「マイコン少年さわやか漂流記」クーロン黒沢(ソシム) |
・ライターってことになるんでしょうか。クーロン黒沢氏のほぼ半生を描いた自伝ですね。 ・クーロン氏の半生、それは、「マイコン」とともにあった。というか、ほとんど、マイコンの興亡史=クーロン氏 の人生といってもいいくらいですね。何度も自虐的に「おれにはPCしかなかった」的な記述が見受けられます。だから、反動で、アジアで幼女買ったりするのでしょうか。知りませんけど。 ・ゲームから入ったマイコン人生。今はどうかわからんけど、当時、PCを持つやつの大半はゲーム目当てだったと思 う。それが、家でいつでもできる!って理由でPCをほしがった。ファミコンなどはまだ影もカタチもないころだ。 ・で、NECのPCー6001mark2から、クーロン氏も終わりなき無間地獄へと落ちていくのですね。 ・ここいらは本当に2〜3年が大きいと思うんだ。ファミコン以前にゲームの洗礼を受けるか否かは本当に大きい。 クーロン氏はファミコン以前なワケなのですね。ここいらがモーレツにシンパシー。おれも、ファミコン買ったのは 相当遅かったし。 「ファミコン?ケッ!」派ってのはいたのですよ。「宇宙家族カールビンソン/あさりよしとお」でもそういう記述がありますしね。おれもそうでした。ゼビウスが家でできてなにがうれしい?派でした。 ・でも、まあ、おれとリンクするのはそこまでで、おれは無期停学処分になり、つぎはウインドウズの時代までまったくノータッチでして。 ・一方、クーロン氏はアクセル全開で、いくところまでいかれる。 ・シャープ信者との不毛な争い、MSXでみた幻、そして、人生が変わったソフトコピー屋との出会い。海外PCへの憧 れ。ソフトの自主制作、草の根ネット開設、海外買い付け。と、業の深いPCライフを満喫されておられる。 ・図版多数、情報多数(エミュ情報とか)、とにかく、きわめて濃いところにいた一個人のPC史をおなかいっぱい( 350pオーバー)タンノウできる。 ・まあ、そんなもんおなかいっぱいしなくていいって人には、なにかに入れ込んだ男の力ってのを笑いながらヘラヘラと楽しめる読み物だと思っていただければ。とくに自主制作ゲームの無軌道ぶりはすごいですよ。 ・オススメ</FONT> (00:29:00) |
「トリビュート特集 ナンシー関」VA.(河出書房新社) |
・ナンシー氏の追悼本。ムックですね。 ・ナンシー氏の追悼文+評論。 ・単行本未収録(かどうか知らんが)の対談集。 ・など。 ・ナンシー氏に関しては距離を置いていた時期が長かった。たぶん、知ってるでいえば、かなり前から知ってるハズ。「TVブロス」の創刊時のコラムなんかもマメに読んでいたし、そういう文章の仕事も前から知ってる。 ・でも、正直、著作集を買って読もうって気にはならなかった。所詮、テレビのことだからなあと、どこか軽んじていたところがあった。 ・で、個人的に興味をもったのが、実はサイトだったりする。「ボン研究所」。ここでの素のナンシーがみられる文章に、かなり興味を持った。今でも読めますのでどうぞ。 ・武装ってほどじゃないが、通常のコラムでみられるナンシー関は、「〜である」調なことも含め、どこか「武装」している感じがする。 ・それに対して、今なにやってるとか、時候のあいさつや、ちょっとした好みやら日常のことなどが書いてあり、そうか、普通なんだなあというところに、妙に親近感というか、興味をもった。 ・そいで、著作も手にとるようになった。そのうち、今やネットの暴れん坊となった、大月隆寛氏との時事対談集「地獄に仏」を読んだことで、彼女のすごさとかがわかったし、より、素のナンシー氏がわかった。ムーンライダーズのファンとかな。 ・本作には、いろいろな人が書いておられるが、2種類に分かれると思う。曰く、ナンシー氏と親しくしていた人と、面識のない人。 ・そして、それらの対比が興味深い。 ・知ってる人は、いとうせいこう、安齋肇、天久聖一、まついなつき、えのきどいちろう(敬称略)などなど。とくに前記の大月氏の後を継いで対談をしていた、町山広美氏とリリー・フランキー氏の追悼対談がよかったな。 ・ナンシー氏をマネできない理由がとつとつと語られています。