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生ハムにのめり込んだきっかけ
大学3年の時、ほとんどの科目で出席日数も足りず、テストも赤点で留年確実といわれていた危機に、私を救出してくださったのは食品科学研究室教授の永田致治先生でした。何故、どうやって私を助けてくださったのはいまだにわかりません(一度お聞きしたら「アアそうだったかね」で終わってしまいました)が、とにかく無事に進級させてもらいました。
食べることと飲むことには絶大なる興味を持っていた私は、こんなにも偉大な先生についていかない手はない。ということで即刻、食品科学研究室に入室をお願いしたのでした。この研究室が一番サボれるからという情報に左右されたわけではありません。
入室後、実はこの先生が「肉の永田」としてかなりの権威をお持ちの先生だと知らされるのに、それほど時間はかかりませんでした。その一つの理由に、世界各国の見たこともないような肉製品がこの先生の下に集まってくるのです。これを食べるのを目当てに私が教授室に通うようになったのは言うまでもありません。
その中に後に私の人生を左右することになるイタリアの「パルマハム」「サンダニエレハム」があったのでした。これらを初めて食べたときに、こんなうまいものを一生食べ続けられたらこんなに幸せなことはないと思いました。その当時の日本ではまだプロシュートが解禁されておらず「死ぬほど食べたきゃ、ヨーロッパに行かなきゃいかんね。ヨーロッパはいいよ、多田君」いつものように泡盛を飲まれながらご自分の若き日の留学体験を語られた先生のこの一言で、完全にその気になってしまった若き日の私でした。
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多田 昌豊 (Tada Masatoyo)
1971年9月9日(木)東京生まれ。麻布大学獣医学部卒業。学生時代にスペインの JAMON SERRANO, イタリアの PROSCIUTTO DI PARMA を食べ「生ハム」に目覚める。卒業論文「非加熱長期熟成食肉加工製品 (パルマハム、サンダニエレハム) の化学的微生物学的安全性」卒業後、経験をつむため青年海外協力隊員として、タイ王国ウボンラチャタニー大学で食品加工学を教える。帰国後、渡伊。現在本場パルマで生ハム職人として活躍。
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