Privacy Policy | Contact 
FILM MAKER TAKESHI IKEDA
FILM MAKER TAKESHI IKEDA 映画でイタリアンスマイルズ (blog) GLI ARTIGIANI GLI ARTIGIANI Podcast CRAZY RUNNINGS 113日間世界一周映画制作記
ホーム (HOME) 製作日誌 (DIARIO) ロケーション (ESTERNO) 出演者 (CREDITO) 作業工程 (LAVORAZIONE) コメント (COMMENTO) 予告編 (PRESENTAZIONE)
  TOP > GLI ARTIGIANI > 2007年08月01日(水) マエストリズム
 

2007年08月01日(水) マエストリズム

日陰を伝う足音。
どこまでも響き渡るのに、
聞こえないふりをしている。
街中の喧噪をよそにフレームを意識する。

工房を訪れた僕は窓越しに鈴木さんの姿を目にする。
気づかれないようにそっとカメラを向けるが、
鈴木さんの視界には僕がいたようで、
ありのままを撮ることができなかった。

そうすればもちろんマルコにも見つかってしまうわけで、
外からの何気ない風景をおさめられなかった。


大雑把でずぼら


マルコは小型のかんなとヤスリを使って、
コントラバスのネックの手入れをしていた。
大量の削り粉を生み出し、
ザクザクと大ざっぱに作業を進めていく。

BGM を流し、鼻歌を交え軽快なマエストロ。
静かに仕事を眺めている僕に突然チャチャを入れる。
そして視線が鋭くなり、ネックの左右のバランスをじっくりと見入る。

気持ちのアップダウンが激しいのか、
緊張感があるのかないのかよくわからないが、
そういう中で自分をコントロールしているのかもしれない。

動きだけを見ていれば、
適当にやっているようにも思えるが、
決して大ざっぱなわけではない。

経験から得られるカンの中でやっていることもあろう。
一回木を削るごとにどれだけの力を込めればいいのか。
力もいる作業だろうし、それだけの能力を備えているのだろう。

鈴木さんですら追いつかないという技なのに、
僕が手にしたところで何もできないであろう。
でもそれをいとも簡単そうに、
僕にもできそうにこなしている。


要領の良さ


鈴木さんは他の工房にも行くようだが、
マルコの作業ペースはとにかく早いという。

職人にもいろいろなタイプがいるわけで、
家系で伝統を受け継いでやっている人、
モノ作りが好きで寝る間も惜しんで没頭している人、
とにかく量産している人、
教えることをメインに製作している人、
一般のイタリア人同様、休暇を謳歌しながら製作する人。

マルコは工房での作業時間を仕事に当てて、
それ以外は課外活動をしている。
それでいて世に名前が通るくらいの良品を、
人より多く作るという。

短い時間でより多くのいいものを生み出す。
それは才能だ。
天から与えられた体と感性。


感覚が呼ぶ緻密さ


どういう作り方をすればいい音が出るか?
なんてことは鈴木さんもそこまでまだわからないという。
それは彼もまだ得ていない、
更に上級な感覚なんだろう。

マルコは経験の中から生み出した感覚で作業を進めているようで、
理詰めの中からのモノのようには思えない。
それを教えるなんてことは無謀なことのようにも思える。

僕がマルコを撮っている横で作業をしている鈴木さんから見て、
僕がいるときと普段とでは、
僕がいるときの方が作業ペースが早いという。

僕の存在がそれなりに高揚させているのだろう。
それは人間であれば影響を与えることもある。

基本的にモノ作りが好きなはず。
好きだから続くんだろうし、
どんどんこなしてもいける。

鈴木さんも好きだからやっているという。
そんな鈴木さんが初めて作ったというコントラバスが置いてあった。
一流のマエストロの横で作られた、
コンクールに提出するという作品。

好きが生み出した結晶は、
人に喜びを与える。
それはそれぞれに与えられた贈りもの。



この日、撮影した映像の一部を公開しています。どうぞご覧下さい。

極めて人間的 - Cremona 12

ヘアースタイル - Cremona 13

軽快なテンポにのって - Cremona 14

指示通りの撮影 - Cremona 15

掃除中 - Cremona 16




コメント

コメントを書く

*は必須項目です






© 2004 - 2010 Takeshi Ikeda all rights reserved. e-mail to TAKESHI IKEDA
Privacy Policy | Contact