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2007年08月15日(水) 過ぎ去りし季節

見事に晴れ上がった夏のミラノ。
バカンスシーズンで街の中は閑散としていて、
誰もが休暇を楽しむために、どこかしらへと出かけている。

この日は特にフェッラゴースト(聖母被昇天の祝日)といわれ、
都市部は一年で最も街が機能しない日である。
とはいうものの海の街ジェノバ。
ここは観光客で溢れかえっているに違いない。

ジェノバに向かう列車も気持ち人が多く、
イタリア語ではない言葉が盛んに聞こえてくる。
車内は海を楽しみにしている人々で、
開放的になって活気を帯びていた。

エアコンのない各駅停車。
開いた窓から吹きつける風の涼しさに気がつく。
日射しの強かった風景がウソのように、
冬のミラノのようなとぼけた空しか見えなくなっていた。

お気に入り


ジェノバは海を山で囲んだような地形。
「低気圧を内陸でストップさせて海側が曇ることはあまりない」
とロレンツォに聞いたことがあった。

確かに僕がジェノバに来るときは、
面白いくらいに日が燦々と注ぐ。
南イタリアのような様相をいつも呈してくれていた。
街の雰囲気にもそんな空気が流れているようで、
僕はジェノバがお気に入り。

街の開けたところに位置する駅ブリニョーレ。
見上げられないはずの空もサングラスなしで平気。
そしてミラノと変わらず街は閑散としていた。


俯瞰の風景


バスに乗りボッカダッセに向かう。
開いている店などはあまり見かけられないものの、
やはり海沿いに来れば休みを謳歌している人々に出会う。
ボッカダッセにもいつもより人が集っていた。

岸を見るといつもの船がない。
少し村の周りを散策してみることにした。
ボッカダッセは山に囲まれた漁村。
歩き始めるとキツい勾配にムチ打たれる。

しかし小高い丘の上から臨む景色は美しく、
波の音と時を知らせる鐘の音が、
日常を切り離してくれているようで、
何もかもがなかったかのような静けさを心に奏でてくれる。

波が遠くにいるようで、
目に入ってくる情景があたりまえのようになる。
そんな自分の見ているフレームの中で、
小さな船が海に軌跡を描いていた。
僕はとっさに山を下りていった。


理由


船を引き上げるいつもの二人。
僕は少し引き目に眺めていた。
いつもと変わらない動きをしている。

夏は人がいないのをいいことに、
店鋪改装や道路工事などが街中で頻発している。
そしてそれに影響を受けたトラムもルートを変えたり、
間引き運転をしたりしている。

しかしこの日ほとんどのイタリア人は、
暑い夏を楽しんでいる。
僕はきっとそんな日でも
彼らはいつもと変わらないだろうと期待していた。

僕の訪れている工房も、
おそらくはすべて動きを止めているだろう。
土日祝日に僕がジェノバに来る理由はここにある。

「漁はできるときにやらないと俺らは仕事にならないんだよ」


ありふれているはずのこと


せいぜい2人しか乗れない小型船。
大漁でもたかが知れてる積載量。
沖から戻ってきてすぐに販売するために用意されたハカリ。

個人の小さな規模ながら、スタイルを通す姿。
きっと僕が見ているのは時代に取り残された貴重な風景なんだろう。
彼らにとってはこれが自分が「生きる」ため、
逃れられないものであり、与えられたものである。

何が僕をそうさせたかわからないが、
気負わないで行くようにすることにした。

「できるときにやらなくてはならない」
ちょっとした会話から得られた彼らのスタイル。
でもそれは至極当然のことでもあり、
そんなあたりまえのことを人々は忘れ去っていく。

距離を置いて見ていたもう一人の漁師。
僕を覚えていたかは知らないが、
彼が家に戻るとき、横を過ぎ僕の顔を見た。

「ボナセーラ」
「ボナセーラ」

お互いが自然だったような気がした。
僕はそれ以上、追わなかった。
なんだか少し気分が良かった。

きままにいこう


漁師たちを囲んでいた人たちも、いつのまにかバラケていた。
岸では水遊びをする子供。
日光浴をするカップル。
ジェラートを頬張る老人。
シートをかぶった船の上で丸くなるネコ。
それらを撮る観光客。

僕にとっては彼らは誰もが休むときにでも動いている素材。
それは作品を機能させるには助かるもの。
けれど彼らの生活はその範疇のものではない。

少し力を抜いて彼らを眺めてみよう。


一人はいつものように漁師のたまり場の方へ行く。
もう一人は珍しくきれいな私服に着替えて、
海岸で待っていたシニョーラと話しをしたあと、
二人でどこかへと消えていった。

誰もが休みを取る日。
誰にも時は平等で、
好きなように「生きる」ことができる。


この日、撮影した映像の一部を公開しています。

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