交響曲第3番 ハ長調作品52 Symphony No.3 in C major Op.52


作曲:1907年(完成)
編成:Fl:2 Ob:2 Cl:2 Fg:2 Hn:4 Tp:2 Tb:3 Timp 弦5部
演奏時間:約30分

マーラー:交響曲は世界のようでなくてはならない・・・・・・・
VS
シベリウス:内的な動機を結びつける深遠な論理が大切・・・・・・

 シベリウスは、酒好き、タバコ好き、そして都会ヘルシンキに出てからは社交好きによって、体調に異常をきたし、また、家計を圧迫してしまいました。このような生活から解放されるために彼は自然に囲まれたヤルヴェンパーに家を建て、そこで暮らすようになりました。彼の生活の変化は作風にも大きな変化をもたらしました。交響曲第1番や2番、エン・サガといった民族的エネルギーに満ちたロマン的な作品から一変して、簡素で古典的な、そして北欧の光や自然を感じさせるような作品を生みだしていくようになります。交響曲第3番は彼の交響曲の中でその転換点となった作品です。
 上記の表題になっているのは1907年に行われたマーラーとシベリウスの対談でそれぞれが述べたもので、交響曲の理想とは何かをよくあらわしていると思われます。マーラーは交響曲を可能な限り拡大しようと試みましたが、一方でシベリウスは交響曲を凝縮し、磨き抜き、内的世界を作り出していきました。マーラーは交響曲を外側に拡散させていったのに対し、シベリウスは原点に返って交響曲を見つめ直し、交響曲の核心を探り、それを極めようとしたのでしょう。
 交響曲第3番は彼のポリシーらしく、非常に簡素な構成になっています。しかし、構成的には2つの楽章を統合した3楽章構成となっているところから考えても、単なるソナタ「形式」の交響曲を指向したのではなく、その音楽的内容を有機的に構成しようといういとがあるような気がします。
 ユーモラスな民族舞曲のようなリズム動機による第1主題でこの曲の1楽章は開始されます。ちょっぴり笑ってしまいそうな感じの開始の仕方ですが、すぐに曲に引き込まれていきます。かつての交響曲に見られたような熱気はずっと後退しましたが、かわりに大自然の雄大さが感じられ、また、健康的な美しさも感じます。2楽章は悲しげな旋律が広がっていきますが、悲しさの中にも希望が見えるところがとても美しいです。3楽章は穏やかな開始ですが、徐々に盛り上がっていきます。しかしながらその盛り上がり方はかつてのような熱狂ではなくて、静かな精神的なものとなっています。春を待つ北国の人々の希望のような静かな、しかし喜ばしい気持ちの高揚があります。ここは本当に美しいです。そして終結を向かえます。地味ではありますが、最も喜ばしい集結法ということができると思います。


作品紹介へ戻る

トップへ戻る