交響曲第1番 ホ短調作品39 Symphony No1. in E-Minor Op.39


作曲:1898〜1899
編成:Fl:2 Ob:2 Cl:2 Fg:2 Hn:4 Tp:3 Tb:3 Tub:1 Timp B-Drum Cym. Triangle 弦5部
演奏時間:約40分

交響詩風交響曲?

 実質的にシンフォニストとしてのシベリウスの出発点となったのが、この交響曲第1番です。シベリウスの交響曲の処女作は作品7のクレルヴォ交響曲ですが、その内容は交響詩的、カンタータ的であり、名実ともに交響曲と呼べるのはこの作品からであるといえるでしょう。シベリウスは第一交響曲作曲以前は交響詩や劇音楽に優れた手腕を発揮していましたが、本格的な交響曲にとりかかるまではかなりの時間を要しました。シベリウスは標題音楽から絶対音楽へと手を広げるに当たって、その差に困惑したのかもしれません。そんなシベリウスを交響曲作曲へと導く足がかりとなったのは、幻想交響曲やチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」のような表題交響曲、あるいはそれに準じる内容のものだったようです。
 そんなわけで、交響曲第1番では後年の交響曲に見られるような有機的な構成はまだまだみられませんが、そのかわりに、なにかしらのイメージを喚起させるような、幻想的な雰囲気を秘めており、それがこの曲の魅力となっています。交響詩風交響曲とったイメージでしょうか。また、30代半ばの若きシベリウスの情熱がこの曲に反映されており、民族的、ロマン的な雰囲気に満ち、繊細にして大胆な音楽が展開されています。
第1楽章 Andante ma non troppo
 クラリネットによる暗さを秘めた長いモノローグによってこの曲ははじまります。この序奏部が終わると突然光が射し込んだように、ヴァイオリンの刻みの上にのって第1主題が現れます。この主題が高まった後にリズミカルな副主題が現れ、その後ようやく短調のメロディアスな第2主題が現れます。これら主題は幻想的に自由に展開され広がります。そして再現部を経て、弦楽器の2つのピチカートによって曲を閉じます。
第2楽章 Andante ma non troppo lento
 真冬のフィンランド、家族と暖炉のそばにあつまってくつろいでいるシベリウス・・・・そんな暖かい雰囲気で2楽章は始まります。しかしその後ファゴットに出る第2主題やその他副主題などが登場し、曲は幻想的に、劇的に広がります。しかしそれはだんだんと収まって、はじめの主題が戻って、冒頭と同じ雰囲気で終わります。
第3楽章 Scherzo Allegro
 素朴で荒っぽいスケルツォと穏やかなトリオからなります。両者の対比が鮮やかです。冒頭のピチカートとティンパニは印象的です。
第4楽章 Quasi una fantasia Andante-Allegro molto
 1楽章冒頭のクラリネットのモノローグを弦楽器が再現して4楽章が始まります。この部分が序奏です。その後木管によって奏でられる短調のテーマ(シーシドドレレシ)が第1主題で、激しさをまして高まっていきます。その後突然穏やかでメロディアスな第2主題があらわれて大きなうねりをつくります。展開部はシベリウスの情熱が全開して、激しい音楽を作り上げます。その後第2主題が回帰して、展開部の雰囲気を一掃します。この旋律はどんどん高まっていき、そのままクライマックスを形成します。そして1楽章と同じく2つのピチカートによって曲を閉じます。この楽章は幻想曲風な展開で、ソナタ形式による論理的な構成とは一線を画しています。やはり交響詩風な構成ですが、ピチカートによる集結がかろうじて、1楽章との関連を連想させ、有機的な構成を保っています。

February 18 2000 by Johansen


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