「美しい日本の掲示板 インターネット掲示板の文化論」鈴木淳史(洋泉社) |
・新書ですね。インターネットにおける掲示板、とくに「2ちゃんねる」について論じた本ですか。 ・インターネットというか、PCでの掲示板史からはじまり、2ちゃんねるにたどり着き、なおかつ、用語、システムなどの解説も加えつつ、きわめて日本らしい掲示板であり、オビにあるように「日本のメディアの正当な嫡子」と結論付けてるのですよ。 ・かんたんにまとめるとそういうことですが、個人サイトの掲示板の廃れ方からはじまって、2ちゃんねるの特色である匿名ということや、2ちゃんねる独自の言葉(マターリとか)、その他もろもろ書いてあります。 ・作者は2ちゃんねる大肯定で、わりと手放し気味にマンセーしてますし、中身もかなり悪ふざけというか、2ちゃんねる用語で書かれてます。はさまれていた紙片の正誤表まで、2ちゃんねるのパロディになっていますよ。 ・こう読んでると、2ちゃんねるがえらかったのは、そのシステムやら情報よりも、「場」であったことなんだなあと思ったりしますよ。 ・ポイントは「マターリ」にあると作者は指摘されてます。日本人はもともと「マターリ」を重んじる民族であると。まあ、わかりやすく書くと「和」ってことでしょうかね。 ・それでいて、前の文章をつないで、次にまわす、俳句の前身である「連句」であるとも看破する。なるほど、2ちゃんねるにおいて長い文章を書くやつ、コテハンのやつがスポイルされがちなのは、その流れを止めたり、無視したりするし、非マターリにつながるからって見方もあるわけですね。 ・かように、2ちゃんねるについて日ごろモヤモヤと思うことがさらにモヤモヤすることウケアイですよ。 ・個人的にはそんなたいそうなことか?と思いますし、一時期に比べて確実にその神通力みたいのは弱まっている感じがする昨今ですね。今はインターネットのなにがおもしろいんでしょうかね? (21:09:28) |
「兜太・せいこうの新俳句鑑賞 他流試合」金子兜太&いとうせいこう(新潮社) |
・もともと、俳句ってのには漠然とした憧れがありました。 ・というよりも、短い文でサマザマなものを表わせるってのがカッコいいって思うタチだったりするのです。 ・とっかかりは、星新一氏のショートショートや、「ビックリハウス」のエンピツ賞あたりかもしれないですね。短編のキレのよさや、読後のなんともいえない余韻を手っ取り早く味わえるという感じが好きで、その感じが長編を読んだ時と同じなら、読む時間が短い分、短編のほうがトクだなあと思ってるんですよ。まあ、せっかちだからして、長編の伏線張ったりとか、そういうのですら読んでいくのがめんどくさいと思うからかもしれない。 ・で、その頂点は俳句ですよね。なんたって17文字。5・7・5ということで。 ・本作は、いとうせいこう氏が出演されている「熱血!スペシャ中学」という番組内で紹介されてたことで手にとりました。 ・CSの音楽番組でありながら、中学校を舞台としているという設定のために、「授業」があるのです。で、「国語」の授業として「俳句」があり、いとう先生がこの本と、この本でいっしょに対談されている金子兜太氏の句を紹介されてまして、興味を持ったのです。 ・対談集です。伊藤園の「お〜いお茶」の缶に印刷されてますよね、俳句。「伊藤園新俳句大賞」あの、俳句の審査委員をやってる両名がもう1度みなおすというものです。 ・これが、まあ、俳句に興味ない人にはまったく関係ないんですが、おれくらい耳かき1杯くらいの興味でもあれば非常におもしろい対談になるんですよ。 ・一応、金子師匠に挑んでいく門外漢のいとうせいこう氏という図式になっているんですが、同意したり、微妙な意見のちがいなどが興味深くてね。それでいて俳句の構造やら、新しい俳句の可能性なんかを語ってるわけですよ。 ・おもしろかったのは、いとうせいこう氏の俵万智死ね!って意見に、金子氏がいや死ななくてもいいじゃない?ってくだりです。かなり意訳してますので、そんなダイレクトにいってませんが。 ・17文字だからこその可能性や、1文字にこめるこだわり、そういうのが非常におもしろいんですね。してみると、俳句というのは、スナップ写真みたいなもので、その場面を写真よりも濃密に豊かに、17文字で切り取ってしまう、小さいもの好きな日本人にとってはこの上ないすばらしい技術であるんだなと思うのですよ。 ・実際、「吟行」という仲間と連れ立っての俳句旅みたいなことはよく行われているそうですよ。 ・「切れ」が大事と金子氏はおっしゃります。5・7・5の3区切れが俳句の基本で、たとえば、種田三頭火なんかの自由律の句でも、やはりそういう構造になってるから俳句なんですね。 ・冒頭で「白菜がまじめに笑って立春です」という第一回の大賞作品について、延々取り上げてるわけですよ。「白菜の」でもいいんじゃないか。「立春なり」ではどうか?とか。つまり、この句で、キモなのは「が」や「です」のような切れにあたる文字ということです。どうも、「まじめに笑って」なんてところに目が行きがちなのになあと、感心しました。 ・でも、1番感心したのは、いとう氏が終わりのほうで悟った、「古い決まりを守るからこそできる新しいこと」ということですよ。今も、こういう俳句的なことはありますよね。相田みつをなど326だの昔山崎邦正とくんでいたやつとか。これらの言葉はそういう決まりに縛られてない。だからこそ、陳腐化するのも早いのではないかなと思ったりしますよ。だって、注目されたのとバカにされたのがほぼ同時だったじゃないですか。 ・そういうことで、可能性はあるので、今、(俳句の分野で)天才が登場するのを待ってる状態だそうですよ。 ・ただ、そういう可能性が自分にあるなと思う人は本書は読まないほうがいいですね。これを読むと、逆になにも書けなくなる。 ・もうちょっと。陰毛に白髪が目立ってくるようになった日にゃあ、ポトチャリポラパも俳句サイトにリニューアルか?などと思ったりしましたよ。それくらい深く影響をもらいましたとさ。 (16:47:16) |