【 町内消毒 】

 昨年(2000年)5月「町内消毒」の作業があった。
「町内消毒」などと書くと「町中地区に伝染病でも発生したのか?」といった心配をさせてしまいそうだが、そんなことではない。気温が高くなり害虫などが発生しやすい時季に、地域内の排水路等に消毒液を散布するだけのことである。

 私も参加し、1時間ほどの作業をした。ちょっと驚いたのは、幅が30センチで深さも30センチくらいの側溝に液を撒いた時のことである。底に泥が溜まってはいたものの、いつも水があるとは思えないような側溝だから、当然生物はいないと思っていた。しかし、散布して少し経ってからそこに行ってみると、ドジョウが這い出て死んでいた。
「ドジョウってあんな劣悪な環境でも生きていたんだなあぁ」と驚く一方で、気の毒なことをしてしまったと思ったことだった。

 ところで、私が子供の頃は排水路等への消毒液散布だけではなく、汲み取り式便槽への消毒液散布もやっていたし、屋内の殺虫剤散布も行っていた。もちろん作業していたのは大人達である。
排水路や便槽に散布する薬剤と屋内に散布する薬剤は別々のものであり、前者はジョウロで、後者は電動の噴霧器で散布をしていた。電動噴霧器の威力はすごいもので、家中をあっという間に霧の中状態にしてしまうほどであった。
 だから、消毒作業実施の日は食物は戸棚などに入れ、金魚鉢や鳥かごは外に出し、ちゃぶ台には新聞紙をかけるなどして作業の人達を待つ。
何しろ家中に殺虫剤を散布するのだからその効果は素晴らしいものであったと思う。今時は薫煙式の殺虫剤で家ごとの殺虫をすることが出来るが、ちょうどそんな感じであり、同じように散布の後はしばらく家に入れなかった。
 屋内の殺虫はたいていの家がやるのだが、便槽の消毒は農家とそうじゃない家で事情が違っていた。当時、肥料として人糞を使うこともあったので・・・、そういった場合は消毒を辞退するわけである。
汚い話で恐縮だが、殺虫剤を使わない便槽は便器側から下を見ると表面が動いていた。正確に言うとウジ虫が動いているのだが・・・、想像しただけで気持ち悪くなってしまいそうである。

 話のついでに、人糞を肥料に使うという話をさせてもらおうと思う。
その頃は私の「じいちゃん」と「ばあちゃん」が裏山で野菜づくり(自家消費だが)をやっていた。じいちゃんは足が悪かったので時々肥やし運びを私に命じたものだった。
木でできた樽のような容器に糞尿を入れ、それを一輪車に積んで(汲み取りと一輪車に積んでロープなどで結わえる所まではじいちゃんがやっていてくれるのだが・・・)500メートルくらいの山道を押していくのである。経験のある方はお解りだと思うが、液体が入った容器を運ぶのは、「チャプチャプ」とゆれるのでけっこう難しいのだ。
しかも、暑い時などは容器の中でメタンガスが発生するのか、膨張して栓が飛んだりする・・・。また砂利道だったりすると振動でロープが緩んだりするし、当然臭い・・・。はっきり言って悲惨なのだった。
同じ家の手伝いでも恥ずかしくて、嫌だったなぁ。

 今はホームセンターなどに行けば殺虫剤や各種肥料なども売っているし、浄化槽も普及しているので町内消毒は以前とは様変わりした。おかげで糞尿運びもやらずにすんでいる。 

町内会長への道へ戻る

ホームへ戻る