悲しむでなし、笑い飛ばすでなし、「こうだったよねえ」というノリで普通に語られてます。ナンシー氏が聞いてたら「やめてくれえ」っていいそうな感じはありますが。 ・能地祐子氏の追悼もよかったなあ。ムーンライダーズのライブをみにいって、楽屋に案内したとき、すごいテレてたとかね。ナンシー氏のカラオケ評をしておられた。 ・すごい人でもあったけど、それはひとつの側面でしかない。そして、普通の頼れる姉御肌の人でもあったけど、それもひとつの側面でしかない。 ・人はいろいろな顔を持ってるなんてのは、陳腐であるモノイイではあるが、たぶん、知られてないナンシー氏の顔がよくわかります。もちろん、よく知られている面もさらに掘り下げられています。ただ、どうなのかしらね?コッチ方面はよくわからん。どちらかというと、実はこういう人だったってほうが勉強になりましたね。 ・本作を読んだ後、ナンシー氏の著作を読み返すとまたちがったオモムキや発見がある。それが収穫なのかもしれないですね。 ・何回か思いましたが、また、ナンシー関氏のご冥福を祈らせていただきます。あの世でもテレビみたり、消しゴム彫ったりしてるんでしょうか。ってか、カラオケ歌ってそうですね。 ・ファンは必携。それ以外はどうだろ? そういった意味じゃ「トリビュート」らしいです。 (00:07:55) |
「そして天使は歌う」久保田二郎(角川書店) |
・おれが中学生あたりのころ、文庫サイズの雑誌が出ていた。講談社と角川書店で。その角川書店のほうを購読していた。「小説王」という。 ・山川惣治って大昔の挿絵家を引っ張り出して表紙を描かせたりしてたなあ(その流れで氏原作の「少年ケニヤ」がアニメ化したりしたんだよなあ。原田知世が声あててたんだよ)。 ・一番出世頭は「帝都物語/荒俣宏」かな。今にして思えばサイキックモノの源流になるのかもしれないな。あと、今でもマンガとかがある「流され者」って時代劇も有名ですかね。 ・で、その中で、鎌倉時代にサーフィンをやるという奇天烈な小説を書いていたのが、おれと久保田二郎氏との出会いであった。 ・なんでも、伝説の作家だそうだ。 ・それからしばらくして、深夜番組(たぶん、「11PM」)の内藤陳氏のコーナーにも出演していたな。 ・ま、そういう流れで角川書店から出た「手のうちはいつもフルハウス」「最後の二十五セントまで」「そして天使は歌う」は読ませていただいた。 ・イナカのガキながらに、イキなオヤジだなあと思った。それから、20年くらいたって、再び読んでみたけど、その意見は変わらなかった。 ・けっこういいところのボンボンで、西洋文化に普通に傾倒しつつも、戦前のハイカラなところももれなくチェックしている。アメリカやらハワイやら世界中飛び回っては、その目で見て耳で聞いたことを独特の人懐こい文体で、ややスカシ気味に書いている。 ・正直、本作はさほどおもしろくないんだ。お堅い文章も多くてね。 ・ただ、1980年初頭に描かれたアメリカの経済状況は、ちょうど今と重なっていておもしろいね。不況、戦争、なるほど、20年前とまったく同じ道をなぞっている。当時は強いアメリカの象徴たる大統領はレーガンで、敵はイランだった。そして、戦争時に、バラバラの民族が一致団結して、「アメリカ人」になるってアメリ気質とか興味深い。 ・あと、ハワイには蛇がいないとか、1930年以降、クルマはカーセックスを想定したインテリアになっていったとか、最初とはいわないけど、かなり早い時期に、「ハーフ&ハーフ」(黒ビールと普通のビールを混ぜて飲む)の方法を紹介してみたり、はては台所用品の紹介、男のサイドバッグ論、入浴、アイロン、その話題は多岐にわたり、けして、それが所帯じみてない。みんな「楽しみ」を前提としているから。 ・彼のようになるのはムリ。そう思い知らされるくらい、優雅でイキに人生を満喫されておられる。ただ、あの文体は近づけないものかなとは思っておりますですハイ。名文ってんじゃないですけど、ノリがいいんですよね。 ・今、なにされてるんでしょう?まだ、シャレ者のジジイぶりを世界のどこかで発揮されてるものと信じておりますです。 (13:53:08) |