2つの小品(厳粛なメロディ)作品77
作曲:1914-15
編成:Vn&P Vc&P Vn&Orch. Vc&Orchのいずれか
この作品は、作曲年代から言うと、交響曲第5番のころになりますが、同時期にシベリウスは交響曲第6番のスケッチを始めており、この曲には、交響曲第5番よりも6番と似た雰囲気を持っています。交響曲第6番と同じく、教会旋法を使ったメロディーは、敬虔な祈りを強く印象づけ、この2つの小品それぞれにつけられたサブタイトル、「聖歌(喜べ、我が魂よ)」、「献身(我が真なる心より)」の印象そのままです。
後期様式にシフトしつつあったシベリウスの作曲技法によって、伸びやかでありながら、決して暑苦しくならず、どこまでも透明なサウンドが作られ、とても美しい作品だと思います。個人的にはシベリウスが書いた、独奏楽器のための作品のなかでもっとも美しいものだと思います。
なお、この曲は、当時のフィンランドにおける名チェリスト、フォストレムに捧げられています。
第1曲「聖歌」
ピアノ(オーケストラ伴奏ではハープ)のアルペジオに乗って、伸びやかな独奏楽器のカンタービレが奏でられて曲が開始されます。曲は、技巧に走ることなく、どこまでも伸びやかで、自由に旋律を歌わせます。心の中の静かなる喜びを求める祈り、精神の飛翔というイメージでしょうか。
第2曲「献身」
穏やかで伸びやかな第1曲とは異なり、やや動きを持ち、また暗く、深刻な印象を与えます。やや劇的な展開を見せ、前曲との対比を見せています。こちらは喜びと言うよりはというよりは強い意志の表明という印象を与えます。