交響曲第6番ニ調(ドリア調)作品104 Symphony No.6 in D Op.104
作曲:1923年(完成)
編成:Fl:2 Ob:2 Cl:2 BassCl Fg:2 Hn:4 Tp:3
Tb:3 Timp Harp 弦5部
演奏時間:約30分
交響曲第6番はおそらく我々が抱くフィンランドのイメージに最も近い雰囲気を持った曲と言えるでしょう。独特の静謐さ、澄んだ空気を思わせる響き、そしてフィンランド固有の音階(ドリア調に近似)の利用はそうしたイメージを抱かせるのに十分です。また、そのような静謐さ、美しさのなかに、北欧ならではの激しさ荒々しさを内包し、変化に富みながらもそれが強烈に対比されるのではなく、一つの流れの中に溶け込んでいるのがこの曲の特徴と言えるでしょう。
なお、当初この曲はヴァイオリン協奏曲第2番として作曲がはじめられ「叙情的協奏曲」とシベリウスは呼んでいました。シベリウスはこの当時荒々しさや激しさを持つ曲になるということを述べています。その印象は作品として結実した交響曲第6番にも残されているようです。また、この曲は彼の敬愛したルネッサンス時代の作曲家、パレストリーナの影響もみられるようで、ひとつの小宇宙を形成するような精神性が感じられる点はそういったところからきているのかもしれません。
1楽章:Allegro molto moderato
分割されたヴァイオリンの序奏によって曲ははじまります。その穏やかな序奏のなかでひっそりとオーボエに現れるのが第1主題です。通常、第1主題はそれなりに明確に決然と提示される場合がほとんどですが、この曲の場合はそれが主題であることを気づかせないようなひそやかな方法によっています。そしてテンポが上がりリズミカルで可憐に提示されるのが第2主題となります。
形式はあえて言うのであれば自由なソナタ形式ではあるのですが、一般的なソナタ形式の曲が持つ論理性や構築感とは異なる、シベリウス独特の調和のある有機性とでもいうような不思議な構成となっています。
2楽章:Allegretto moderato
フルートとファゴットによる寂漠感ただよう主題によって開始される部分と動的な中〜後半間部からなっています。冒頭の部分は静かで暗い森をイメージさせるような音楽です。中間部に入ると次第に動きのある音楽となりほのかな明るさを感じさせますが、やがて弦楽器の細かな動きが主体となり、交響曲第5番3楽章のミステリオーソの部分のような神秘的な表情を持ちながら曲は終わります。
3楽章:Poco vivace
スケルツォ的な楽章です。付点リズムの律動を基本として、金管楽器によるアクセントも加えて盛り上がります。北欧的荒々しさの感じられるリズミカルな楽章といえるでしょう。
4楽章:Allegro molto
ルネッサンス時代の聖歌を思わせるような古雅で清澄な主題で曲が開始されます。この冒頭あたりがおそらくパレストリーナ等ルネッサンス時代の作曲家の影響がみられるところなのでしょう。やがて曲は次第に動きのある主題を置きながら、激しく荒々しい音楽を展開します。しかしながらやがて冒頭の清澄な主題が戻り、それまでの激しさ次第に収まり、静かで厳かな雰囲気の中で曲はおわります。
November.29.2002 By Johansen