●原田宗典

 僕が原田宗典と初めて出会ったのは,TOKYO−FMの深夜番組『ジェットストリーム』だった.この番組は今は亡き名ナレーターの城達也氏の番組で,毎週金曜日には“ミッドナイト・オデッセイ”という,城達也氏が短い不思議な物語を語っていくというコーナーがあって,その物語の原稿を担当していたのが原田宗典だったのよ.当時僕は高校生で,毎日勉強しながらこの『ジェットストリーム』を聞いていたんだけど,この“ミッドナイト・オデッセイ”のコーナーは大のお気に入りだったんだ.ある時,書店で原田宗典の本を見つけたとき,「ミッドナイト・オデッセイの原田宗典かあ.どんな本か見てみよう」と思って手に取ったのが始まり.それ以来,僕は原田宗典の大ファンとなった!(※ 北海道ではTOKYO−FMではなくFM北海道(現・Air-G))

 原田宗典の第一の魅力は,何と言っても抱腹絶倒のエッセイだろう!原田宗典の子供時代の思い出や日常生活のエピソードなんかをユーモアに綴ったエッセイは,もう電車の中なんかでは読めなくなったしまうほどの面白さ!吹き出すのをこらえるだけで精一杯!いやはや,何とも危険な読み物ですよ.原田宗典のエッセイだったらどれを読んでも笑えるんだけど,特におすすめの一冊は,『東京トホホ本舗』(新潮文庫).原田宗典が日常感じている“トホホ”な物事を書き連ねてあるんだ.ぜひ一度お試しあれ.『我輩ハ苦手デアル』(新潮文庫),『スバラ式世界』(集英社文庫),『いろはに困惑倶楽部』(角川文庫)なんかもおすすめ.かなりの確率で吹き出してしまうので,くれぐれも人前で読まぬよう(笑).

 原田宗典の二つ目の魅力は,短編小説.読んでいる者をひきつける,見事な表現.まったく想像もできないような独創的なストーリー.読み終わってもしばらく残る,何とも不可思議な後味.本当におすすめ.“ミッドナイト・オデッセイ”のような不可思議なお話ならば『海の短編集』『旅の短編集 春夏』『旅の短編集 秋冬』(すべて角川文庫),原田宗典の世界が味わえる短編集なら『優しくって少し ばか』(集英社文庫),『どこにもない短編集』(徳間文庫)なんかを読んでみてよ.ハマってしまうよん.

 長編小説も面白いよ.原田宗典の小説は,青春小説っていうのかなあ,なんかホロ苦くって甘酸っぱいっていう雰囲気なんだよね.『十九,二十(じゅうく,はたち)』(新潮文庫)にしても『何者でもない』(講談社文庫)にしてもそう..心の奥底にしまってあった想い出に触れたような,何とも切ない気分になるのよ.うまく説明できないけど,絶対面白いのでぜひ読んでみてよ.『平成トム・ソーヤー』(集英社文庫)も名作.(2001/7/22)

 この夏は原田宗典で決まり!

 

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