものだそうです。特定のテキストによる作曲でないことから、また、交響曲第4番作曲と同時期ということも考えると、吟遊詩人などと同じく、やはりこれも作曲者の代弁なのかなと思います。しかしながら、この曲では、内面的な世界に閉ざされ、闇に包まれ続けることはなく明るい夜明けへと音楽が発展していきます。そういう意味ではこの曲は交響曲第5番の世界を先取りしたものといえるかもしれません。実際に後半、日の出の部分の音響は第5番とつながるものがあります。
 曲は冒頭、勢いのある前奏に続いて、騎行のリズムのオスティナートが延々と続きます。なかなか明けない北国の夜を象徴すると同時に、日の出への静かな期待も感じさせます。そして現のコラール的な旋律に続いて、徐々に夜が明けていく様子が描写されていきます。次第に暗い響きから、透明で明るい響きに変わっていきます。空が白みはじめ、地平線が明るくなり、・・・そしてついに訪れる日の出・・・・何と喜ばしいのでしょうか。シベリウスが思い描いた希望が重ね合わさってまさに感動的です。そして、この曲に書いたように無事にシベリウスは病魔という闇のトンネルを抜けて、新たな音の世界を作り出していくのです。

February.19.2000.by Johansen


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