劇付随音楽「ペレアスとメリザンド」 作品46 Pelléas et Mélisande Op.46


作曲:1905年
編成:Fl(Picc),Ob(E-H),Cl2,Fg2,Hn2,Timp,大太鼓,トライアングル,弦5部
出版:ロベルト・リーナウ

「ペレアスとメリザンド」はドビュッシーやフォーレ、シェーンベルクが音楽をつけたことで非常に有名な、ベルギーの作家メーテルランクによる戯曲です。

シベリウスは劇付随音楽として同タイトルを持つ10曲から成る音楽を作曲しました。

「ペレアスとメリザンド」は、ペレアスとメリザンドの結ばれざる愛と2人に襲いかかる運命の残酷さを描いています。ストーリーを簡単に述べると以下の通りです。

深い森のなか、独り泣いているメリザンドをゴロー(ペレアスの兄)が見つけ、自分の城につれて帰り妻とする。しかしながらゴローの弟であるペレアスは次第にメリザンドに惹かれていき、互いに愛し合うようになる。しかしながら、事がゴローに次第に露見することとなり、ついにはゴローはペレアスを斬り殺す。やがてメリザンドは病に倒れ、女の子を産み落とし天に召される。

作曲期、簡素な作風への過渡期であり、アイノラへの転居と前後しての作曲です。カレワラ・ロマッティック期の作風を若干残してはいますが、比較的簡素な作風を試みており、必要以上に力の入らない清楚な音楽を作り出しています。

原曲版と組曲版では曲順が異なりますが、ここでは組曲の順に従って各曲を解説します。

第1曲「城門にて」(原曲第1曲)
アルケル王の居城の場面。式典の準備で、門を水で洗い清めている場面。門の汚れは水では完全には落とせない。それはすなわち運命の悲劇も完全に振り払うことはできないことも示す。壮大ながらどこか悲壮感がただようのはそのためか。

第2曲「メリザンド」(原曲第2曲)
メリザンドと後ローの出会いの場面。イングリッシュホルンで始まるスローテンポのワルツ。途中やや軽快なテンポに変動するも最初の雰囲気に戻されて終わる。

第3曲「海辺にて」(原曲第3曲)
海辺から沖の船を見つめるメリザンド。打楽器や弦楽器で奏でられるのは波のうねりか。陰鬱な音楽

第4曲「庭園の泉のほとり」(原曲第4曲)
前曲にくらべてやや明るい雰囲気を醸し出す。ペレアスとメリザンドが会うシーン。メリザンドはゴローからもらった指輪を泉に落とす。

第5曲「3人の盲目の姉妹」(原曲第6曲)
塔の中で3人の盲目の姉妹が歌う歌。はかない希望をもたらすが、それは叶わないことを暗示する。
原曲では女声の独唱、組曲ではクラリネットのオクターブユニゾンでメロディが奏される。

第6曲「パストラーレ」(原曲第7曲)
ゴローとペレアスが地下道から庭に出る。
弦楽器のピチカートに乗ってクラリネット、コールアングレ、フルートがメロディを奏する。

第7曲「糸を紡ぐメリザンド」(原曲第5曲)
糸巻きの音があまりに不気味に模倣される音楽。これも後に訪れる悲劇の暗示か。フォーレの静かな音楽とは好対照。

第8曲「間奏曲」(原曲第8曲)
ペレアスとメリザンドが会うシーンの前奏曲となる。組曲中もっとも明るく快活でにぎやかな音楽。

第9曲「メリザンドの死」(原曲第10曲)
死の床のメリザンドが天に召される様子を描く。


作品紹介へ戻る

トップへ戻る